桜撮影の季節がやってきた。でも胸に手を当てて、考えてみてほしい。毎年、意識せずに同じような写真ばかり撮っていないだろうか? そこで桜撮影でやってはいけないポイントを集めてみた。これで代わり映えしない写真から脱却しよう!
① 周りを見ずに撮り始めてはいけない!
② 木全体を撮ろうとしてはいけない!
③ ただ見上げて撮ってはいけない!
④ PLフィルターを使わずに撮ってはいけない!
⑤ カメラを手持ちで撮ってはいけない!
⑥ 曇り空を背景に写してはいけない!
⑦ アップの写真ばかり撮ってはいけない!
⑧ レタッチでピンク色にしてはいけない!
工藤智道流・桜撮影のポイント
① 周りを見ずに撮り始めてはいけない!
桜の木は里山にも多いが、その周囲には電柱や電線、民家やガードレールなどがある場合も。桜にばかり気を取られて周囲をよく見ないで撮影すると、写真の隅に電線などがちらっと写っていたなんてことに。撮りたいと思う桜を見つけたらすぐには近寄らず、まずは構想を練って、離れた場所から撮り始めよう。
② 木全体を撮ろうとしてはいけない!
一本の桜の写真を撮影する場合、木全体をフレーミングして撮ると、どこか観光パンフレットのようであり、印象の弱い写真になりやすい。なんとなく全体を収めがちだが、思い切って画面からはみ出るくらいの構図にしたほうが、迫力が出る。
③ ただ見上げて撮ってはいけない!
桜を撮りに行くと、多くの人はすぐカメラを持って木に近づいていく。近くに行くと、木には高さがあるため自然と見上げるアングルとなり、空が背景になってしまう。意識せず桜の近くばかりから撮ると、どこで撮っても全て代わり映えしない写真になってしまう。桜から離れて、桜の形や表情などを引き出して撮影しよう。
④ PLフィルターを使わずに撮ってはいけない!
PLは光の反射を抑えて、写真の色彩コントラストを高めて撮影できる、風景撮影になくてはならないフィルター。特に桜の撮影には必需品で、青空をより濃くすることができるのはもちろん、桜の花びらも実際は光を反射しているため、その反射が除去されることで、より立体的、かつ花の色もより濃く写すことができる。
⑤ カメラを手持ちで撮ってはいけない!
手ブレ補正が進化して、明るいシーンでは確かに手ブレせずに撮影できるが、どうしてもお手軽な構図になりやすい。細かな花をいっぱい咲かせる桜に正確なフレーミングやピント合わせなどを行なうには、ていねいに三脚を使った方がクオリティが上がる。また、風のあるシーンや水面を漂う花びらなどはスローシャッター撮影となるため、やはり三脚は必須だ。
三脚を使ってチャンスを待つ
⑥ 曇り空を背景に写してはいけない!
桜の花は種類にもよるが白っぽい色をしている。曇り空では空も白っぽくなり、桜の花もくすんでしまい色が映えない。どうしても曇り空で撮る場合は、背景が空ではないアングルを選んで撮影した方がいいだろう。
⑦ アップの写真ばかり撮ってはいけない!
満開の桜の姿はとても美しい。そうやってたくさんの花を咲かせるのに、なぜか花のアップばかりを撮る人がとても多い。美しく撮れれば作品にはなるのだが、花に見惚れてアップばかり撮っても、同じような写真がたくさん保存されていくだけだ。広く外に目を向け、アップではない写真も狙ってみよう。
⑧ レタッチでピンク色にしてはいけない!
桜の花といえば、ピンクがかった色だと先入観を持つ方が多い。しかし実際には白っぽい花が多い。デジタル写真は簡単にレタッチできるため、桜の色が白いと記憶色としっくり合わないのか、ピンク色にしてしまう人が多い。過度なレタッチはやはり不自然に見えるので、本来の桜の色を変えることなく作品に仕上げたい。
桜撮影の基本
●絞り優先オートで撮るべし
●ホワイトバランスは太陽光にすべし
●三脚、PLフィルターは必須
●レンズは広角から望遠まで用意すべし
●桜前線はあてにならない
工藤智道流・桜撮影のポイント
桜の開花予報は鵜呑みにしてはいけない
桜は写真を撮る人であれば、必ずカメラを向ける格好の被写体だろう。桜が咲く時期となれば桜前線や開花予報がニュースを賑わせるが、個人的には、あまりこうした情報はあてにしないようにしている。
桜前線は各地にある標本木の開花が基準になっている。桜と一口に言ってもその種類はさまざまで、早咲きの桜もあれば、遅咲きの桜、そして地形や標高によっても変化してしまう。そのため必ずしも標準木の咲き具合が写真撮影に役立つ訳ではないのだ。
工藤流の桜撮影は、ある程度は開花情報も気にしつつ車を走らせ、実際の桜の咲き具合を見ながら、満開の桜を探し、見つけたら撮影する。さらにそのエリアを中心に方角や標高、桜の種類を考慮しながら次の木を探して撮り歩く「さくら旅」が毎年の恒例となっている。
ただし、桜が満開で美しい姿を見せてくれていても、タイミングによっては天候が悪い場合もあり、思ったように撮れないこともある。そういった天候に恵まれなかったときには、残念だが、また翌年に撮影することになってしまう。それもまた桜撮影なのだ。
そんな撮影を毎年続ける中で、意識するようになった「気をつけたいこと」をまとめてみた。基本的なことではあるが、どれも桜を撮るうえで大切なことなので、頭の隅に置いていただき、今年の桜撮影を成功させるための参考にしてほしい。
WBは「太陽光」でないと微妙な色の差が消えてしまう
桜は基本的に「絞り優先オート」で絞りを設定して撮影すればいい。ホワイトバランスは「太陽光」が基本。色の濃い桜もあれば色の薄い桜もあり、中には真っ白な桜もあるが、WBがオートだと、桜の持つ微妙な色合いが消えてしまうことがある。太陽光にすることで、淡い色合いを忠実に引き出すことができるようになるのだ。
フォトコンテストの審査や写真教室などで桜の写真を見せていただく機会があるが、桜はみんなピンク色だと思っている方や、ピンクにしたほうがいいと思ってレタッチで色を付けてしまう方が多いのには驚く。中には派手なピンク色に寄せてしまった作品もあり、がっかりすることも少なくない。自然な美しさを目指したいものだ。
また、気をつけたいのは、すぐに桜の木の近くまで近寄ってしまうこと。撮影会を始めると、ほとんどの人がすぐに根元に集まっていく。桜は花木であるため、背が高く、近づくと必ず見上げることになり、単調で代わり映えしない写真になってしまう。
さらに、桜のフォトコンテストでは応募作品の7割近くが桜の花のアップだったりする。アップの写真はキレイだが、どのように撮っても変化がつけにくいから、ほどほどにしたい。
意識的に離れた場所から撮影して、桜の木のフォルムが鮮明になるように心がけたり、周囲の情景とともに撮ることで、美しく咲く姿がより引き立つ。自分らしい最高の桜を撮影してほしい。