ここからは、惜しくも選外となった作品の中から、鵜川真由子先生が気になった作品をピックアップしてアドバイスします。
ピックアップ「朝のおつとめ」(4枚組)
安藤野々花 (愛知県豊川市 / 17歳 / 豊川高等学校 / 写真部)
鶴橋はとても魅力的でフォトジェニックな街ですよね。この作品は粒子の粗いモノクロでの描写が特徴的で、個人的にも非常に好きな作風です。ただ、今回は抽象的なイメージの印象が強いため、鶴橋という街の良さが霞んでいるように思いました。自分独自の世界を表現するのか、街としっかり向き合うのか、どちらかに振り切った方が作品の精度がより上がるでしょう。
ピックアップ「さよなら」
田中映三 (千葉県流山市 / 16歳 / 千葉県立柏の葉高等学校 / 写真部)
「美しいけど怖い」それが第一印象での感想でした。どういう感情であろうと、人の心を動かす作品には強さがあると思います。アニミズムと呼ばれていますが、物には魂が宿るという考えが日本には古くからあります。そういった背景があることや日本の伝統的な人形が炎に包まれていることで、非常に深い意味を持つ作品となっています。それが日本人の私が「美しいけど怖い」と感じた理由でしょう。
ピックアップ「あほ毛」(4枚組)
山中すみれ (和歌山県田辺市 / 16歳 / 和歌山県立神島高校 / 写真部)
あともう一歩で入賞という作品でした。「あっ」と思った時に切り取る瞬発力、白と黒で画面を構成する表現力、どちらもとても優れていると思います。ここに自分の主張が加わると、作品としてとても強くなり、ステップアップできるでしょう。日々自分が感じていることに目を向け、それを大切に育ててほしいと思います。
ピックアップ「軌跡」(8枚組)
斎藤百恵 (愛知県岡崎市 / 17歳 / 光ヶ丘女子高等学校 / 写真部)
作者の心情がダイレクトに伝わってくるとても清々しい作品です。自分の高校生活を、ずっと履き続けてきたローファーに置き換えている発想力が素晴らしいですね。いろいろな角度や撮り方で表現していることからも愛着を感じられます。とても好きな組写真なのですが、もう少し厳しくセレクトをして、枚数を減らした方が作品としての質は上がったでしょう。