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CAPA月例フォトコン学生の部 ピックアップ作品レビュー【2023年2月号】

CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2023年2月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の公文健太郎先生が目を留めた “気になる作品” をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!

〈講評〉公文健太郎

1席「記憶の忘れ物」(4枚組)

森本莉乃 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校 / 写真部)

1席「記憶の忘れ物」(4枚組)
ニコン D3200 AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR

コメント欄が白紙でしたので作者の真意はわかりませんが、妹が生まれたばかりの幼いお姉ちゃんの話のように読めました。こんなのいらないといって踏みつけられたぬいぐるみ、自分ではないものに向けられた母の笑顔、紙の人形を触る指、心にグサッと刺さりました。ストーリーを想像させる切り取り方、ぼかし方、光の使い方、素晴らしいです。

2席「せ~の!」

川﨑廉斗 (和歌山県田辺市 / 16歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)

2席「せ~の!」
キヤノン EOS Kiss X10 EF-S18-55mm F4-5.6 IS STM 絞りF16 1/800秒 ISO400 WB : オート

綱引きの最後尾。勝負が決した瞬間。目の前の仲間の足が地面から引きはがされ、綱の緊張が一気に解放される。綱から手が離れ、撮影者もともに尻餅をついてしまったような臨場感。撮影者が記録係ではなく、綱引きの一員になれたことで写真に強さが生まれました。

3席「夏のはじまり」

平松龍乃輔 (愛知県春日井市 / 16歳 / 愛知県立小牧南高等学校)

3席「夏のはじまり」
ニコン D5600 AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR 絞りF9 1/640秒 ISO200

蛇口から滴る水の形、手の入り方。決定的瞬間とは程遠いタイミングでのシャッターも、手元が見えない構図も、完璧ではありません。でもこの写真には意味や感情を排除した世界が写っています。劇的ではない、渇いた表現もまた写真の面白さだと感じさせてくれます。

入選「足跡」(3枚組)

野々川琥碧 (大阪府吹田市 / 12歳 / 吹田市立古江台小学校)

入選「足跡」(3枚組)
キヤノン EOS 5D Mark II EF28-200mm F3.5-5.6 USM 絞り優先オート 絞りF8 ISO500 WB : オート

お父さんと二人で散歩。お父さんといると怖いものはない。影と同じように気持ちも伸び上がる。雑踏の不安感が写った2枚目、それでも歩くという決意は点灯した青信号に込めたのでしょうか。ただ「歩く」といっても気持ちによっていろいろな姿がある。それを写真で示してくれました。

入選「相棒」

今泉日和 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校 / 写真部)

入選「相棒」
アップル iPhone 13 Pro 26mm 絞りF1.5 1/5秒 ISO2000

バイクのタイヤが大胆に写され、黒がしっかりと締まり、かっこいい仕上がりです。これがスマートフォンでの撮影だというのが驚きでした。バイクに乗った男性の顔や金属の車体を見せず、乗り手の脚とタイヤだけを写したことで「走ること」にテーマを絞った視点が強く伝わってきます。

入選「過酷な参拝」

鰐渕真央 (新潟県長岡市 / 16歳 / 中越高等学校)

入選「過酷な参拝」
ニコン D850 AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED 絞りF8 1/800 秒 −0.3 補正 ISO800 WB : オート

映画のワンシーンのような美しい光景です。赤い傘を差した人物が階段を上がって鳥居をくぐり、だいぶ上まで登ったタイミングでのシャッター。それでもしっかりと冷静に手前の山道や足跡を入れ、この人が歩いた時間をしっかりと表現することができています。

入選「初デート前」

山本多笑 (愛知県大口町 / 16歳 / 愛知県立小牧南高等学校)

入選「初デート前」
キヤノン EOS Kiss X10 EF-S18-55mm F4-5.6 IS STM 絞りF5.6 1/200秒 ISO500

窓辺に差す美しい光のもと、仲良し3人組の楽しそうな声が聞こえてくるようです。仲間を撮った応募作品の中には、どうしても演技に頼った写真が多く見られます。そんな中で自然なやりとりを捉えたこの写真のみずみずしさにとても引かれました。

入選「みがく」(3枚組)

森本羽音 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)

入選「みがく」(3枚組)
キヤノン EOS Kiss X10 EF-S18-55mm F4-5.6 IS STM 絞りF5.6 1/125秒、1/100秒、1/160秒 −1補正 ISO6400 WB : オート

動きの速さをカバーするために感度を上げて撮ったことで出た粒状感、高コントラストな仕上がりが良いですね。人は皆、歯が生えてから毎日歯を磨きます。歯磨きが、人にとって欠かすことのできない「食べる」「寝る」に等しい行為であることを見事に表現しました。

入選「開花」

安藤咲奈 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校 / 写真部)

入選「開花」
ニコン Z 50 36mm 絞りF20 1/1600秒 ISO800

曇り空にそびえ立つ造花のシルエット。この組み合わせもさることながら、左右対称に配置されたカーテンと窓枠がシルエットを閉じ込め、横に走るサッシが花の茎を分断しています。閉塞感や残酷さを持った世界に、渇いた花が伸びようとする力強さを感じました。

入選「反射の世界」

山本紘実 (神奈川県川崎市 / 16歳 / 神奈川県立川崎北高等学校 / 写真部)

入選「反射の世界」
ニコン D3300 絞りF8

橋の鉄骨に写った水の綾。ゆらゆらと揺れる動きの美しさが、静止画の中にしっかりと表現されています。硬い鉄骨の底面と側面、ボルトやつなぎ目といった構造物の変化が、綾が描く線の柔らかさを強調しています。プリントも美しかったです。

 

ここからは、惜しくも選外となった作品の中から、公文健太郎先生が気になった作品をピックアップしてアドバイスします。

ムシテン

榎本萌々 (和歌山県田辺市 / 18歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)

ムシテン
キヤノン EOS Kiss X10 EF-S18-55mm F4-5.6 IS STM 絞りF13 1/60秒 +0.3補正 ISO800

虫の視点ということで草むらの中から超ローアングルで狙っています。この作品の面白いところは手前の草の色です。虫の目になるということは、視点の低さだけではなく色だって人間と同じように見えているとは限りません。当たり前に見えているもの自体を考察し直したことがとても良いと思いました。もう一歩。虫だったらどう見えるのでしょうね。考えてみましょう。

家族の集まり

泰地彩央 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)

家族の集まり
キヤノン EOS Kiss X10 EF-S18-55mm F4-5.6 IS STM 絞りF4 1/50秒 ISO1600 WB : オート

家族模様と言えばよいのいでしょうか。性別、年齢入り混じって、小さな部屋の中で繰り広げられるハチャメチャが格別です。残念なのはピントの位置。願わくば全員の面白さを均等に扱うためになるべく、パンフォーカスに近づけたかった。それが叶わない暗さであれば、奥のお兄ちゃんたちにしっかりとピントを合わせたかったですね。

銀鏡

西田和心 (さいたま市西区 / 埼玉栄高等学校 / 写真部)

銀鏡
キヤノン EOS Kiss X10 EF-S18-55mm F4-5.6 IS STM 絞りF4 1/90秒 +2補正 ISO400 WB : オート

銀鏡と題し、街中を走るタンクローリーに映る空を撮った反射神経は素晴らしいです。ただプリントが悪く、せっかくの写真がもったいなかったです。タンクローリーの金属や雲の線がしっかりと出るようにプリントしましょう。解像度も足りないかもしれませんね。トリミングするときは気をつけましょう。きれいにプリントできていれば入選でした。