『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2025年5月号で惜しくも選外となった作品の中から、審査員の須藤絢乃先生が目を留めた “気になる作品” をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉須藤絢乃
キラキラ動物園
橋本慧宙 (愛知県豊田市 / 11歳 / 豊田市立青木小学校)

電飾のキリンやコアラの不思議な歪みを見て、めまいがするようなトリッキーな印象があり、これはただものではないぞ、と気になって手に取った作品です。光の粒も撮影方法を工夫して大小リズミカルに配置されていて、さりげなく混じった駐車場の「P」のマークさえもオシャレに見えてきます。冬にしか体感できない浮遊するようなワクワク感がこの1枚に収められていますね。作者の年齢を見てびっくり、恐るべき才能を感じました。
アイマイ
森賀慧彦 (愛媛県新居浜市 / 16歳 / 愛媛県立新居浜工業高等学校 / 写真部)

撮影のプロップ (小道具)、一つ一つがとても丁寧にこだわって作られており、数ある演出写真の中でも作品の密度と完成度が抜群に高かったです。不気味な感じの目の配置も絶妙で、人物の部分をよけて配置しているのもポイントが高いです。中央の人物の、周りから白く浮かび上がった目を見て、目が合うと石になってしまう「メデューサの神話」を思い出し、釘付けになってしまいました。
見えない、壁、
橋本 桂 (新潟県長岡市 / 16歳 / 中越高等学校)

写し鏡のようにも見えるそっくりな女子高生2人の後ろ姿、彼らを分断する窓枠、雪とタイヤが織りなす美しいライン……。アンリ・カルティエ=ブレッソンの『サン・ラザール駅裏』という写真作品を彷彿とさせる決定的瞬間に満ちた作品ですね。こうした作品は元から狙っても撮れるものではないのですが、日々の行いが功をなす。良い一瞬との出会いを逃さないのもまた才能であり、実力です。
闇にのまれる
脇坂 花 (島根県出雲市 / 16歳 / 島根県立平田高等学校 / 写真部)

作品下部にポツリと写った人物のサイズを見て、この風景のスケールがいかに大きいかを理解しました。これほどの遠景を静かでまとまりのある構成に仕上げていることに強く感心しました。空に滲んだ太陽の光があまりにも大きく、美しさの向こうにある恐ろしさも感じたほどです。