『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2023年10月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の公文健太郎先生が目を留めた “気になる作品” をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉公文健太郎
1席「1日の楽しみ」
土田優姫 (仙台市泉区 / 15歳 / 宮城県泉高等学校 / 写真部)
高校生のフォトコンテストでは「青春」をテーマにした作品がたくさんあります。内面の葛藤を描いたり、某飲料メーカーのCMのようにやたらと爽やかに走り回ったり。もちろんそれも高校生の一面なのだと思いますが、この作品は限られた情報の中に、高校生の輝く時間がぎゅっと詰まっています。思わず「いいね!」と声を発してまったほど素晴らしい作品です。
2席「思索中」
上村芽生 (三重県志摩市 / 17歳 / 皇學館高等学校 / 写真部)
オーソドックスな写真の良さが光る作品です。モノクロームの柔らかなトーンで、路面や植物の質感を描き、構造物の線をダイナミックに使い動きを出す。写真としての完成度が高いです。少女が緩んだ一瞬を撮ったことで、ポージングではない偶然の面白さも描かれました。
3席「アスリート」
曽根千寛 (徳島県阿南市 / 15歳 / 徳島県立阿南光高等学校 / 写真部)
今月はたくさんのスポーツを捉えた作品の応募がありました。その中でこの作品からはさまざまなドラマが感じられました。力を出し切ったアスリートの達成感、目標に及ばなかった絶望感。ドラマチックでありながら冷静に捉えられています。
入選「無」
中野 龍 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校 / 写真部)
お得意の粗い硬質な表現が、写真のテーマと合っていました。この表現を生かす被写体はどんなものなのか、これから追求していけると良いと思います。この作品は無表情であることが大切なポイントです。右側の少年に少し表情を感じてしまうのが残念でした。
入選「前夜」(3枚組)
井手口 心 (千葉県松戸市 / 17歳 / 千葉県立柏の葉高等学校 / 写真部)
祭り前の光景を捉えた作品です。1枚目と3枚目に引かれました。特に1枚目は祭りへの奉納社を明記する壁と、それを準備するための脚立に光が当たり、真っ暗な中に浮き立っていて、とても現実的でありながら抽象的な表現にもなっています。この1枚に絞っていたら1席でした。
入選「空に向かって」
梅本こと乃 (広島県海田町 / 16歳 / 広島県立海田高校 / 写真部)
すっと空に伸びる一輪の花。独特の黄色みがかった青空に、柔らかな曲線を描きながら伸びています。なんとも美しく、優れたポートレートを見ているような気持ちになりました。被写体をじっくりよく観察し、どう表現するか。よく考えられた作品です。
入選「Way back home」
柳生陽音 (福井県越前町 / 18歳 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)
セルフタイマーで撮影したとのこと。純粋なスナップショットであれば、もう2、3歩人物が離れたところで撮影しそうですが、逆にこの人物の大きさが、背景の構造の強さに負けない存在感を出してくれました。
入選「寂」
寺島 圭 (川崎市宮前区 / 16歳 / 神奈川県立川崎北高等学校)
視線の先を感じさせる優れたポートレートです。手前のコンクリートの質感や遠くに見える作業船、にじんだ街の影が、社会の中で悩み、それでも「私」でいようとする少女の強さを演出しているようです。柔らかなトーンも見事。
入選「17:00の放課後」
廣部美咲 (福井県越前町 / 17歳 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)
写真部の活動の中でのひとコマとのことですが、狙っていた状況ではなく、偶然見つけたサブストーリーなのでしょう。とても自然でいい光景です。雨が上がって明るくなった空を、少女たちが喜んでいるように見えました。
入選「愛心」(4枚組)
蔦原真奈 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高校 / 写真部)
猫が主人公にならないよう工夫を凝らした作品。2枚目はうまくフォーカスを外し、猫そのものではなく、注がれた愛情に着目しているように感じます。距離感、フォーカス、シルエットと技術を駆使して作品の真意を伝えています。
ここからは、惜しくも選外となった作品の中から、公文健太郎先生が気になった作品をピックアップしてアドバイスします。
今日はデート (4枚組)
赤沼奏空 (愛知県豊川市 / 豊川高校 / 写真部)
このタイトルに、被写体は髪を整えて出かける二人。その気持ちは昔からずっと変わらぬものなのでしょう。幸せを小さなことで作っていく、そんなメッセージを感じます。全体のテーマも良いのですが、やはり3枚目の写真が素晴らしいです。美容師に委ねるおばあちゃんの無防備な表情が素晴らしいです。それに対して1枚目、2枚目が説明的で残念です。テーマとは切り離し、この一枚で応募しても良かったかもしれません。
ゴーイング・マイ・ウェイ
佐藤颯斗 (横浜市瀬谷区 / 15歳 / 神奈川県立横浜瀬谷高等学校 / 写真部)
最高の光景に出逢いましたね。犬や猫ではなく、亀ですか。こんな亀に道端で出会ったらさぞ驚くことでしょう。その周りの反応を見たかったです。我が物顔で闊歩する亀が主人公で良いと思います。けれども周りをしっかりと入れたほうが、その異様な光景を楽しめる写真になったと思います。
ここであってる…?
都丸和香 (横浜市港北区 / 16歳 / 神奈川県立川崎北高等学校)
海辺に二人で旅行でしょうか。でも普通はスーツケースは浜辺に持って行きませんね。乱れた服装や、危うさを感じる二人の距離、あるはずのないスーツケースが、訳ありな感じがして物語を想像してしまいます。この訳ありな感じ、危うい感じを引き立てるために、もう少し引いて、ポツンと二人を描いたほうが良かったかもしれません。