『CAPA』本誌連動企画として公開している、CAPAフォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2025年8月号で惜しくも選外となった作品の中から、審査員の須藤絢乃先生が目を留めた “気になる作品” をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉須藤絢乃
狭間
青山拓 (福井県越前町 / 17歳 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)

ルネ・マグリットはこの世に存在しないシュールなものとして昼と夜が一つの画面に存在する、「昼の帝国」という作品を描きましたが、この作品は、現実の光景を写真に収めた、ある意味発明的な作品と言えるでしょう。静かな田園風景にカーブミラーが大胆に配置され、夕暮れの中に太陽を封じ込めた奇妙な生き物のような存在感を放っています。
初めての朝
脇坂 花 (島根県出雲市 / 16歳 / 島根県立平田高等学校 / 写真部)

地面から空までが白銀に包まれた世界に、気が遠くなりそうな寒さを想像します。中心にぽつんと佇む人物が白っぽい服を着ているので、寒さで赤くなった頬と、ピンクの手袋が画面のアクセントとなっていて、静かな風景にポップで華やかな印象を生み出していますね。目覚めてすぐ雪を見て、思わず外に飛び出した自然な装いもとても可愛らしいです。
失踪 (4枚組)
津村綾花 (大阪府松原市 / 16歳 / 大阪府立生野高等学校)

学校を舞台にしたホラー仕立ての学生作品はよく見かけるのですが、いかにも「怖いでしょ!」という質感のものが多い中、この作品はあくまでも放課後の空気感を少し温かみのある色味で日常のものとして描写していて、それがかえって見る側にじんわりとした恐怖を呼び起こします。夜の暗い校舎って、意外にワクワクしてしまったりするのですが、終業チャイム直後に急に人気のなくなる感じの不安感たるや! 長年忘れていた感覚がよみがえりました。