『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2023年6月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の公文健太郎先生が目を留めた “気になる作品” をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉公文健太郎
1席「晴れ姿」
松室茜里 (千葉県鎌ケ谷市 / 16歳 / 千葉県立柏の葉高等学校 / 写真部)
スッキリと晴れた運動会。ありきたりのシーンのようで、いろいろなことを考えさせられました。観客として写るマスク姿の女性2人。どうしてこの2人だけが絵の中に写り込んだのか。まるでこの2人しか観客がいないかのようです。たった2人になってしまった観客の前で、少年はそんなことに気を留めることなく、晴れやかな顔でゴール (未来) を目指しているように感じられます。
2席「町」(5枚組)
長 知鞠 (和歌山県田辺市 / 18歳 / 和歌山県立神島高校 / 写真部)
いかにも夏らしい水遊びや打ち水だけでグループを作るのではなく、少し外した2枚目と4枚目が効いています。特に4枚目は夏の夕暮れの物悲しさが写っていて、作品全体の立体感につながっています。選挙ポスターや表札など、町に必ずあるものを大切に切り取っている丁寧さも良いですね。
3席「言えるのは」
タムラコウ (千葉県我孫子市 / 16歳 / 千葉県立柏の葉高等学校 / 写真部)
河川敷に佇むトランペッター。柔らかい光と、にじんだ輪郭が美しい写真です。遠くに見える人工物が写真の奥行きと、河川敷の寂しさを演出しています。人物の大きさが絶妙で、圧迫感を抑えつつも強さがしっかりとある。写真的な表現が盛り込まれていて、演出写真の中では突出して完成度が高かったです。
入選「顔出しNG」
安達志帆 (愛知県愛西市 / 17歳 / 愛知県立佐屋高等学校)
修学旅行での1枚とのこと。USJという誰もが知っている名前に対して、顔を隠した匿名の人たち。そのギャップが面白いなと思いました。修学旅行なので時間帯は選べなかったと思いますが、正面から強い光が当たっていればもっとこの対比が浮き上がってきたと思うと少し残念です。
入選「生きる証」(4枚組)
柳生陽音 (福井県越前町 / 17歳 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)
美しいモノクロ写真でした。きっちりとモノクロ表現の性質を理解していますね。1枚目の写真が特に印象的でした。日本画にしばしば登場するスズメのようです。2枚目の水と木が溶け合っている雰囲気も素晴らしいと思いました。それに比べると残りの2枚をもう少し丁寧に切り取れると良かったです。
入選「夢うつつ」
鈴木拓海 (横浜市旭区 / 16歳 / 神奈川県立瀬谷高等学校 / 写真部)
横浜ランドマークタワーの下。少女を見下ろすのは、目の前に立つ人物だけではなく、この街もその一つ。超ローアングルで地面を大きく入れたことで、見下ろされる視線がずっしりと重くのしかかってきているように感じられます。
入選「煌き」
長縄花音 (愛知県北名古屋市 / 17歳 / 愛知県立小牧南高等学校)
タイトルの通り、キラキラとした少女の眼。差し込む強い光と、手で作った影のコントラストが美しいです。手の形がとても不思議で、ポージングしてもらったのか、自然に出てきたものなのかわかりませんが、具体的に「覗く」や「キメる」という言葉に落とし込めない形になっているのが良いと思いました。
入選「昼下がり」
鈴木こころ (愛知県豊川市 / 豊川高等学校 / 写真部)
体育館での写真はどうしてもミックス光になってしまい、ヌケの悪い色味に仕上がりがちです。ここであえてモノクロを用い、床の反射をコントラストとして使った狙いが成功しています。ボールの行方が中途半端なのもとても良くて、この先の展開をいろいろな方向に想像できます。
入選「超えてゆけ」
埴淵結理 (香川県多度津町 / 16歳 / 香川県立多度津高等学校 / 写真部)
「大空に紙飛行機」は高校生のコンテストではよく目にするモチーフです。その多くが「未来へ向かって飛んでいけ!」という希望的なメッセージを含んでいます。それらに対して、この写真は飛行機と人が静的に表現されており、ただ美しいなと思わせてくれます。
入選「僕らの場所」(4枚組)
森本羽音 (和歌山県田辺市 / 18歳 / 和歌山県立神島高校 / 写真部)
橋の下で無邪気に遊ぶ子どもたち。風景的に捉えたもの、躍動感を捉えたもの、光を捉えたものと、どの写真もとても完成度が高いです。この先に一つ、気づきやメッセージが見えてくると、何倍も写真が良くなると思います。この先のもう1枚、どんな写真でしょうか。