『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2023年8月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の公文健太郎先生が目を留めた “気になる作品” をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉公文健太郎
1席「どれにしようかな」
酒井華音 (千葉県流山市 / 15歳 / 千葉県立柏の葉高等学校 / 写真部)
日常の風景、当たり前にあるモノの存在感。スワンボートが池に浮かぶ、ただそれだけなのに強烈な印象が残ります。これぞ写真という一枚です。雲の形のようにコントールできないことにも恵まれていますが、水に映るスワンボートの切れ方、前ボケの絶妙な存在感はセンスと言えるでしょう。テクニックではなく、感性が光った一枚です。
2席「シニガミ」
長沢未来 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校 / 写真部)
廊下に佇む女性の影。超高感度によるノイズ感や、ワイドレンズの歪曲を見事に生かしています。タイトルは「シニガミ」でしたが、見方によっては決意を持って外の世界へと歩み出そうとする少女の心を撮っているようにも見えます。さまざまな解釈ができる写真は、良い写真の一つだと思います。
3席「隠れられたかな??」
柳生陽音 (福井県越前町 / 17歳 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)
ある意味お手本のような構図で捉えたシラサギの写真ですが、光のいたずらによってとても面白い写真になっています。背景がつぶれたことで、お手本のような構図がデザイン画のように浮き立って見えます。まるで作り物のような出立ちがこの写真の魅力です。
入選「ぼっち」
南雲美紗稀 (新潟県長岡市 / 16歳 / 中越高等学校)
教室の窓から見つけた一瞬を冷静に切り取っています。試合に敗れて天を仰いでいるのでしょうか。足元のテニスコートには左右に走り回った跡が見えます。隣のグラウンドで野球部が練習しているのがまたいいですね。これが入ることで個人競技の選手の孤独さと、強さを同時に感じることができます。
入選「守護神」
山本大智 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校 / 写真部)
犬の佇まいがまるでこの神社の守り神のようです。背景の木の枝が扇状に広がり、漫画に使われる集中線のような効果が生まれています。集中線に誘導されるように目がいく犬の口が、笑っているようにも見え、とても不気味です。
入選「キミヲムカヘニキタ」(3枚組)
小川結衣 (和歌山県田辺市 / 18歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
ホラー映画ともまた違う、写真だからできる怖さがうまく演出された3枚です。特に1枚目と2枚目は、あたかも自然な仕草の中で生まれた一瞬のようでより怖さが引き立っています。3枚目だけが、あえて怖くしたかった、という意思が写りすぎていて、少しチープに見えてしまいました。
入選「一緒に干してほしかったなぁ」
一柳佳優 (愛知県知立市 / 16歳 / 愛知県立知立高等学校)
干物を作る際に切り落とされた、魚の頭とのこと。ある意味ゴミなのでしょうが、どこか可愛くも見えます。これで絞りがしっかりと絞れて、全体にもっとピントが合っていれば最高の写真でした。少しずつオートから絞りやシャッタースピードを意識的にコントロールすることを覚えましょう。
入選「デジタルlove」
石井秋稔 (横浜市瀬谷区 / 17歳 / 神奈川県立横浜瀬谷高等学校 / 写真部)
ライブを携帯で録画しているところのようですが、RECボタンの赤、舞台照明とそれが反射する携帯のエッジの緑、液晶画面の中の紫、手に握られたサイリウムライトのオレンジ。なかなか写真の中に同居することがない強い色が、怪しく溶け合っている光景に引かれました。
入選「たたずむアイツ」
野々川琥碧 (大阪府吹田市 / 12歳 / 吹田市立古江台中学校)
だれもが見たことのあるモチーフだけに撮るのが難しいものですが、太陽の塔といえばこういうもの、という常識を覆してくれる写真です。狭い天窓から見える顔は、大空に浮かぶいつも見るそれより、どこか悲しく、虚しい表情をしています。常に写真の眼をもってモノを見ている作者の姿勢が素晴らしいと思います。
入選「夕暮れ、公園で」(4枚組)
丸山世梨加 (和歌山県田辺市 / 16歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
学校帰りの公園でしょうか。1枚目は夕暮れの道をただ歩く少女。2枚目、3枚目はダイナミックに目線が動き、4枚目はどこか高いところへ逃避したことを示唆することで物語が終わります。そっと始まり、示唆で終わる。優れた組写真です。