『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2025年4月号で惜しくも選外となった作品の中から、審査員の須藤絢乃先生が目を留めた “気になる作品” をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です！
〈講評〉須藤絢乃
スピード
田中映三 (千葉県流山市 / 17歳 / 千葉県立柏の葉高等学校 / 写真部)
楽しく遊具で遊ぶはずが…予想を超えるスピードに慄く女の子の顔がたまらなく可愛らしいです。遊具の形と女の子のポーズが同じ形をしているのも面白い画面構成の重要な要素となっています。シャッタースピードをうまく活かした背景のムーブメント、絵の具でさっと画面を撫でたような赤や緑のアクセントも美しいです。
八百屋さんタクロース
松平 菫 (大阪府松原市 / 18歳 / 大阪府立生野高等学校)
サンタ帽の陽気な存在感が、彼の哀愁漂う表情をより際立たせ、見る側の心をざわつかせます。よく見ると画面右側に亀の甲羅の骨が掛けてあり、異様な空間構成に一役買っていると思います。瞬時に魅力的な空間を察知できる感性、手前にカメラを構えている人がいないかのような自然な空気感で撮影できているのも高く評価したいです。
水中都市
田中美羽 (千葉県松戸市 / 17歳 / 千葉県立柏の葉高等学校 / 写真部)
本当に美しいものを見た時、言葉が出てこない時がありますが、これはまさにそういう作品です。晴れた空を藍色に近い色まで落とし込み、海と宇宙が一体となったような表現に。水しぶき、水滴、ボケと、噴水の水だけでも多くの表現が織り込まれている。見慣れた風景が別世界に見える視点の発見と、日々の撮影で身に付けたカメラの工学的な特性が邂逅した時、魔法のような世界が現れるんですね。
選手にエールを！
宮脇大河 (香川県高松市 / 17歳 / 香川県立高松工芸高等学校 / 写真部)
チアガールというイメージからほんの数ミリずれたような彼女たちの真剣で神妙な表情が、逆に気になってしまい、この作品を手に取りました。斜めに切り込んだ水平線も、この一瞬の緊張感が数秒後には解けていってしまうようなスリルをはらんでいます。あ、いいな！と思った瞬間がこの画面に残っていて、好きです。鈍色の海とカラフルなチアガールの衣装の対比も美しい。