『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2021年12月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「タマシイ」
吉田有輝 (岐阜県関市 / 17歳 / 関市立関商工高等学校 / 写真部)
「失われた小さなタマシイを尊いものに昇華させるために……」
とコメントが。赤い光を魂に見せ、鳥の死骸に重ねる手法で撮影意図に沿った美しい表現です。色の組み合わせも抜群ですし、雨によって濡れた鳥と地面にも表情が現れたことも良い演出となりました。この一枚で終わらせずに、多重露光での作品づくりに取り組んでみて。楽しみです。
2席「夏の終わりに」(4枚組)
横矢結奏 (和歌山県田辺市 / 18歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
浴衣を羽織ろうとする後ろ姿の写真が素晴らしい。窓からの光で際立つ浴衣の花柄、そこに浮かび上がる身体のシルエット、絨毯に広がる大きな影、一人の女の子の夏の終わりの物語が詰まっています。ほかの3枚は、狙いが強すぎました。その塩梅を理解すれば1席は狙えます。
3席「電池切れ」
中村康真 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校 / 写真部)
とにかく逆さになった犬の体勢と舌に釘づけです。男性も同じく舌を出していますが、犬の前足に隠れて見えない。残念ですが、そこに愛らしさが出ています。背景の青空が能天気な雰囲気を助長しています。誰が見ても笑ってしまうパワフルな作品です。
入選「雨が止む頃」(3枚組)
河俣杏実 (愛知県岡崎市 / 16歳 / 光ヶ丘女子高等学校)
夕陽の強いオレンジ色が目に飛び込んできて、テーマなど抜きにして、シンプルに美しいと感じる組写真です。特に引きの2枚の風景写真は、作者の心の動きが写真から滲み出ています。
入選「午睡の時」
山本輝来 (三重県松阪市 / 18歳 / 皇學館高等学校 / 写真部)
我が家が一番! と寝顔に書いてあるようです。思い切りリラックスした態度が幸せそう。寝顔を撮りたいばかりに近づき過ぎたようです。少し引いて室内の様子も入れると尚よかった。
入選「かわいくなるの」
伊藤芽生 (愛知県犬山市 / 16歳 / 愛知県立小牧南高等学校)
鏡を見る彼女の気だるく色気のある表情に惹かれました。距離感が絶妙で、人物の存在感を高める空間の取り方、誰もいない教室の空気感をうまく表現できています。
入選「銀河」
三和翔大 (北海道旭川市 / 16歳 / 北海道旭川工業高等学校 / 写真部)
満天の星が画面いっぱいに広がるロマンチックな光景です。実際はイルミネーションだそうですが、星に見えたら星になってしまうのが写真の自由で面白いところ。広がりのある構図も素晴らしいです。
入選「ハチャメチャ木工教室」
松下日向子 (岐阜県関市 / 17歳 / 関市立関商工高等学校 / 写真部)
ストロボを使用し鮮明に写した活気ある集合写真。成りきっている手前のふたりが最高! 全員が同じくらい真剣なポーズをとったらより完成度が増したはず。照れないほうが断然面白さが出ますね。
入選「紆曲」
髙倉喬介 (神奈川県川崎市 / 神奈川県立川崎北高等学校 / 写真部)
気持ちよく上に伸びている竹のじゃまをするように、乱暴に横へ広がる木の幹。モノクロ化したことで、フォルムと質感が際立ち、幹が生き物みたいに見え、この林を侵食しそうな迫力が出ました。
入選「五月雨」(5枚組)
越本悠里 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
微かな光によって浮かび上がる静かな空間。雨上がりの匂いが写真から漂ってきます。自分の知らないところで静かに物語が生まれているのだと実感します。中央3枚の写真にそれを強く感じました。