昨年の春ごろから写真やカメラに興味を持ち始めたと思ったら、今年はNikon『フォトサポ』アンバサダーに就任するなど、一気に写真に関する活動が増えた後藤佑紀さん。そして先日、レースアンバサダーを卒業し、カメラマンを目指すことを宣言。なぜカメラマンを目指すことになったのか、後藤さんが感じる写真の魅力とは何か、写真を全力で楽しんでいる今の想いを聞いた。
「フォトサポ」アンバサダーは大きなきっかけ
――なぜカメラマンを目指そうと思ったのでしょう?
今年から参加させていただいている『フォトサポ』アンバサダーの企画で、お客さんやファンの方と一緒にサーキット内の撮影ポイントを巡って撮影するフォトツアーがあるんです。ツアーの参加者の方はひとりで黙々と写真を撮りたいっていうよりは、まだカメラが始めたてでどこで撮っていいかも全然わからないという方や、これからマシン撮りを始めたいという方も多いんです。でもこういうツアーがあることで、使っているカメラやレンズに合わせて、ここから撮るとこう撮れるよなどと教え合ったりしながら初めての方でもサーキットでの撮影やマシン撮りが楽しめるっていうところがすごくいいなって思っていて。
モータースポーツの撮影っていうと、長い望遠レンズがなきゃいけないとか、撮る場所が分からなかったりハードルが高いイメージがあると思います。でも、このフォトツアーみたいに、教え合うことができたり、コミュニティが生まれたりするのはすごくいいなぁって思って。チームやドライバーのファン、レースアンバサダーのファン、レースの観戦自体が好きとか皆さんそれぞれの楽しみ方があると思いますが写真を撮ることを通していろんなファンの方が繋がれるような気がしています。
結構最近では、ご家族や小さいお子さんの参加者もいて、お子さんがカメラに興味持つっていうのは、未来に繋がるじゃないですけど、取り組みとしてすごくいいなと思って。 もちろんカメラマンになりたいというのもあるんですが、カメラを通してみんなと写真を繋ぐようなお仕事をしていきたいなっていう想いのほうが大きいですね。
――「フォトサポ」アンバサダーに就任した影響は大きいですね
大きいです。スーパーフォーミュラと「フォトサポ」の取り組みは、昨シーズンの最終戦から始まっていたんですけど、もっと知名度を上げる取り組みとして、アンバサダーを起用しようというお話が出たみたいです。そのタイミングで私がマシン撮りを始めてSNSに写真を上げだした時期と重なって、声をかけていただきました。マシン撮りの技術はまだまだだし、現役のSUPER GTレースアンバサダーというのが起用の大きな理由だと思います。“写真が楽しい”と思いはじめて、写真に関するお仕事をせっかくいただいた機会この流れを活かしたいです。
それに、「フォトサポ」がきっかけで、ステージトークショーでJRPA(日本レース写真協会)の小林稔カメラマンや大西靖カメラマンからご指導やアドバイスをいただいたり、すごく贅沢な環境で写真に関わるお仕事をさせていただいていて。回を重ねるごとに、仕事としてやりたいなっていう気持ちがどんどん強くなっていったので、もう転身するっていうことに関しては結構前向きというか、もちろんレースアンバサダーとしての活動は最後までしっかりやらせていただきますが、今年の内からカメラマンになるっていう次のステップに向けて、練習というか経験を積んで準備をしていきたいなって。もう覚悟はできています。カメラマンとしてお仕事をいただけるかは別として、覚悟だけはあります!
――シーズン中盤での卒業宣言。なぜこのタイミングだったのでしょう?
今年、「フォトサポ」アンバサダーのお仕事をいただいて、もちろんレースアンバサダーのお仕事も楽しいんですけど、やっぱり本格的にカメラの道に進みたいって思ったときに、レースアンバサダーとしてしっかり活動をしている中で、目標をオープンにしたほうが、いろんなことを教えてもらえる機会だったり、直接学べる現場だったりと。チャンスは多いんじゃないかって思いました。そもそもレースアンバサダーも今年卒業するって前から決めていたわけじゃなくて、今年に入って写真やカメラのお仕事をいただけて、これからは写真の世界でいこうって決めた感じです。
生成AIでは作れない、現場の雰囲気が伝わる写真
――これからもモータースポーツをメインに撮影されるのですか?
もちろんカメラマンとしていろんなものを撮れるようになりたいんですけど、6年間 レースアンバサダーとしてやってきたからこそ、モータースポーツの魅力を私が撮る写真で伝えていきたいです。マシン撮りも今と比べ物にならないくらい上手くなって、カッコいい写真を撮れなきゃいけないんですけど、モータースポーツがカッコいいのはマシンだけじゃないですし、今の時代、生成AIとかでカッコいい画像やリアルな画像が作れちゃいますよね。でも、例えば予選でポールポジションを獲ったとき、優勝したとき、あと一歩で優勝に届かなかった時とかのチームやピットの雰囲気や感動っていうのは、絶対生成AIでは表せないと思ってて。その場で同じ感動を味わった人はもちろん、サーキットに来られなかった人にも、自分の推しチームが優勝したっていうときの感動を分け合えたり、このときのレースはこうだったよねっていう思い出として残るような写真を撮りたいなって思っています。
――スーパーフォーミュラでは、オフィシャルやメディアでないと撮影できないような状況の撮影も体験されていますね。
これまでもレースアンバサダーとして間近でレースを見ることはできていたんですけど、レースアンバサダーとしてスポンサーさんの宣伝やチームを応援するのが仕事なので、GTのレースのときはなかなか写真を撮ることはできなくて。それが写真を撮ることが仕事で、それだからこそ撮れる写真っていうのは、撮れたときはもう早く伝えなきゃとか、早く見せたいって思います。それこそ、 7月のスーパーフォーミュラ第4戦で、8号車の福住選手が予選でポールポジション獲ったときのピットロードの写真なんて、もうホントたまたま撮れたんですけど、なんかその光景ってファンからしたらめちゃくちゃ見たい写真ですよね。福住選手悲願のポールポジション獲得っていう感動をいち早く現像してみんなに見せたいって思いました。一般の人では入れない場所に入らせてもらってるからこそ撮れる写真っていうのは、伝える義務じゃないですけど、絶対見せなきゃっていう気持ちになります。
楽しいはずっとこれからも変わらない
――撮ることのほかに、写真が楽しいって思えるのは?
