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【現地レポート①】高校写真部の日本一を目指す「写真甲子園2025」暑い夏の熱い写真バトルが開幕

全国高等学校写真選手権大会「写真甲子園2025」が、2025年7月29日に北海道東川町で開幕した。8月1日まで繰り広げられる熱い・暑い4日間の戦いを、現地からレポートする。まずは前半戦!

写真甲子園2025レポート

応募518校より選ばれし18校が本戦大会へ

32回目を迎える今大会は、全国から518校がエントリー。5月22日に初戦審査会が行なわれ、80校が初戦を突破。その後、全国を11に分けてのブロック審査会に挑み、本戦に出場する18校が決定した。

18校中の8校が連続出場の一方で、初出場は例年よりやや少なめの4校。どんな戦いとなるのか楽しみな顔ぶれだ。出場校は以下の通り。

出場校(18校)

北海道幕別清陵高等学校 / 宮城県仙台二華高等学校 / 宮城県白石工業高等学校 / 茨城県立笠間高等学校 / 栃木県立栃木工業高等学校 / 神奈川県立逗子葉山高等学校 / 神奈川県立座間総合高等学校 / 東京都立総合芸術高等学校 / 東京都立八丈高等学校 / 中越高等学校 / 静岡県立浜松江之島高等学校 / 豊川高等学校 / 大阪府立工芸高等学校 / 和歌山県立神島高等学校 / 大阪府立生野高等学校 / 広島県立庄原格致高等学校 / 愛媛県立新居浜工業高等学校 / 沖縄県立真和志高等学校

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「心・技・眼」がキーワード! 3人1チームで挑む撮影競技

「写真甲子園」の特徴は、学校の代表として3人1組で競う団体戦であること。学校を代表していれば必ずしも写真部や写真同好会でなくてもよく、例年サッカー部や陸上部、演劇部などから参加する選手 (生徒) もちらほらいる。

そして、4日間の大会期間中に同一機材・同一条件でテーマに基づき撮影、セレクト、発表まで行なう。もちろん結果も決まる。問われるのは写真の技術だけでなく、テーマや着眼点、行動力など多岐にわたる。それを慣れない環境や限られた条件の中で発揮するには、体力やチームワークに優れている必要もあるのだ。

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また、選手の自主性が尊重され、監督 (顧問) はカメラの操作や撮影の指示、画像の確認が禁じられている。選手3名によるセレクト会議の途中、20分間だけ監督が自由にアドバイスできるのだが、監督の指示をあえて聞かないロックな選手たち (と苦笑いする監督) も珍しくない。たった4日間で選手たちの写真と表情がポジティブに変わっていくのは、取材していて毎年驚かされる。

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選手たちの使用カメラ「キヤノンEOS RP」。フルサイズEOS史上、最小・最軽量を達成したエントリーモデル。軽快さや使いやすさがウリだが、階調の良さや高感度での低ノイズなど、画質は上位機種にひけをとらない。

そして面白いのは、使用機材がイコールコンディションなところ。各校にはキヤノンマーケティングジャパンから「EOS RP」と「RF24-105mm F4-7.1 IS STM」を3セットのほか、交換レンズ「RF24-240mm F4-6.3 IS USM」「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」「スピードライト 430EX III-RT」などが貸与される。

3人で広角・標準・望遠と画角を分担する常連校もあれば、スマートフォンでしか写真を撮ったことがないという選手が、みるみるうちにミラーレスカメラを使いこなしたりもする。

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記録メディアは貸し出された16GBのSDカード9枚のみ使用可能。撮った写真のレタッチやトリミングは禁止で、提出する作品はいわゆる「JPEG撮ってだし」。撮影時に露出はもちろん、ピクチャースタイルやホワイトバランスをいかに追い込めるかがカギになる。

本戦での撮影は5ステージだが、開会式前に記録メディアが配られた時点から常時撮影OK。三脚やレフ板、小道具は自由に持ち込めるので、夜中に宿舎をスタジオにしたり、あるいは外で星を撮ったりする高校もある。

大会1日目(7月29日)

開会式

東川町農村環境改善センターで開会式が行なわれた。代表審査委員の写真家・野村恵子さんが選手たちへエール。それとともに「昨年は私も初めての写真甲子園でいろいろ反省点がありましたが、今年も審査委員の顔ぶれは同じで、6人でいろいろ話し合いました。審査が変わるかもしれません」と大胆予告。

審査委員は野村恵子さんをはじめ、中西敏貴さん、須藤絢乃さん、鵜川真由子さん、浅田政志さん、大森克己さんの写真家6名だ。

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代表審査委員の野村恵子さん。
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選手宣誓を務めた沖縄県立真和志高等学校のエスピノーサ・アンジェラ・愛梨さん。

歓迎夕食会

開会式の後には、町民の皆さんによる恒例の歓迎夕食会。だがここは北海道らしい夕暮れの低い光を生かせるチャンス。ジンギスカンをかき込むとカメラを持って走っていく選手もいた。日中は北海道と思えぬ暑さだったが、太陽が地平線に近づくにつれて、風が涼しく感じられるようになった。

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ホームステイ

初日の夜は、18校がバラバラに分かれて、東川町内の一般家庭でホームステイ。翌朝までホストファミリーやその近所を思う存分撮ることができる。凝ったポートレートを撮るか、ほほ笑ましいスナップを狙うか、はたまたドキュメンタリーとしてまとめるか。時間に追われる撮影ステージとは異なり、人物をじっくり撮れる機会だけに、観察力や発想力、構成力も問われるところだ。

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大会2日目(7月30日)

【第1ステージ】美瑛町

気温は朝から30℃を超え、北海道らしくない焼けるような日差しが。初戦の舞台は故・前田真三氏の写真ギャラリー「拓真館」の周辺だ。どこまでも続く美瑛の丘に、選手たちも何をどう切り取ってよいかわからず苦戦気味。一方、ヒツジやヤギと触れ合える「ファームズ千代田」では居合わせた観光客や、牧場の飼育係さんたちに声を掛けて撮影する選手たちが目立った。

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【第2ステージ】上富良野町

一転して市街地へ。道路も空もとにかく広いのが、いかにも北海道らしい。ここで前半戦終了とあって、狙っているものを探して黙々と歩く選手もいれば、片っ端から商店や飲食店を訪ねていく選手もいた。

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【1回目】セレクト会議

第2ステージが終わると、1回目のセレクト会議。各校には画像処理ソフト「Digital Photo Professional 4」がインストールされたパソコンと、インクジェットプリンター「PIXUS PRO S-1」、そして2LとA4の用紙が用意され、31日の午前中に開かれる公開審査会で発表する作品を選ぶ。

先に説明した通り、途中20分間だけ監督のアドバイスをもらうことができるが、どの高校も真剣そのもの。選手がセレクトしたプリントを並べると、監督がダメ出しをする光景もあった。どの高校も3人合わせて何千枚と撮影しており、そこから提出する8枚を選んでひとつの作品に組む。至難の業だ。

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公開審査会では作品の発表・プレゼンを行なうが、審査委員を唸らせたり、笑わせたり、ときには泣かせたり、そのライブ感もまた写真甲子園の魅力である。暑い夏の熱い写真バトルを勝ち抜くのは、果たしてどの高校か。

次回レポートでは後半の撮影ステージと、町民や写真関係者も集まる2回目の公開審査会、そして気になる結果をお伝えする。

 

〈協力〉キヤノンマーケティングジャパン株式会社
〈レポート〉鹿野貴司