写真家のコムロミホさんが、OM SYSTEM GALLERYにて写真展「Retro Perspectives」を開催中。この写真展は3月1日に発売されたばかりの最新の「OM-3」をはじめ、「E-P7」や「PEN-F」などでコムロさんが10年に渡って歴史あるパリの街並みと、今を生きる人々の姿を切り取った作品の集大成ともいえる展示。
3月9日と16日にはトークイベントも開催され、多くのファンが作品のバックグラウンドストーリーや、コムロさんならではの撮影術に耳を傾けた。今回、3月9日に行われたトークイベント「OM-3の使いこなしとベストマッチレンズ」にお邪魔したので、その模様を紹介する。
被写体をどう表現したいのかに応えてくれる「OM-3」
トークイベントの参加者の中にはすでに「OM-3」を購入済みのユーザーも多く参加しており、実際にコムロさんが昨年11月にパリを訪れて「OM-3」で撮影した展示作品を紹介しつつ、「OM-3」の魅力について解説した。
ファーストインプレッションは、デザインの美しさ、表現力性能であり、意図した絵づくりが気軽に楽しめる「クリエイティブダイヤル」の存在だという。
「やっぱりカメラっておしゃれだと、持ち歩きたくなりますし、シャッターチャンスも増えると思うんです。この「OM-3」をお預りしたときに、いちばん最初に私が何をしたかというと、防湿庫に行って私の尊敬する写真家さんから譲り受けたフィルムカメラ「OM-2」を引っ張り出してきたんですね。
(2台並べた写真を投影しながら)見比べてみると、その時代の美しいデザインをそのまましっかりと引き継いでくれているんです。カメラを首から堤げているときって、いちばんどの角度からカメラを見るかっていうと、上からですよね。
天面を見るとダイヤルやスイッチ類がとてもうまく配置されていて、上からカメラを見たときにモチベーションが上がるというのがこの「OM-3」の美しさだなと思います。それでいてとてもコンパクトなボディなのに、ダイヤルを省くことなく操作性がしっかりしている点もうれしいポイントです」
と、デザイン面はかなり気に入った様子。そして「クリエイティブダイヤル」については、作品を見せながら設定による効果の違いについても丁寧に説明。
「私の作品づくりで欠かせないのが「アートフィルター」なんです。様々なフィルターが搭載されていて、被写体に合わせて選ぶことによって、様々な印象の写真を撮って出しで楽しむことが出来るんです。今回10年ぶんの作品を展示していますが、そのときどきにブームがあって、いろんな設定で撮影していて、それをRAW現像でセピアに統一してプリントしました。なのでアートフィルターには思い入れがあって、語ろうと思うと長くなってしまうのですが(笑)、大事なことは自分がその被写体をどう表現したいのかを考えながら設定することだと思います。「ヴィンテージ」「ブリーチバイパス」「ラフモノクロームII」が好きで良く使うのですが、さらにカメラ内でトーンカーブを調整することも出来るんです。そうやって決めた設定でファインダーを覗けばその効果が反映されているので、そこからは、被写体となる人物の表情だったり、位置だったり、全体の構図に集中して撮影できるのがメリットだと思います」
「OM-3」に合わせるおすすめのレンズ
パリでの撮影では、「M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO」1本で行ったというコムロさん。オススメであるこの20mm(35㎜判換算40mm相当)単焦点レンズの魅力と、使いこなし方を教えてくれた。
「20mmレンズってすごくおもしろくて、被写体まで距離があると、広角的に表現することもできるし、ぐっと近づくと被写体をしっかりと強調することもできる。さらに標準の50mm(35㎜判換算)のような表現も楽しむことができるので、何か1本レンズ持って行こうと思ったら、やっぱりこの20mmだと思っています。
そしてF値はほとんど開放で撮影します。絞らないです。というのも、F1.4のレンズってF1.8のレンズよりも重くて大きいし、高いんですよね。そんなレンズを絞っちゃうともったいないじゃないですか(笑)。なので、開放で撮ることが多いです。
で、開放で撮影するということは、必然的に被写界深度が浅くなりますよね。そこで私がスナップ撮影において気を付けているのは、ピントの位置になります」
コムロさんはトークイベント中、ときおり参加者に問いを投げかけながらトークを進めていく。ここでも2点の写真を見せ、どちらの印象が好きか挙手をしてもらっていた。
「半々くらいに好みが分かれましたね。これは何を言いたいかというと、今回展示用に過去の写真も現像して色々と仕上げましたが、ピントの位置というのはRAW現像ではどうにもならないんです。なので、そのときにしっかりと撮っておかなきゃいけないんですね。
