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ライカ共同開発の「Xiaomi 14 Ultra」で話題、シャオミ・ジャパンの“中の人”にインタビュー。注目された理由は? “カメラ好き”担当者のプライベート愛機は?


近年、カメラのブランド名を冠したスマートフォンが話題です。中でも2024年の話題をさらったのがシャオミのハイエンド端末「Xiaomi 14 Ultra」。ライカと共同開発したカメラ機能は、画質や機能的にもスマートフォンの固定観念を超えるものとして、モバイル系メディアやジャーナリストの選ぶアワードでも2024年を象徴する1台に選ばれていました。

「Xiaomi 14 Ultra」は、本誌CAPA CAMERA WEBにとっても「Xiaomi U30 Photo Contest 2024」を共催した縁深い存在。そこで今回はシャオミ・ジャパンの“中の人”に取材を敢行。プロダクト本部長の安達晃彦さんと、マーケティング部に所属する“カメラ好き”の楊 立沛(ヤン・リペイ)さんに、Ultraを製品化したシャオミという会社の雰囲気や、担当者の個人的なカメラライフなどについて聞きました。

「商品を理解してくれる人達のおかげで広まった」(プロダクトプランニング本部長・安達晃彦さん)

小米技術日本株式会社 プロダクトプランニング本部 本部長の安達晃彦さん

ーー業務のご担当を教えてください
この会社にジョインして3年ちょっとが経ちました。商品全般の統括を担当しており、具体的にはスマートフォンを中心としたグローバルモデルを日本に導入する際のプランニングで、マーケティングチームと連動してプロモーションの方針決定も行います。

またビジネス目線では、シャオミ端末をキャリアモデルとして採用してもらえるように通信事業者へ提案する仕事もあります。オウンドメディアやSNSを通じたユーザーとの繋がりも大事にしていますので、そこでシャオミブランドのスポークスマンとして前に出ることも多いです。

——「Xiaomi 14 Ultra」を日本で発売した背景について聞かせてください
シャオミは創業十数年の若い会社です。これまで日本市場で展開していた商品は、比較的手頃な価格帯のものに寄っていました。コストパフォーマンスで差別化しやすく、ひいてはキャリアの期待に応えやすいという理由からです。そのため“シャオミ=ミドルクラス以下が得意なブランド”というイメージがありました。

ですが、スマートフォンに詳しい方々には「シャオミは安い機種だけじゃないよね」と知っていただけていましたので、私達としても日本に上位機種を導入すべく、虎視眈々とタイミングを狙っていました。それが2024年発売の「Xiaomi 14 Ultra」で実現できました。

Ultraシリーズは「Xiaomi 12S Ultra」(2022年。日本未発売)からドイツのライカカメラ社と共同開発しており、最初は中国市場だけで展開し、次にグローバルへ広がりました。しかし日本にはライカブランドを冠したスマートフォンが既にありましたから、ライカブランドの“お作法”として導入できなかったのです。

私達からもシャオミの本社に対して「日本でもUltraを出したい!」と継続的にアピールしていましたが、結果的にライカカメラ社との協議もでき、日本でも「Xiaomi 14 Ultra」のタイミングから導入でできることになりました。「Xiaomi 14 Ultra」はグローバル発表から遅れること約2カ月、2024年の5月に発売され、CAPAとのコラボで開催した写真イベント「Xiaomi U30 Photo Contest 2024」も導入施策の一つでした。
Xiaomi U30 Photo Contest 2024
→「Xiaomi U30 Photo Contest 2024」イベントレポートはこちら
 
通常スマートフォンの世間の“バズ”のピークは数か月で落ち着きます。しかし「Xiaomi 14 Ultra」については、その後に発売した「Xiaomi 14T Pro」も「Xiaomi 14 Ultra」のおかげで好調に立ち上がり、「Xiaomi 14T Pro」の登場によって「Xiaomi 14 Ultra」が再評価されるという珍しい流れもありました。各メディアやジャーナリストの皆さんに「Xiaomi 14 Ultra」がフィーチャーされたのは、こうして長期間にわたって高い注目度を維持できたおかげだったと分析しています。

Xiaomi 14T Pro

最近ではInstagramなどで、有名人の方々が「Xiaomi 14 Ultra」の写真をアップしているのも目にします。もちろんこちらから何もアプローチしていないので、自ら買っていただいた端末です。“写真好きが選ぶスマホ”として見てもらえているようで嬉しいです。