レースアンバサダーの写真で言えば、私も歴もそこそこあるんで、私がカメラを向けると、友達だったり仲の良いコとかはすぐ気づいてくれるんです。しかもチームで複数人いるとファンの方々がたくさんいらっしゃって、なかなか目線が揃わなかったりするんですけど、みんな気づいて私を見てくれて目線の揃った写真も撮れたりするんです。それで、私、結構すぐ納品するんですよ(笑)。女の子たちに。いつも撮り終わりに「すぐ納品します」って言って帰るんですけど、写真を送ったら写真を結構みんなSNSで使ってくれるんです。なかなか目線をもらえないタイミングで、せっかく目線もらえたんだから、できるだけ早く納品(渡す)しなきゃって思います。同業だからこそ、こう撮ってもらいたいだろうなという目線で撮った写真、こんな雰囲気でしあげるといいだろうなと思って現像した写真っていうのを使ってもらえたときに、凄く嬉しいというか、やりがいじゃないですけど、撮って良かったなって思います。やっぱり、同じ仕事をしているからこそ撮れる表情だったり、写真選びってすごくあるなって実感します。
――これからは、よりオフィシャルやメディアで写真を使用される機会が増えますね
そうなったら嬉しいです。「スーパーフォーミュラ2024夏祭り」のアフターグリッドパーティーもオフィシャルで撮らせていただいたんですが、スーパーフォーミュラ公式が私の写真を載せるわけじゃないですか。そのために撮ったとはいえ、掲載されたときはめっちゃ嬉しいですし、暑い中一生懸命撮影して良かったなと思います。写真を仕事にするとすれば常に使ってもらえる写真を撮ることが当たり前にならなきゃいけない。でも多分、楽しさはあまり変わらないと思っていて。それは自分が今、写真・カメラにハマって、仕事にしたいと思ったから絶対レベルアップしなきゃいけない。でもその分まだ見ていないカメラの世界もたくさんあるんだろうなってわくわくしています。
3つの軸
――上達のために心がけていること意識していることはありますか?
撮影の技術という面では、“インプット”を意識しています。いろんな人が撮ったいろんな写真をとにかく見て、“なぜこの写真がいいって思うのか”っていうのを、自分なりに分析しています 。ココがこう撮れているから、この写真をきれいだと思うんだというポイントを見つけることですね。そして自分が撮るときに、構図を真似してやってみようみたいなのをずっと繰り返しています。なので、とにかくいろんな写真を見るようにしています。
あと、私のように写真やカメラに興味を持つ人が増えてほしいので、YouTube動画チャンネルも開設しようとしています。もう撮影は始めてるんですけど、私が思っている“写真って楽しい! カメラって楽しい”っていう気持ちをどうにか皆さんに伝えたい!だってカメラって高い買い物だしハードルが高いことだから、みんながどうしたらカメラで写真を撮って楽しんでもらえるか、やっぱりそれは自分がハマった身として、しっかり伝えていきたい。なので、伝えるための語彙力を鍛えています(笑)。今1個やろうと思ってる動画コンテンツは、「推しに選ばれる写真の撮り方、選び方」です!きっと需要はあると思います。
――今後挑戦したいことを教えてください
2月に取材していただいたときもお話ししたんですけど、“家族写真”を撮りたいです。 地元の友達は結婚して子供がいるコも多いんですけど、子育てをしているとなかなか日常の家族写真を撮る機会ってないそうで。旦那さんに撮ってもらったら旦那さんは写らないし、スマホで自撮りもできるけど……。そういう、家族の今しか撮れない写真を撮って残して、その家族の思い出になったらいいなって思います。あと、シンプルに子供が好きなので、癒しを求めて撮りたい(笑)。今そういう家族写真を撮ってくれるサービスありますよね。そういう仕事もしてみたいです。
これからも絶対撮り続けたいモータースポーツ写真、挑戦してみたい家族写真、それからYouTubeで写真を楽しめる人を増やす “3軸”みたいな感じですかね。1個もできてないのにもう軸3つ作っちゃったんですけど(笑)。
――ファンのみなさんにメッセージをお願いします
引退まで残り4戦となりました。サーキットでもたくさんの方が会いに来てくださったり、声をかけてくださってとても嬉しいです。本格的にカメラを始めたことでファンの皆さんとカメラトークができるようになり、いつもたくさんの刺激をもらっています。レースアンバサダーとしての活動は今シーズンまでとなりますが、引退をしてもファン兼カメラ仲間として仲良くしてくださるとうれしいです。
レースアンバサダーに関して、わたしはGT300クラスに参戦する2号車muta Racing INGINGを応援しています。現在のシリーズランキングは堂々の一位! 今年こそシリーズチャンピオンを目指して戦っていますので引き続き応援をよろしくお願いします!!
後藤佑紀さん プロフィール
2月19日生まれ。愛知県出身。レースアンバサダー(SUPER GT muta racing fairies)、モデル。フォトサポアンバサダー(スーパーフォーミュラ担当)。
→X