【優勝】中越高等学校 (新潟)
ファースト公開審査会 : テーマ「いま、ここ」
「大地と人と」
ファイナル公開審査会 : テーマ「まなざし」
「セブンティーン」
中越高校は、1回目の審査にはモノクロ8枚組「大地と人と」を発表。ドラマチックな光を豊かなトーンで表現し、講評でも高い評価を得ていた。本来は凝ったコンセプトを考えていたそうだが、撮りきれずに監督からダメ出し。「自分たちがかっこいいと思う8枚でいけ」と指示され、このときは優勝を諦めたという。
しかし同時に、メインのテーマである制服シリーズも初日から撮影していた。これは応募作品「オ.イ.ハ.ル」のテーマで、年配の方に自校の制服を着てもらい、まるで本当の高校生のように描いたユーモラスなもの。それと同じことをわずか4日間、まったくアウェイの本戦の場で挑戦したのだ。
僕は初日の夜のホームステイでたまたま中越高校を取材していたので、そのプランは知っていたのだが、実際に誰かに制服を着てもらう様子は目撃できなかった。しかも最終日のゴール直前は3人とも暗い表情だったので、撮れずに諦めたのかなと思っていた (実際には早朝から動いていて睡眠不足だったらしい)。それだけにファイナル公開審査会前に資料で「セブンティーン」というタイトルを見たときは驚いた。

そして、いざ上映されてさらにびっくりしたのは、8枚組の作品に登場する人物がすべて別人だったこと。ただ着てもらうだけでなく、演技をしてもらったり、着替える姿を入れてみたり、ただのコスプレとはひと味違う表現に。短時間でどうやって撮り切ったのか不思議だが、だからこそ混戦の中で優勝を勝ち取ったのだろう。

「セブンティーン」の撮影では主将の木村優花さんがモデルと会話する役を担当。「学生時代のことを質問して、制服を着ていたころを思い出してもらいました。服装だけでなく内面も写るように心掛けました」(木村さん)。
なかには戦争で制服が着られなかったので、こうして高校生に戻れてうれしいという人もいたという。そうして作り上げた場面を小林結芽さんと荒井七美さんが撮影。審査委員が絶賛していたタイトルの意図について、荒井さんは「18歳だと成人してしまうし、その手前、撮っている私たちと同い年になってもらえたらいいなと思いました」と話してくれた。

また出場回数では “大ベテラン” の松田浩明監督は、「写真の技術でいえばうちはトップじゃありませんが、発想と行動力には自信がありました。それを審査委員の方々が評価してくださったのがうれしいし、写真甲子園も次の時代に変わろうとしている気がします」と、優勝という結果よりも、自分たちが認められたことを喜んでいた。
熱戦の様子は、2025年9月20日発売の『CAPA』11月号 Autumnでも紹介。お楽しみに!
〈協力〉キヤノンマーケティングジャパン株式会社
〈レポート〉鹿野貴司