『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2022年10月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「独り暮らし」
竹本紘子 (三重県志摩市 / 17歳 / 皇學館高等学校 / 写真部)
正座をしてこちらを見つめるおばあさん。凛々しく美しい姿です。目が合うと、心の中を見透かされそうな気がしてきます。一人暮らしをしている作者の曽祖母だそうですが、暮らしぶりも画面内に写り込ませた画面構成が素晴らしく、二人の関係性も伝わる力強いポートレートです。
2席「雨上がり」(4枚組)
中森友愛 (愛知県岡崎市 / 17歳 / 光ヶ丘女子高等学校)
曇った画面とキラキラしたボケは、ビニール傘とストロボを使用しての演出。その効果が面白く作用しています。たいてい、花の写真は癒しを感じるものですが、ケバケバしく、見る者に緊張感を与えて落ち着きません。でも、また見たくなってしまう。良い意味で中毒性を持った作品です。
3席「ひと休憩」
阿部七菜子 (川崎市宮前区 / 15歳 / 神奈川県立川崎北高等学校 / 写真部)
奥に座ってカメラを見ている人力車の車夫の存在感が強く、なぜか手にカブを持っているのも不思議で気になります。広角の強い遠近感によって、順に配置された人力車、足袋、人物が、実際とは異なったサイズ感で表れているのが面白い。赤と緑の差し色も効いています。
入選「休息」
橋口 澪 (愛知県豊田市 / 15歳 / 愛知県立猿投農林高等学校 / 写真部)
一見、毛むくじゃらの物体が緑の中で浮いているように見え、不思議な印象を受けました。足を入れずに抽象的に切り取った点が面白いです。正方形に近い比率も絵柄に合っています。
入選「喜色満面」
福家みなみ (香川県坂出市 / 16 歳 / 香川県立坂出商業高等学校 / 写真部)
勝利し安堵の笑顔を見せる選手たちの姿と、背後に写る敗北した選手たち。感情のコントラストから物語が生まれました。作者はほかにも試合風景を撮影していますが、どれも選手たちの気迫や球場の熱気が伝わってくる秀作でした。
入選「こどおじ」
植野さくら (和歌山県田辺市 / 18歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
ガラの悪いおじさん。ではなく、少年。年齢不詳の身のこなしと子憎たらしい表情が脳裏に焼き付き、離れません。胸に付けた名札に愛らしさを覚えました。強烈なキャラクターと出会い、逃さずに写真に収める。スナップシューターの醍醐味を感じる作品です。偶然写った背後の男性と犬もいいアクセントになっています。
入選「くつろぎの時間」
玉村心優 (福井県越前町 / 17歳 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)
家族だからこそ写真にできる光景。あまりの自然体にかえってリアル感がなく演出されてるようにも見えてきます。画面内の色合いやウサギの存在でポップな印象も受けるユニークな作品です。
入選「影から陰へ」
東山優大 (香川県坂出市 / 16歳 / 香川県立坂出商業高等学校 / 写真部)
シルエットで捉えた猫。極端にシンプルにまとめたことで、猫のフォルムが際立ちました。また、猫のひげ、うっすらと見えるカーテンと網戸の模様、網戸にできた穴など、ディテールの美しさを見つける楽しさもあります。
入選「夜の隙間」
奥田春斗 (三重県伊勢市 / 17歳 / 皇學館高等学校 / 写真部)
何かの気配を感じ、時代を錯覚するのは、写っているモチーフに古めかしさを感じるからでしょうか。偶然の多重露光と銀塩プリントならではの粒状感によって不思議な世界が現れました。
入選「無理」(2枚組)
物部煉太郎 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校3年 / 写真部)
写真家・深瀬昌久の「bukubuku」のオマージュともとれる組写真。カラーとモノクロの対比によって、現実と非現実、生と死など、さまざまな意味を考えてしまう興味深い作品でした。眼鏡を掛けているところが面白い。