——“攻めた価格”と言われるシャオミですが、どのように実現していますか?
それは、僕にも謎な部分はありますが(笑)……というのは冗談で、シャオミの企業理念に「innovation for everyone」(あらゆる人々にイノベーションを)という言葉があり、高付加価値路線よりも「いいものだからこそマージンを削って多くの人に提供したい」という思想があります。これを、スマートフォンに限らずどのカテゴリーの商品でもこだわりを持って取り組んでいます。商品を展開する上では流通マージンの存在も大きいので、こうした理念に賛同してくれる販路と協議を重ねて工夫しています。

また、広告宣伝も大量投下ではなく、ユーザーに近いSNSや、商品の良さを理解して伝えてくれるメディアとの取り組みにピンポイントで行っています。何よりユーザーの皆さんの力で拡散していただいている部分も大きいです。

——日頃のカメラや写真との接し方を聞かせてください
子育て世代なので、家族の写真を撮ったり、SNSで発信するためにシャオミのスマートフォンを使っています。決してカメラに詳しいわけではなく、ミラーレスカメラを買って使ってみたこともありますが、日常的に持ち歩くことはありませんでした。私にとっては「Xiaomi 14 Ultra」があることで、どこかに出掛けた時に残せる写真の質にも量にも良い影響がありました。

「Xiaomi 14 Ultra」や14Tシリーズに関してお世話になっている写真家さんの話を聞いて、カメラとスマートフォンはうまく棲み分けられそうだなと思っています。スマートフォンがカメラの代替にはならなくても、「Xiaomi 14 Ultra」のように4つのレンズを行き来しながら撮影できれば、結果的に“撮れ高”が増えます。通信機能の入ったスマートフォンで撮影すれば他者への共有も簡単です。
実はカメラとスマートフォンは競合しておらず、“記録以上・作品未満”のクオリティでその間を埋められるのがUltraだと感じました。

【安達さんが「Xiaomi 14 Ultra」で撮影したお気に入りショット】

——ライカと共同開発して、シャオミのカメラ機能は変わりましたか?
「マスターレンズ」モードに搭載されてるレンズの描写は、分かる人には分かるマニアックさがあり、カメラに詳しい方々がほくそ笑んでいると聞きます。詳しい人ほど深さに気付いてもらえるという点では、“ライカ共同開発”というキャッチーな見え方と、実際に手にしたときのディープなマニアックさのギャップが、いい意味でインパクトになったかなと思います。

——安達さんにとって、シャオミというブランドの面白さとは?
シャオミに来て感じたのは、ある意味で“古き良きものづくり”があるということです。いいものをスピード感をもって幅広く展開して、そうしたプロダクトを好んでくださるユーザーに「これでもか!」というぐらい提案しつづけていく。

そんなスピード感ですから、ときにユーザーの皆さんには粗削りに見えたり、作法も整っていないように見えるかもしれません。それでも、ダイナミックレンジの広さみたいなものがあってワクワクします。ユーザーとの近さという意味では、SNSアカウントの運用も個人の裁量に委ねられていますし、オンラインでコミュニティの様子を見ているだけでも面白いブランドになれているのかもしれないなと思っています。
 

「カメラとスマホの境目が曖昧になってきた」 (マーケティング本部・楊 立沛さん)

小米技術日本株式会社 マーケティング本部 シニアIMCマネージャーの楊 立沛さん

——業務のご担当について教えてください
2024年4月に入社して、最初はメディア向けの広報業務をメインにしていました。プレスリリースや製品発表の効果を期間内に最大化していくという仕事です。10月に登場した14Tシリーズについてはプロジェクトマネージメントを担当し、これに関するコミュニケーションの企画なども手がけています。

——日頃のカメラや写真との接し方を聞かせてください
ライカM4(シルバー)に、フォクトレンダーの35mmレンズを組み合わせています。買った当時はライカレンズにまでお金が回りませんでした。あとハッセルブラッド500C/Mにプラナー80mmのセットがお気に入りです。フィルムは35mmも中判もコダックの「PORTRA 400」が好きで、現像時にデータ化もしてもらって観賞用にしています。デジタルで使っているのは「Xiaomi 14 Ultra」だけで、私にとって十分に満足できる画質があります。

