『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2022年9月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「スイカ、並ぶ」
佐宗成美 (愛知県岡崎市 / 15歳 / 光ヶ丘女子高等学校 / 写真部)
これだけの数のスイカが並ぶ光景は圧巻です。それぞれに高さや形が違い、個性があるのが面白い。水道と背後の壁がパターンとなった、リズミカルな構図と色の配置も美しく、遊び心があるところも素晴らしいです。現実をそのまま切り取るだけで成立する写真ならではの面白さが詰まった作品。大きく引き伸ばして飾りたい!
2席「飛べ!」
加賀香帆 (愛知県愛西市 / 15歳 / 愛知県立佐屋高等学校 / 写真部)
水中を勢いよく泳ぐペンギンの姿が、空を飛ぶロケットのように見えました。水色のグラデーションが涼しげな空間に、ペンギンの足の黄色がアクセントとなっています。不思議で美しく、そしてユーモアも感じる作品です。画像を逆さにしたように見えますが、もしそうなら面白いアイデアです。
3席「未成年」
西川永遠 (香川県多度津町 / 16歳 / 香川県立多度津高等学校 / 写真部)
警告を表す黄色と黒のポール、毒々しい赤色の花。その組み合わせと過激な色味にゾクゾクします。意味深なタイトルで、さらに感情が盛り上がりました。「反抗期を迎えた子どものように見えた」と作者のコメント。写真と言葉が一体になって完成する秀作。想像力、感受性の高さに脱帽です。
入選「食べる〜?」
成田衣織 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校2年 / 写真部)
串刺しの鱈と指が一体化し、怪獣の手のように見えます。女性は、まさか自分の顔がフレーム内に入っていることを知らずに無骨な表情をしたと見られますが、それによって怪しげな写真に仕上がりました。
入選「取り戻されつつある日常」
新家暖大 (千葉県柏市 / 16歳 / 千葉県立柏南高等学校 / 写真部)
夕暮れの街にビールと明太子の広告が一際目立ちます。望遠の圧縮効果で、活気が戻ってきた街の様子が引き立ちました。人気のある街に違和感を覚えてしまうことが怖いです。写真の受け取り方は、環境によって変化するものですね。
入選「私も…!」
クーマス祐奈 (徳島県阿南市 / 15歳 / 徳島県立阿南光高等学校 / 写真部)
いい意味で中途半端な瞬間が写っていることで、時間の流れを感じます。逆光でできた立体的な室内と、うっすらとうかがえる表情に静かな物語を感じます。壁に張ってある自由の女神が気になりました。
入選「ワンダフルライフ」(4枚組)
植野さくら (和歌山県田辺市 / 和歌山県立神島高等学校3年 / 写真部)
安定した画面構成と観察力によって、人と犬の穏やかな暮らしぶりを豊かに捉えています。その中で、左の牙を剥いた犬の写真が目を引き、やや浮いた印象に。順番を変えるなど再構成すると、より作品にまとまりが出ると思います。
入選「行水」
酒向一輝 (岐阜県関市 / 16歳 / 関市立関商工高等学校 / 写真部)
大胆な切り取り方と水しぶきの偶然の配置が面白く、コラージュ写真のような不思議な印象を受けました。高コントラストの処理は一般的に美しいプリントから遠ざかる傾向にありますが、いい具合に作用したようです。
入選「生きている」
小川結衣 (和歌山県田辺市 / 和歌山県立神島高等学校3年 / 写真部)
無心に働く様子にほれぼれします。みなぎるパワーが伝わってきて、まさに「生きている」が表れています。輪郭の強調や周辺光量補正は印象的な絵を仕上げるのに効果的ですが、丁寧な処理を心がけたいですね。
入選「おばあちゃん」(3枚組)
辻野加菜 (大阪府松原市 / 16歳 / 大阪府立生野高等学校 / 写真部)
中央の写真のインパクトがスゴイ。食いしばる歯と今にも垂れそうな顎の汗。光もドラマチックです。手元の写真にはバイタリティを感じます。右の写真だけが説明的になってしまったのは残念でした。
ここからは、惜しくも選外となった作品の中から、鶴巻育子先生が気になった作品をピックアップしてアドバイスします。
突き抜ける
稲垣咲希 (愛知県春日井市 / 16歳 / 愛知県立小牧南高等学校)
高速シャッタースピードで、ペットボトルから飛び出した水を捉えています。昇龍とまではいきませんが、生き物のようにも見えてきます。薄い水色にモコモコした雲が浮かぶ爽やかな背景もいい演出になりました。
もう一つインパクトが欲しかった。アングルだったり、人物の切り取り方だったり、上下逆さにしてしまったり……、ちょっとした工夫や遊び心を加えてみましょう。
WARASHI
渥美満優子 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校2年 / 写真部)
「童子は訳もなく走り、笑い、そして飛び跳ねる生き物です」と、言い切る作者の解説に納得です。
元気よく飛び跳ねる子どものシルエット。髪の毛と手の表情が特徴的で、ユニークなフォルムが妖怪のような雰囲気を醸し出しています。ローアングルによって、逆光を受けた手前の草の色が映え、青空とのコントラストで爽やかな雰囲気に。さらにシルエットがより映える結果となりました。
やや窮屈な感じがしました。もう少し広角で広々した空間に子どもを配置する手もあったでしょう。
手を上げろ
伊藤 帝 (愛知県豊田市 / 16歳 / 愛知県立猿投農林高等学校)
子どもがピストル2丁を持って男性2人に向けていますが、全く貫禄がないところが可愛らしい。ちょうど子どもにかぶった撮影者の影もアクセントになっています。よく見ると背後に人影があり、その偶然によってストーリー性が出たのも面白いところ。
大人の顔を画面に収めずに切ってしまう手もありました。それによって見る側の想像が膨らんだと思います。切り取り方で、現実と違う物語を作れてしまうのも写真の魅力です。