『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2022年11月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「嘘をつく水面」
増田晶文 (神奈川県横浜市瀬谷区 / 15歳 / 神奈川県立瀬谷高等学校 / 写真部)
みんなでUFOでも待っているような、どこか不気味さを感じる異様な光景に見えました。誌面では確認できませんが、メタリックな用紙を使用したプリントによって、より不思議な印象を与えています。水を擬人化したタイトルも相まって、独特な世界観を作り上げています。
2席「太陽の子」
星川明璃 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校2年 / 写真部)
顔の見えない女の子。屋根の上に乗ってるように見えます。怖い印象を持つのと同時に、妙なエネルギーを感じます。手前の大きな影や電線、背後の木々のシルエットなど全体的に迫力があり、写真に意味や説明を求めずに鑑賞しても、視覚的に楽しめる作品です。
3席「絶不調」
桑原志侑 (岐阜県関市 / 17歳 / 関市立関商工高等学校 / 写真部)
真剣な場面でも、一部を切り取ることで面白さが出るのが写真です。この写真も、真面目に部活動に取り組む学生と青いホースや赤い布、「○×」の記号や文字などユニークなモチーフに囲まれた場面を切り取ったことで、違和感とともにユーモアのあるものに変化しました。
入選「麦わら帽子」
川﨑廉斗 (和歌山県田辺市 / 16歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
光と影が面白く作用しているポートレートです。真上からの強い光によって、口元にかざした手にできた光の模様と地面にできた頭の影がアクセントになったのが良かった。モノクロ表現が成功しています。
入選「ある家の庭で」
新井田結衣 (愛知県岡崎市 / 16歳 / 光ヶ丘女子高等学校)
色合いの美しさに引かれました。鮮やかな前ボケも効いていますが、青みのある影や雑草、猫の首輪とバランス良く色が配置され、その中央で黒猫の存在感が大きく表れました。
入選「夏の日」
竹内一葉 (三重県多気町 / 17歳 / 皇學館高等学校 / 写真部)
宙に浮かんでいる虫かごの不自然さが面白く、右の影が大きな虫で、網を持った子どもに襲いかかっているようにも見えて想像が膨らみ、ワクワクする写真です。四切サイズのプリントで迫力を感じられたのも良かった。
入選「20年後の私達へ」
小川結衣 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
いい風が吹いた瞬間、いい表情を捉えました。右と左に対照的に向き合った2人の顔の角度と視線によって、構図的な面白さが出ているのも魅力です。20年後、この写真を見て懐かしく思う2人の姿が想像できます。
入選「夫婦の時間」
毛下奈々 (大阪府松原市 / 16歳 / 大阪府立生野高等学校 / 写真部)
曇り空の下、田舎道で淡々と食事をする白髪のご夫婦の姿。穏やかでほほ笑ましい光景です。特別な出来事は起こっていませんが、それでも、作者の個人的な視点で切り取ることで物語が生まれます。
入選「令和四年・親族」
竹本紘子 (三重県志摩市 / 17歳 / 皇學館高等学校 / 写真部)
5人兄弟の祖父とその親族の集合写真を撮り続ける計画を立てた作者。写真撮影が貴重だったころの緊張感が出ているのが興味深いです。趣のある石造りの門や松にも歴史を感じ、素敵な写真です。
入選「俺のは?」
川本 宙 (大阪府松原市 / 16歳 / 大阪府立生野高等学校 / 写真部)
休憩中のサラリーマンとアオサギ。公園でのシュールな一場面です。アオサギに注目がいくところですが、サラリーマンの組んだ足と、指先まで意識したような手つきが、よく見ると美しくて面白い。
ここからは、惜しくも選外となった作品の中から、鶴巻育子先生が気になった作品をピックアップしてアドバイスします。
ちょっと一服
村野那緒 (神奈川県川崎市宮前区 / 16歳 / 神奈川県立川崎北高等学校 / 写真部)
メニューの紙に埋もれたお店のユニークさがモノクロ表現によって際立ちました。タイトルからすると、手前の男性を主役に考えた構成と見られますが、実は作者もこの昔ながらのお店に興味を持ったような気がします。人物を入れることで一見物語性は生まれますが、お店だけをフレームに収めるだけでも時代の流れや「今」が表現されたと思います。
HAMIGAKI
泰地彩央 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
作者のお父さんだそうですが、カメラ慣れしているのか、いい表情を作って歯磨きをしています。このお父さんのキャラクターだけで十分なインパクトがありますが、せっかくの網戸越しというシチュエーションを生かして、網戸の存在をもっと出しても面白かったでしょう。
憧憬 (4枚組)
丸山世梨加 (和歌山県田辺市 / 16歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
元卓球部の作者が憧れの気持ちを込めて撮影した作品。撮影する被写体に興味があったり詳しかったりすることで、気持ちも入りますし、いい瞬間が捉えられるものですね。特に、右端と左端の寄りの2枚は、背景がシンプルで造形的な魅力もあり、緊張感も感じられ目に留まりました。中央2枚は、練習風景として良く写っていますが、どちらかの表現方法でまとめると良かったと思います。