ここからは、惜しくも選外となった作品の中から、公文健太郎先生が気になった作品をピックアップしてアドバイスします。
私だけの時間
太田和可菜 (島根県出雲市 / 17歳 / 島根県立平田高等学校 / 写真部)
少女の後ろ姿。まさに時が止まっているかのような静粛な写真です。音もなければ、風も吹かない、ただ少女が凛と先を見つめている。とても少ない情報の中でこれだけ想像させられるのは写真のすごさだと思います。完全な逆光写真をきれいにコントロールし、美しく仕上げたのも素晴らしいです。もう一歩構図に不安定感があってもよかったかもしれません。例えば日の丸にして、視線の先をあえて狭くする。未来を見つめつつも過去を感じる、そんな写真になったかもしれません。
歪んだ地
鰐渕真央 (新潟県長岡市 / 16歳 / 中越高等学校)
作品の舞台は芸術祭の一部ですが、見る人によって新しい視点ができるものです。まさにこうして撮られることで完成される作品なのかもしれませんね。とてもアングルが自由で軽快なのは、携帯電話で撮られたからでしょうか。その良さもある一方で、もう一歩画像の質を上げられると、存在感が増したのではないでしょうか。ぜひチャレンジしてみてください。
雨練 (4枚組)
山中すみれ (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高校 / 写真部)
雨の日の野球部の練習を追ったドキュメンタリー作品。良いところに目をつけたなと思います。モノクロでしっかりと動きを捉え、変化をつけられる技術は素晴らしいです。また、腕をけがをした少年まで同じように練習に励む姿が、「その時にできることをすべてする」という野球部の姿勢を決定づけています。一番残念なのは、雨の日であることがあまり伝わってこないことです。せっかくの組写真。説明的にならずともどこかで雨の匂いが感じられたら良かったのですが。