ドイツのカメラショー「Imaging World (イメージング・ワールド)」とほぼ同じ日程で、フランス・パリにて開催されていた「Salon de la Photo (サロン・ド・ラ・フォト)」。ドイツのニュルンベルクからパリに移動して、最終日の「Salon de la Photo」取材を決行した。会場の様子をレポートしよう。

機材の購入もできる明るく開放的な「Salon de la Photo」
ドイツの「Imaging World」よりも1日早い2025年10月9日からスタートしていた「Salon de la Photo」。2007年から開催されていて、現在ではヨーロッパ最大規模のカメラショーに数えられている。CP+実行委員会が毎年開催しているフォトコンテスト「ZOOMS JAPAN」の特別展示会場にもなっているので、日本でも名前くらいは知っているという人は少なくないだろう。


入場待ちの列に並んでいるところで、ボランティアらしいスタッフから会場の見取り図が配られた。コロナ禍で開催されなかった年もあったそうだが、運営スタッフも慣れた感じだ。

「Salon de la Photo」の会場となっている La Grande Halle de La Villette (グランド・ハレ・ド・ラ・ヴィレット) は19区にある。食肉市場をリノベーションしたイベントホールで、日本の「CP+」会場よりもひとまわり広い印象だ。「Photo」という名称から写真の展示を想像しがちだが、どちらかというと機材寄りで、セミナーやワークショップ、プリントや写真集の販売、中古カメラの掘り出し市と、内容盛りだくさんの展示会だ。会場には見慣れたカメラメーカー、レンズメーカーのロゴが大きく掲げられていた。




会場のもっとも奥まったところは量販店の販売コーナーになっていて、各社の機材が会場特価で購入できた。気になった製品をメーカーブースでチェックして買って帰れるというわけだ。

各社のブースをチェック!
各社のブースは「CP+」に比べると小さいものの、基本的にブース構成はかなり作り込まれている印象だ。ビジネスショー的なイベント色が強いドイツとは、会場の雰囲気もずいぶんと違う。ちょっとおしゃれな雰囲気が感じられるのは、パリだからなのだろうか。
通路を挟んだブース構成になっていたりもするので、どこまでが1つのブースなのかわかりにくいと感じるところもあったが、それだけに自由に行き来できる。展示されている機材の数はかなり豊富で、説明員も多い。説明員と来場者の距離が近いことも印象的だった。
OM SYSTEM
大きな写真作品で仕切られたOM SYSTEMのブースは、点在するボックスの上にカメラが展示されている。

被写体として置かれていた鉢植えの前には、ラインアップが勢揃いしていた。

ブース奥にあるカウンターでもカメラとレンズを試すことができた。

キヤノン
キヤノンのロゴが入ったフレームで囲まれていたのは、白レンズを装着したカメラがずらりと並ぶ望遠レンズの体験コーナーだ。

カウンターにずらりと並んだカメラには、ほぼ1台に1人の説明員がついていた。レンズは装着されていないのがデフォルトのようだ。

キッズコーナーも充実していて、セミナーステージを子ども目線で撮影できるタッチ&トライコーナーがあったり、ロボットアームに装着したカメラで撮影してもらえるコーナー、ゲームシーンを撮影してもらえるコーナーなども用意されていた。

シグマ
「SIGMA」のロゴが投影されている白い幕が特徴的だったシグマブース。カウンターの背後には、各種レンズがフルラインアップされていた。

ブース中央には「Sigma BF」を展示。アルミのインゴットから削り出されて製品になっていく過程を象徴したディスプレイで、注目を集めていた。

ブースの半分を占めるステージは立ち見が出るほどの盛況ぶり。客席を囲むパーテーションには、大きなΣ (シグマ) マークが描かれていた。

ソニー
ソニーブースのカウンターには、レンズを装着した状態のカメラが並べられている。

ステージはアジアンテイストで、扇子や提灯などでディスプレイされていた。

独立している望遠レンズの体験コーナー。会場全体を見渡すと女性比率が高い印象だ。

タムロン
タムロンブースは、富士フイルムXマウント用レンズとニコンZマウント用レンズの登場をアピール。

ショーケースの中には「70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2」ニコンZマウントがニューモデルとして展示されていた。

