『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2022年8月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「ファミリーミーティング」(4枚組)
小川結衣 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
アスファルトを背景にした平面的な画面構成によって、猫の黒を引き立たせたアングルが成功しました。猫たちを模様のように捉えていて、グラフィカルなイメージが連続し、眺めていると違った物体に見えてくる面白さがあります。モノクロ表現の意味を持った秀作です。
2席「執行人」
松川悠悟 (徳島県阿南市 / 16歳 / 徳島県立阿南光高等学校 / 写真部)
子どもとピストル (花火) の不釣り合いな組み合わせは、ウィリアム・クラインの写真を彷彿させます。 暗闇の中、無表情でカメラを見つめる子どもたちが浮かび上がり、ピストルから出ている火花だけが鮮明に写っているという不気味さの漂う作品です。
3席「あと少し」(4枚組)
泰地彩央 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
生と死を意識したというコメントを読む前に、作品を見て「生」を強く感じました。生と死は一体ですから、写真にしっかりと意図が組み込まれていると言えます。正方形の構図で余計な空間が排除され、作者の視点がリアルに届きました。
入選「光と影の空間」
鰐渕真央 (新潟県長岡市 / 16歳 / 中越高等学校)
空を見上げて何かを見ている2人。こっそり眺める作者の視線。物語の一場面のようで何が起こっているか知りたくなります。深い緑と所々に差す木漏れ日が印象的です。
入選「べつにいーもんっ」
伊藤芽生 (愛知県犬山市 / 16歳 / 愛知県立小牧南高等学校)
これほど写真に撮られることを意識せずにいられる姿に驚きます。ショッキングなほど雑然とした部屋の様子をありのまま写していて、ドキュメンタリー写真として見ると素晴らしい作品です。
入選「え、ぼくっすか?」
物部煉太郎 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校2年 / 写真部)
ストロボ光の効果で、湿った毛並みやギョロッとしたオレンジ色の目が生々しく写りました。こちらに向かってきそうな強いカメラ目線も迫力満点です。細長い首が樹木の縦線とリンクしたところも面白い。
入選「プンプン丸」
岡田莉花 (岐阜県関市 / 16歳 / 関市立関商工高等学校 / 写真部)
爽やかな色とシンプルでユーモラスな画面構成で独特な世界観があります。変わった雲を捉えた偶然性と切り取り方によって、世界を変えたりストーリーを作ったりできる写真の特性を生かした作品です。
入選「台所」(4枚組)
杉山湊音 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校2年 / 写真部)
写真から匂いや音を感じます。料理をしているおばあちゃんを撮ったそうですが、気配とその場の空気感でまとめる手法で、鑑賞する側に想像をさせる余白がある巧みな組写真です。
入選「shadow」
伊藤杏梨 (宮城県塩竈市 / 17歳 / 宮城県塩釜高等学校 / 写真部)
ボケによって柔らかさが出た葉っぱを背景に、丸いフォルムの小鳥のシルエットがくっきりと浮かび上がった美しい作品。モノクロ表現で静かな雰囲気が出て、品の良さも感じられます。
入選「桜舞う」
乾 颯真 (愛知県小牧市 / 16歳 / 愛知県立小牧高等学校)
桜が舞うドラマチックな風景の中にさりげなく写る人々の暮らし。日常のありがたさをしみじみと感じます。この場面を写真に収められて「少しホッとした」とコメントしている作者の気持ちも込められています。