リペイさん愛用の「Leica M4」

これまでカメラメーカーや複数のスマートフォンメーカーで働いてきて、いろんなカメラを買って使ってきましたが、自分の中でカメラとスマートフォンの棲み分けをどうするのか、1〜2年ぐらい悩んでいた時期がありました。そして「撮れる時間の長さ」を基準にすることで落ち着きました。1日たっぷり撮れるならフィルムカメラ、1〜2時間の散歩ならスマートフォン、という自分の中の基準です。

友達の中にもカメラ好きがいて、月に1回ぐらいのペースで集まって撮影に出かけたりしています。その時に持ち出すのはフィルムカメラです。1人で出かける時は14 Ultraですね。

実は「Xiaomi 14 Ultra」には個人的な要望もあって、ストラップを取り付ける場所が2か所になって、2点吊りができればいいなと考えています。また、横位置で持つと右手の親指が画面に触れてしまうので、サムレストのように安定させる場所が欲しいなと思っています。

——写真好きとして、スマートフォンとカメラの関係性をどのように見ていますか?
スマートフォンのカメラとカメラ専用機は、意外とその境目が曖昧になってきたと感じています。プロの方は仕事の現場ではカメラを使ってノウハウを活かしますが、そうではない個人的な作品などではスマートフォンのカメラのクオリティも決して「NO」ではないように感じています。

そういった背景もありますから、カメラに詳しい方々にもシャオミの端末を使ってみてほしいと思っています。本社での開発時には複数名のカメラマンも交えて、写真の色味などを深く調査しています。

——シャオミとライカのコラボについて、印象的なことはありますか?
コラボするという話を耳にしたのは2022年の夏でした。その前から噂はありましたが、それを聞いた瞬間に「どうせ、ライカっぽいフィルター効果を搭載するぐらいのレベルでしょ」と、軽く見ていました。まだ私はシャオミにいませんでした。

しかし、実際に登場した「Xiaomi 12S Ultra」は衝撃的で、「シャオミの中にはライカ好き、カメラ好きがいる!」と確信しました。これが最も印象的な瞬間でした。

ライカとコラボレーションするという点では、先にファーウェイが取り組んでいました。ファーウェイは大きな会社なのでライカと組むことにも意外性はありませんでしたが、シャオミがライカと組むということは、私にはリスキーにさえ見えました。なぜなら、ファーウェイの二番煎じに見えるかもしれないし、画作りのクオリティなどでライカユーザーに納得してもらえなかったら、シャオミのブランド的にマイナスとなることもありえます。

でも、Ultraで撮った写真を見た瞬間に、自分の懸念は不要だったとわかりました。一言でいえば、ライカっぽいですが、この機種で撮影した写真では、以前のスマートフォン写真と違って、とにかく明るく鮮やか、というものではなく、光と影が織り交ざって、それぞれのディテールが繊細に映ってるように見えます。これで撮影する楽しさが一気に増えました。

【リペイさんが「Xiaomi 14 Ultra」で撮影されたお気に入りショット】

——シャオミというブランドの面白さについて聞かせてください
中国でシャオミというと、創業者の雷・軍(Lei Jun)が有名です。“中国のスティーブ・ジョブズ”と呼ばれる存在で、とにかく魅力的な考え方を持っています。ライブ配信をやってみたり、フレンドリーでユーザーに近く、その経営スタイルにも皆が憧れます。彼に憧れる大学生がシャオミに就職するぐらいの魅力です。私もそんなシャオミのコミュニケーション手法を見て、面白い会社だなと思っていました。そこにUltraが登場したので、こういう会社に入りたいなと思ったのです。

本社の人達が若いのも印象的です。20代後半〜30代前半の社員がたくさんオフィスにいて、大学のキャンパスみたいな雰囲気で、活発な議論が飛び交うことも多いです。日本からチャット越しでやり取りしていても、人間味が感じられます。仕事は大変だと思いますが、目指しているところが一緒だからこそ、力を出し合えているんだろうなと思います。

——シャオミ端末のライカっぽさで、注目してほしいポイントはありますか?
「Xiaomi 14 Ultra」も14Tシリーズも、機能は多すぎるぐらい揃っています。これを全部使うというより、自分が使う機能を絞ってワークフローをシンプルにすることで、作品撮りに集中できると思います。ライカっぽい機能で言えば「ファストショット」モードですね。M型ライカのブライトフレームのような枠が表示されて、撮影距離もマニュアルで設定できます。カメラを理解している人であれば、まさにM型ライカのような感覚でスナップ撮影できますのでおすすめです。

「ファストショット」モードの撮影画面