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【2022ベストバイ】ライカのモノクロ世界には価格を越えた魔力と満足感がある「ライカM10モノクローム」

世界的に波乱の年だった2022年。2023年こそは明るく楽しい写真ライフが実現できることを願って、プロ写真家の皆さんに「2022年に買ってよかったモノ」を一斉調査しました。さあ、どんなアイテムが出てくるかな?

中藤毅彦さんの2022ベストバイ「ライカM10モノクローム」

【2022ベストバイ】中藤毅彦さん

ライカのモノクロ撮影専用デジタルカメラ

僕にとっての今年の最大最高の買い物は「ライカM10モノクローム」だ。ご存知の方も多いとは思うが、ライカはこの10年程モノクローム専用のデジタルカメラというほかのメーカーでは考えられない尖った仕様の機種を出し続けている。

CCDセンサー搭載M9ベースの初代Mモノクロームから始まり、CMOSセンサーとなった「Mモノクローム (Typ246)」に続くM型ライカの「M10モノクローム」は、フルサイズコンパクトカメラの「Q2モノクローム」とともにラインナップされる最新モノクロ専用機である。

僕は以前からライカのモノクロ専用機が好きで、初代「Mモノクローム」は随分愛用して自分の代表作となった何枚かの作品を撮影した思い出がある。

最近では28mmレンズ固定の「Q2モノクローム」も愛用している。もちろん画質や性能に全く不満はない。しかし、各種レンズを自由に交換できるM型ボディでこそ、モノクロ専用機の持ち味が最大限に発揮されるのでは? と感じてしまう部分があり、「M10モノクローム」の購入は悲願であった。

超絶な解像力で芳醇なモノクロの世界を生み出す

購入の障壁となるのは、やはりその価格である。118万8000円 (税込) という定価は国産のハイエンドのフルサイズ機と比べても、正直かなり割高と思える価格で、このような汎用性のないニッチな用途のモデルを購入するのは勇気が必要だった。

しかし、芳醇なライカモノクロ世界の味わいは、価格を越えた魔力とも言える満足感がある。このカメラの最大の売りは何といっても、生み出すモノクロ画像の超絶な解像力であるが、M10ベースのカメラ自体の伝統的なレンジファインダーならではの上質な操作感と精悍なデザインもまた大きな魅力である。

【2022ベストバイ】中藤毅彦さん

「ライカM3」以来のM型ライカならではのファインダーの見え味、手に持ったときの重量感、静かで心地よいシャッター音、古今東西のさまざまな名レンズを使える楽しみは、無論この最新型モノクロ専用機でも健在だ。そうした魅力はスペックとは別に写真を撮るモチベーションとして大きなウェイトを占めるものだと思う。

目と脳を自然にモノクロ化させてくれる

ライカのモノクロ専用機を使っていつも思うのは、撮影するときに自分の目と脳が自然にモノクロ化していることである。現在の高性能なハイエンドデジカメであれば、ほかのどの機種でも丁寧にRAW現像すれば質の高いモノクロ化ができると頭ではわかっている。しかし、頭のどこかで「カラーにすることもできる」という意識が残り、中途半端に色を意識してしまうこともあるのだ。

モノクロしか撮れない、いや意識的にカラー画像を撮る機能を排除したカメラという、潔い割り切りによって撮影者の意識も変わり、腰を据えて白と黒のグラデーョンで世界と対峙できるという効果は思いのほか大きい。それこそが高価なモノクロ専用機を使う本当の意味なのかも知れない。

実を言うと、まだ購入したばかりなのだが、まずは手にするだけで気持ちが昂るカメラである。近々に「M10モノクローム」を相棒に携えて、久しぶりの海外を旅して撮り歩きたいと考えている。

実写作例

夕暮れの門司港で撮影した釣り人のシルエット。静かな光景だが、少し動きを画面に出したくて傾けた。フラットな高解像度の画像からコントラストを調整して自分好みの画質にレタッチしている。

【2022ベストバイ】中藤毅彦さん
ライカM10モノクローム カールツァイス C Sonnar T* 50mm F1.5 ZM F16 1/1000秒 +0.7補正 ISO800