F値を開放で撮影するということは、ピントがきているところに視線誘導させることができるので、何を伝えたいのかっていうのが、構図と同様に変わってくるんです。
あともう一つ私が心がけているのが、“横写真を撮ったら縦写真も撮る”こと。これはなぜやるかというと、展示するときに全体のバランスを考える上で、“すごく好きな写真だけど縦写真があればな”と思うことがあるからなんです。
選べるってすごく贅沢なんですよね。なので、ピントも構図も、写真の縦横もその場でしかできないことをしっかりやるようにしています」
また「単焦点レンズ」を選んだ理由について、前述のF値を開放で撮影することによって被写界深度が浅くなる点に加えて、ズーミングができない点を挙げていた。
「ズーミングできないので、構図を変えるには自分が動く必要がある。私はズームレンズを使ってスナップ撮影をしているとすごく迷っちゃうんです。被写体を見つけてから、広角側がいいのか望遠側がいいのかリングを回しながら迷う。
でも単焦点レンズはフレームが明確なので、もっと広い絵が撮りたかったら自分が下がる。被写体を大きく撮りたければ寄っていくんですけど、ズームレンズってズーミングしただけで被写体大きく写せちゃうので、それで満足しちゃうんですよね。
単焦点レンズって自分の足で近づかなきゃいけないので、近づく間に上から撮ろうかなとか下から撮ろうかなとか、違ったアイデアが生まれるんですね。望遠で大きくしただけの写真と、ちゃんと歩み寄った写真では大きな違いがあるのがおもしろいところだと思います」
テクニックだけでなく写真との向き合い方についても、実際の体験を重ねてトークしてくれたコムロさん。まだまだ目からウロコのトークが続き、40分弱の時間があっという間で、すばらしく濃密な内容のトークイベントとなった。
イベント終了後、あらためて新製品「OM-3」についての感想を伺いました。
「撮影してみて感じたのは“小さくて、デザインが良くて、表現力が高い”ことです。まず小さくて軽いこと。撮影に出かけるとカメラを持って1日に20km~30km歩くことになるので、とても大切なんですね。
次にデザイン。カッコいいカメラって、被写体に威圧感を与えないんですよね。街中でスナップ撮影をしていて“撮らせてください”って声をかけることが多いんですけど、そういったときに、なんかいい写真撮ってくれるんじゃないかって思ってもらえると思うんです。「OM-3」はまさにそんなカメラですよね。
3つ目の表現力っていうのは、「クリエイティブダイヤル」が搭載されたことによって、いろんな設定楽しめますし、撮っているときにカメラ本体で設定できて、ファインダーや液晶画面で確認できるっていうのが、やっぱり嬉しいんですよね。カラーで撮るときとモノクロで撮るときだと、撮りたい構図は変わってきます。なので、カメラの中で設定ができることによって、もっと突っ込んで構図を決らめれるのが嬉しいです。
あとは今回10年ぶんのOM SYSTEM(旧オリンパス)のカメラで撮影した写真を展示したのですが、10年前だと、暗いシーンの場合、ISO感度を1600ぐらいに抑えておこうっていうのをすごく意識してた記憶があります。どうしてもノイズが乗りやすかったので、ISO感度を上げない分シャッタースピードが遅くなっても、手ぶれ補正でなんとかなるかと思いながら撮影していました。でも今回この「OM-3」を使ってみて、常用ISO感度もかなり上がったので、高感度耐性が上がったことをしっかりと感じました」
コムロミホ 写真展 「Retro Perspectives」
会期 2025年3月6日(木)~ 3月17日(月)
会場 OM SYSTEM GALLERY(旧 オリンパスギャラリー東京)
住所 東京都新宿区西新宿 1-24-1 エステック情報ビル B1F
時間 10:00 〜 18:00 最終日 15:00 まで
料金 入場無料
ギャラリートーク(作品解説) 3月15日(土) 14:00-15:00
PLAZAトーク 3月16日(日) 15:30ー16:10 観覧無料・予約不要
テーマ「OM-3を使いこなしてストリートスナップを撮影しよう!」
コムロミホ
文化服装学院でファッションを学び、ファッションの道へ。撮影現場でカメラに触れるうちにフォトグラファーを志すことを決意。アシスタントを経て、現在は広告や雑誌で活躍。街スナップをライフワークに旅を続けている。カメラに関する執筆や講師も行う。またYouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」「カメラのコムロ」でカメラや写真の情報を配信中。