『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2025年3月号で惜しくも選外となった作品の中から、審査員の須藤絢乃先生が目を留めた “気になる作品” をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉須藤絢乃
夕焼けの跡
山下碧仁 (愛媛県新居浜市 / 16歳 / 愛媛県立新居浜工業高等学校 / 写真部)

とにかく美しい。うかつにも百貨店に売っている高価なアイシャドーの表面を思い出してしまいました。コンクリートの都市の日常ではこんな美しい自然の光を見ることができないことに、なんだか悔しい気持ちになりました。悔しいと思わせる作品って、本当にいい作品なんです。この場所に行って、この一瞬に出会って、写真を撮って、見せてくれてありがとう、という気持ちです。
糸 (4枚組)
鈴木月渚 (和歌山県田辺市 / 18歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)

このシリーズを横並びにしてみると、写真そのものが川のように見えて、魚が泳ぐ様が浮かんでくるようでした。光の煌めきも、少しノスタルジックな描写をしていて、純文学的な世界観のある写真作品となりました。魚はかなり浅瀬にいるようで、それらにかかるそれぞれの影もこの美しい画面構成の重要な要素になっています。
迷い込んだ先で (3枚組)
横川桜子 (愛知県豊川市 / 17歳 / 豊川高等学校 / 写真部)

まるで血液のような塗料が小さな子の顔や、青年の真っ白な祭装束に飛び散り、川は真っ赤に染まり、ただならぬ雰囲気を醸し出しています。この3点にはお祭りの楽しさと独特の緊張感がとてもいいバランスで構成されていて、高く評価したいと思ったのですが、お寺の1枚で若干説明的になってしまったのが残念でした。どこまで見る側にヒントを与えるのか、写真表現の永遠の課題ですね。