『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2023年11月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の公文健太郎先生が目を留めた “気になる作品” をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉公文健太郎
1席「影」(4枚組)
川﨑廉斗 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高校 / 写真部)
写真は目の前にある事実を切り取る表現ですが、その中で目に見えないものが写った時に大きな価値を持つと思います。この作品は家族を失った作者が、残された人間の感情と、失ったものの存在を写しています。作者の思いの発露ではなく、誰もが持っている失うことの悲しさ、寂しさを呼び起こし共感を生みます。素晴らしい作品です。
2席「怪人メガホンマン」
河﨑 華 (広島県庄原市 / 16歳 / 広島県立庄原格致高等学校 / 写真部)
面白い! 思わず笑顔になる作品です。なんでもないことを面白がって写真に置き換えた作者の遊び心が光っています。全体にクリーム色がかった色調も温かな目線を強調しています。二人の少年が外側に傾いていることで、画面全体に動きも感じられます。
3席「ゲリラに負けるな」
島 健竜 (愛知県豊田市 / 18歳 / 愛知県立猿投農林高等学校 / 写真部)
フィルムで撮影し、暗室でプリントされた作品です。写真にモノとしての質量を感じると同時に、感度が上がらなかったり、露出の過不足が画像に表れていたりと、一見マイナスと思えることが写真の面白さにつながりました。風にあおられる傘のブレ感、雨粒とフィルムの粒子感、良いですね。
入選「予感」
柳生陽音 (福井県越前町 / 18歳 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)
スローシャッターで海面をブラした写真独特の表現に、少女を写し込みました。3秒間止まってもらっての撮影は何度も試行錯誤したのではないかと思います。技巧に溺れることなく、少女の表情や、場所の選定、光の具合もしっかりと計算された力作です。
入選「三人三色」
森 健成 (愛知県江南市 / 16歳 / 愛知県立西春高等学校)
ファッションもポーズも写真の雰囲気も、なんとなく古くなった流行りのようで、それが意図したことなのかわかりませんが、絶妙だなと思いました。まるで切り抜いたように見える真っ白な空も効果的でした。
入選「あの夏をもう一度」
伊藤理音 (島根県出雲市 / 17歳 / 島根県立平田高等学校 / 写真部)
たたずむ二人の少女。風になびく髪のせいか、海辺に立っているのかなと想像させられます。同じ服装で学友にも見える二人の間にアクションがないことで、同じようで他人であることも示されているようです。引き込まれる作品です。
入選「一縷の望み」
増田晶文 (横浜市瀬谷区 / 16歳 / 神奈川県立横浜瀬谷高等学校 / 写真部)
水に浮かぶ一円玉。着水した瞬間なのでしょうか?不思議な物理現象がモノクロでプリントに定着し、一枚のアート作品として見応えがありました。写真表現の周りには物理現象がたくさんあります。絞りやシャッタースピードだけではなく、世界をよく観察し、起こる事象をアートに昇華させてください。
入選「鏡映」
斎藤百恵 (愛知県岡崎市 / 16歳 / 光が丘女子高等学校 / 写真部)
空と海が一つになる晴れた夏の日。水平線を自ら引き直し、不思議な世界を作っています。私たちが暮らす大地は水に浮かんでいるとも見えますし、地球の丸さを感じたりもします。鳥が飛んでいますが、ちょっと冷静に、生き物が写らないほうがこの不思議な世界をより表現できたかもしれません。
入選「バスを待つ」
福田浬央 (三重県伊勢市 / 18歳 / 皇學館高等学校 / 写真部)
バスを待つ少女たち。暑そうに見えるのは一番右の子の仕草のせいでしょうか? 二人組と一人ぼっちの子がいますが、みな携帯電話を片手に持っています。昔のように一人ぼっちが寂しいという感覚はないのかもしれませんね。
入選「見つめる」(4枚組)
丸山世梨加 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高校 / 写真部)
猫の目線で撮影したとのこと。動物の視点を借りる表現はよく目にしますが、ただ目線を借りるだけではなく、その目で世の中に起こっている面白いことをしっかりと見つけています。4枚目の鳩の歩みはなんとも可愛らしく、猫との関係を想像すると滑稽でもあります。