2022年3月4日から3月13日まで開催の北京2022パラリンピック冬季競技大会。昨年開かれた東京2020パラリンピック大会の熱も冷めやらぬこのタイミングで、夏季競技とはまたひと味違った、雪上・氷上の熱い競技が繰り広げられている。現地で取材中の写真家・小川和行さんから、冬季ならではのスピード感あふれるスポーツシーンの撮影記が届いた。
- 激撮・北京パラリンピック! 現地速報編
- 激撮・北京パラリンピック! 機材編
まずはこちらから! 小川和行×北京2022パラリンピック ギャラリー
ど迫力の滑降シーンを画面いっぱいの構図で写す
アルペンスキーダウンヒル・森井大輝選手。チェアスキーに乗り高速で滑降してくる。撮影位置が遠いので、「FE400mm F2.8 GM OSS」に「2xテレコンバーター」を入れた。
いきなり飛び出してくる選手を高速AFでキャッチ!
スノーボードクロス・アメリカのGarrett GEROS選手。「α1」に「FE70-200mm F2.8 GM OSS II」の組み合わせ。見えないところから飛び出してくる選手にも合わせるAFの速さ。
雪面ギリギリのアングルでアスリートの躍動感を写す
バイアスロン・カザフスタンのSergey USSOLTSEV選手。チェアスキーで力強く坂を上がる姿をローアングルから撮影した。「FE70-200mm F2.8 GM OSS II」になってさらに軽量になり、フットワークも軽くなった。
青空の色に染まりながら走り抜ける選手に「翼」が見えた
バイアスロン・ウクライナのOleksandr ALEKSYK選手。雲ひとつない青空で行なわれたバイアスロン競技。その飛んでいきそうな勢いを、アンダー露出により濃い紺色にした青空を背景に表現。
ガイドのサポートに導かれながらゴールを目指す
バイアスロン・ドイツのAnja WICKER選手 (後)。視覚障害のある選手はガイドのストックを持って下り坂を滑っていく。
パラ選手たちが見せる人間の可能性を写真でどう表現するかに夢中で取り組んだ
パラリンピックはオリンピック・サッカーW杯につぐ世界でも3番目に大きなスポーツイベントと言われる。当然世界中から一流のフォトグラファーが集まる。自分もそれに恥じない撮影をしたいという思いで今回の取材に臨んだ。
海外のフォトグラファーの写真の編集作業を覗き込むと、その感性の違いが勉強になる。彼らはトリミングなども大胆にザクッと切って、欲しい部分を編集する。私の頭が固すぎるのか、つい3:2のフレーム内にきれいに収まる写真を撮りたくなってしまうが、もっと自由なフォーマットで発表しても良いのかと思った。
冬季パラリンピック競技の迫力は、昨年の東京大会で注目された夏季の競技に引けを取らない。「なぜ見えていないのにあんなにも高速で、大胆に滑ることができるのか?」「なぜ腕の力だけであの坂を登っていくことができるのか?」にわかには信じがたいシーンの連続だ。そこにはスポーツをすることの喜びや、自分の可能性への果敢なチャレンジが溢れていた。そうしたパラアスリートたちの生き生きと躍動する姿は、ファインダーを通して写真を撮る私の意識を強く刺激した。私は、それを写真でどう伝えられるのかを追及したいと思い、大会の撮影に取り組むことになった。
小川和行 (Kazuyuki Ogawa)
1979年、神奈川県出まれ。30歳から写真を始めて、日本写真芸術専門学校卒業後の2012年、スポーツフォトエージェンシー「フォート・キシモト」に入社。オリンピック・パラリンピックをはじめ多くのスポーツイベントを取材。2018年独立しフリーランスに。ロンドンパラリンピックで受けた衝撃が忘れられず、パラスポーツを中心に国内外で取材を行なう。