『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2022年1月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「密です。」
山内葉月 (島根県大田市 / 16歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
迫力と繊細さが混在しインパクト大。光の当たり具合によるグラデーションで立体感が生まれ、より神々しさが際立ちました。正方形のトリミングにマット紙のセレクトと、世界観をしっかり考えられています。豪華なフレームで額装したら一層映えそうな作品です。
2席「みつめる緑」
東山優大 (香川県坂出市 / 香川県立坂出商業高等学校1年 / 写真部)
画面から飛び出した胴体や触覚。大胆なトリミングにセンスが光ります。目が光って見えることで鋭い視線が想像できます。緑の輪郭にシルエットの姿が、画質の荒さや滲みでより気味の悪さが助長されました。ポエティックなタイトルも作品の魅力の一つです。
3席「隣の家のあの子」
山本 希 (島根県大田市 / 17歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
窓や雨どいなどによるフォルムやラインが計算された画面作りがお見事です。なびくカーテンによって、直線で構成された画面が崩れ、突然動きを感じる面白いトリックです。頬づえをついた少女の顔つきも印象的です。モノクロ化も成功でした。
入選「無邪気」
武藤香奈 (千葉県柏市 / 16歳 / 千葉県立柏南高等学校 / 写真部)
手前の海辺、生い茂る緑、その奥に工場と層になっている人工海浜のどこか不自然な風景に興味が湧きました。裸足の女子生徒2人をアクセントに空間を取った切り取りがうまい。
入選「お参り」
堀江蓮人 (鳥取県鳥取市 / 13歳 / 鳥取県立鳥取聾学校 / 写真部)
七五三のお参り風景ですが、ユーモアに溢れています。特に中心にいる家族のまとまりのなさが面白い。つい寄りたくなる場面ですが、引いて空間を作るとそれぞれの人が引き立ちます。
入選「覚めないで」
今村 匠 (愛知県小牧市 / 15歳 / 愛知県立小牧南高等学校)
不安定な体勢と上を向いた視線に危うい雰囲気を感じ、さらに強い印象のタイトルによって物語が生まれました。緑が反射した湿った地面と奥行きのある道もドラマチック。
入選「家出中」
大谷優菜 (岐阜県関市 / 18歳 / 関市立関商工高等学校 / 写真部)
影がいいアクセントになっています。犬が道を歩く姿を写し止めただけなのに、面白く感じられるのが写真の不思議。立ったままカメラを構えたアングルもその時の様子が出てよかった点です。
入選「野良の甘え」
森川尊仁 (大阪府松原市 / 16歳 / 大阪府立生野高等学校 / 写真部)
美しい猫の強い視線が目を引きます。枯れた黄色の花との色味の相性が良く、偶然の組み合わせですが意味のあるように感じるのは、構図の妙でしょう。
入選「決戦前」
水野瑛太 (愛知県北名古屋市 / 16歳 / 愛知県立小牧南高等学校)
校庭の上空に厚い雲が立ち込めている風景。空の割合を多めに取った構図が成功し、荒い粒子によって不穏な空気感を演出しています。画面右上の端にある黒い部分は取ったほうがスッキリします。
入選「成長の差」
柳沢美來 (長野県原村 / 16歳 / 諏訪二葉高等学校 / 写真クラブ)
暗く落ちた背景に野花の白が際立ちます。柔らかい光で素朴さが引き立ち、それを素直に捉えているのが好印象です。丁寧なモノクロプリントも眺めていて落ち着きます。