『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2022年5月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「12/9」
泰地彩央 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
堂々とした態度と笑顔が印象的なオジサン。ストレートに捉えた迫力ある写真です。ローアングルで犬の存在感とワイルドな場所の様子が際立ちました。よく見ると犬がおしっこをしています! このように偶然が写ってしまうのが、写真の面白さです。その偶然を引き寄せるのも才能の一つです。
2席「ふっくら」
佐々木京香 (島根県大田市 / 16歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
フォルムと色彩がユニークで、アップで切り取っていることで余計にインパクトが出ています。鳥の美しさや可愛らしさには興味を示さず、作者個人の欲望と視点で撮影する潔いスタイルは写真を撮る上でとても大事なこと。良い感性を持っていると思います。
3席「有終の美」
中村優奈 (岡山県岡山市 / 18歳 / 岡山県立西大寺高等学校 / 写真部)
ゴール直後に喜びを分かち合う二人。素敵な表情を捉えただけでなく、揺らめくゴールテープを画面内に収めたことで臨場感が生まれ、優勝した事実が明確になりました。二人の腕とテープがつながる曲線で視線誘導され、無駄のない空間の画面構成も高評価です。
入選「水玉模様」
岡田莉花 (岐阜県関市 / 15歳 / 関市立関商工高等学校 / 写真部)
「可愛らしい自慢の水玉模様」とシカ目線でのコメントがか可愛らしいと思いました。大胆なトリミングで模様が強調され、シカの思いを代弁しているようです。チラッと覗かせた鼻で「生き物」としての存在感を出したのも良かった。
入選「スピードききゅう」
榮林実乃里 (京都府亀岡市 / 7歳 / 亀岡市立大井小学校)
爽やかでピュアな作品です。気球の配置と青空の空間の取り方など、斬新な構図が目を引きます。窓に映り込んだカーテンの筋によって、気球が高く上がっていくイメージにつながり効果的でした。名詞同士を組み合わせた粋なタイトルも素敵です。
入選「はりつけ絵」
和田一花 (広島県庄原市 / 17歳 / 広島県立庄原格致高等学校)
美しい色の対比と透明感が印象的な作品です。テーブルの映り込みによって二つの世界が現れ、不思議な雰囲気を醸し出しています。人物の正体が気になります。中央に配置したことで画面が引き締まり、物語を感じる作品になりました。
入選「冬の魔法」
玉村心優 (福井県越前町 / 17歳 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)
刺繍にありそうな繊細な模様。大自然でなくても、身近な場所で見つける自然の美しさや不思議に私たちはワクワクします。このような小さな発見に素通りせず、写真に収める行為に好感を持ちます。
入選「ウォーターワールド」
市原柊真 (岐阜県関市 / 16歳 / 関市立関商工高等学校 / 写真部)
マーブリングのような不思議な風景です。青い部分が星空で、宇宙に架かった橋を人々が渡っているようなファンタジーな印象も受けました。光沢用紙で美しいプリントが作品を引き立てています。
入選「あなたの名前は?」
千本真以 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
スナック「こねこ」の看板のイラストとリアルの猫の姿がリンクしています。この場所に居着いているようですが、所々に猫よけのペットボトルが置いてあるシニカルさが面白い。
入選「睦月」(4枚組)
岡﨑晴香 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
日常でありながら、どこか非日常の雰囲気が漂うのがお正月です。狙いどおり、その空気感を写し止めています。家族に向ける作者のクールな視線によって、より違和感を覚える空間が写っているのがとても興味深い点でした。