『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2023年7月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の公文健太郎先生が目を留めた “気になる作品” をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉公文健太郎
1席「夢見心地」(4枚組)
下浦茉侑 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高校 / 写真部)
ビビッドな色使いと、斬新な構図。グラフィカルでデザイン性の高い作品としても評価できますが、随所に見られる手づくり感がこの作品の魅力です。背景紙の継ぎ目だったり、布のシワだったり、フォーカスの甘さや、小さなブレ。これがあるからこそコンピューター上で作られたデザインではなく、写真らしく訴えかけ、制作者の心のうちを想像させてくれます。
2席「明日を夢見て」
中野 龍 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校 / 写真部)
木枯らし吹く冬の朝、受験勉強に励む少女。超ハイコントラストのモノクロ写真の中に多くの心くすぐる情報がしっかりと刻まれています。古い窓ガラス、その向こうでひらひらと揺れる洗濯物。竹籠に入ったみかんはがんばる孫への祖母の差し入れなんだろうな、と物語が広がります。
3席「人生の階段」
藤田陽瑠 (鳥取県八頭町 / 15歳 / 鳥取県立鳥取聾学校 / 写真部)
なんでもない光景が、写真に写すことで深い意味を与えられることがあります。普通の学校の階段ですが、両側の壁に映る光の色や、窓に向かう線の構造のせいか、未来への希望を感じさせてくれます。同時に足元の道標が、親切なようで分割され読みにくくなっていることに、示唆してくれることがあるように思います。
入選「毎日」
小川結衣 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高校 / 写真部)
手のひらや、顔のシワに人生が表れるというのはしばしば言われることですが、実は足の裏もその人のことを語ってくれます。歩くこと、走ることで、血液は正常に体を巡ります。2本の足で立ったことで人間は進歩したとも言われています。足の裏のポートレート、見ていて飽きません。
入選「静かな朝」
山田真生 (岐阜県関市 / 17歳 / 関市立関商工高等学校 / 写真部)
浅草の街角でこんなにも周りに人がいない状況も珍しいように思います。落書きのように無造作にステッカーが貼られた標識と、制服姿の少女を対比するように撮ることで、作者が少女に何を見ているかを考えさせられます。対比させるのであれば、少女の立ち方にももう少し気を配ってもよかったですね。
入選「under sky」
木村春奈 (福井県越前町 / 17歳 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)
虚ろげな少女と、傾いた構図によって斜めに配置されたガードレールと電柱が、見る人に目が回っているような、酔っているような不思議な感覚を覚えさせます。F22 と絞りすぎたことで、画像の線が逆ににじみ (回折現象)、これが効果的に効いていると思います。
入選「同じ景色をもう一度。」
富田奈々美 (島根県出雲市 / 17歳 / 島根県立平田高等学校 / 写真部)
今月はたくさんの桜の写真の応募がありました。多くの写真が桜の美しさだけに注目している中で、学校生活に漂う春の空気を写したこの作品に心引かれました。シャドー部の青みを生かした仕上げがとても美しかったです。
入選「ガラスの向こう」
斎藤百恵 (愛知県岡崎市 / 16歳 / 光が丘女子高等学校 / 写真部)
まるで地球儀に駆け寄る子どもたちのように錯覚しました。ブレ感が水族館の現実味をうまく消しています。だいぶ低い位置にある水槽の窓でしょうか? 少し上から見たことでシルエットが重ならず子どもたちの動きがよく出ています。手の形や、覗き込む姿をタイミングよく切り取りました。
入選「有終の美を飾れなかった男」
南雲美紗稀 (新潟県長岡市 / 16歳 / 中越高等学校)
面白がって水たまりに飛び込んだそうですが、不思議な光景ですね。うなだれる少年と、遠目から見下すように笑う生徒たち。この二つの関係がとてもシュールである一方で、その光景が明るくクリアに捉えられているギャップが面白いです。
入選「いーれーてっ」
山本知佳 (福井県越前町 / 17歳 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)
二人の少女の健気な仕草。目を引く配色や構図も良いですが、何より表情が最高です。大人が考える「ほのぼの」ではない、二人の素直な表情。絵に描いたような状況での、現実。理想と現実の間に小さなズレができるのが、写真の魅力の一つです。