カウンターの上に置かれていた盆栽は、被写体として大人気。レンズを向けてシャッターを切る来場者の姿が多く見られた。

ニコン
ニコンブースは、通路を挟んでキヤノンブースの向かい側。四角く囲われたカウンターの中央には、各種レンズが並んでいる。望遠ズームの体験コーナーは壁で囲まれたスペースの中にあった。

ニューモデル「ZR」のために特設カウンターが設けられ、アクセサリーも展示されていた。

多くの来場者を集めていたニコンブースのステージ。オープンな会場なので、遠く離れたブースの看板まで見通せるのが新鮮だった。

富士フイルム
ステージをはさんで、Xシリーズ・GFXシリーズを展示するエリアと、instax“チェキ” を展示するエリアで構成されていた富士フイルムブース。

チェキエリアの後ろは撮影コーナー。撮影したチェキフィルムをデコレーションできるDIYカウンターは大賑わいだった。

アルバムやプリントを紹介するコーナーも充実していて、富士フイルムの実力をアピールしていた。

ライカ
ややこじんまりとした印象のライカブースは熱心に説明を聞く来場者が多く、カウンターの周りには常に人だかりができていた。

ブース内で存在感を示していたのが、iPhone用の「Leica LUXグリップ」。ニーズの違いからなのか、展示機材もディプレイもドイツの「Imaging World」とは大きく違ったものになっていた。

カウンターの後ろには、ゆったりとした商談スペースが設けられていた。ステージのあるブースは多かったが、商談コーナーを設けていたのはライカだけ。奥の小部屋ではプロジェクターの「Cine 1」が映像を投影していた。

リコー
リコーブースは「RICOH GR IV」をメインに、フィルムコンパクトカメラ「PENTAX 17」、防水コンパクトデジタルカメラ「PENTAX WG」シリーズ、デジタル一眼レフカメラ「PENTAX K」シリーズ、360°カメラ「RICOH THETA」シリーズまで幅広く展示していた。

カウンターの中に設けられたショーケースには「GR」シリーズ対応アクセサリーのほか、双眼鏡や一眼レフ用の交換レンズなども展示されていた。

日本でも人気の高かった「リコーカメラミニチュアコレクション」も、注目を集めていたアイテムの一つだ。

展示以外のイベントも楽しめる
中古カメラ市
会場のエントランスはカフェテリアになっていて、その一角で中古カメラ市が行われていた。ジャンクかビンテージか微妙な商品もあるが、値段はついていない。掘り出し物が見つけられそうな気配だけはある。一部の高価なカメラはショーケースに入れられていたのと対照的に、ネジだけパッケージしたものもあったりと品揃えもユニークだ。


開放的なカフェテリアにはキッチンカーが出店していて、来場者や出展者がランチを楽しめるようになっていた。

フォトウォーキング
リコーの「GRフォトウォーキング」に参加させてもらった。スタッフを交えて10名ほどで、会場周辺を約1時間撮り歩くというもの。 会場のあるLa Villette (ラ・ヴィレット) 公園は被写体が豊富。カメラ操作は同行するスタッフが解説してくれるので、時間いっぱい撮影を楽しめた。

アナログクロニクル
「アナログクロニクル」ののぼりを掲げていたのは、99 Cameras Clubが主催するカメラミュージアム。懐かしいフィルムカメラが展示されていた。


書籍販売コーナーは多くの来場者で賑わっていた。写真集だけでなく撮影テクニックやレタッチの解説書など、写真関連のさまざまな本が販売されていた。

ドイツの「Imaging World」とフランスの「Salon de la Photo」を慌ただしく巡った3日間。ドイツとフランスという違いもあって、大きく性格の違う2つのカメラショーを取材することができた。このタイミングでの新製品のお披露目はほとんどなかったが、日本国内メーカーの注目度の高さを改めて知ることができたのは収穫だった。ただ、撮影用品メーカーの出展は、想像していた以上に少なかった。
2026年は「Imaging World」が10月2〜4日、「Salon de la Photo」が10月8〜11日にそれぞれ今年と同じ会場で開催される。2018年までドイツで開催されていた世界最大のカメラショー「フォトキナ」のような、ヨーロッパのカメラ業界を象徴するような秋の恒例行事となることを期待したい。