
CAPAの鉄道写真コンテスト「TEKKEN!」2025年12月の入選作品を発表します。テーマは「秋・冬の情景」。審査員・村上悠太先生の講評とともに紹介します。
なお、今回をもって「TEKKEN!」は終了とさせていただきます。これまでご応募くださった皆さま、誠にありがとうございました。
今回のテーマ「秋・冬の情景」
黄に赤と色とりどりに染まる秋の情景。時折吹く木枯らしにその葉を散らしながら、季節は徐々に冬へ。初雪の便りが届き始めると、寒さの中にさまざまな美しさが宿ります。それぞれの季節に共鳴した皆さんの個性豊かなカメラアイに感動しました。最終回の力作の数々をお届けします!
〈審査員〉村上悠太
Railマイスター「風雪のいたずら」村田 茂 (横浜市青葉区)

作者コメント
強い風と雪でSLの煙が暴れます。暴れた煙がカラスを狙い撃ちです。
村上悠太先生の講評
風景を霞ませる降雪と強い風。どちらもSLの撮影には決して好条件とは言えない中、強風が作り出した二度と撮影することができない瞬間を的確に捉えました。こういうことが起こるから、「写真って楽しいよね」と改めて噛み締めた、そんな1枚でした。

入選「白と青」柿崎弘志 (山形県酒田市)

作者コメント
日本海側では珍しい冬の快晴。上沼垂色が景色に溶け込みます。
村上悠太先生の講評
まさに爽快の一言につきる雪晴れ! 鳥海山のコンディションも最高で、そこに花を添えたのが上沼垂色という奇跡とすら感じるコンビネーションです。PLフィルターの効果が若干強く、いわゆる片効きが起きていますが、むしろそれも印象的な効果に感じました。
入選「白波が揺れるが如し」栗原正隆 (大阪市天王寺区)

作者コメント
木枯らし1号が吹き荒れ激寒だった平城宮跡。夕陽射すススキが白波のように風に揺れていました。
村上悠太先生の講評
栗原さんが持つ独特の色調感覚がこの写真の大きな魅力かなと思いました。近鉄の高い架線柱は構図内での扱いに少々難儀しますが、風に乱れるススキの波模様と無機質な架線柱がマッチしているのも素敵なポイントです。光も美しくインパクトある1枚です。
入選「あきいろきいろ」佐藤隆之 (横浜市旭区)

作者コメント
「夫婦銀杏」と称される2本並ぶ美しいイチョウの木。枝に残る葉と散った葉によって一面黄色で包まれました。その2本の木の間に可愛らしいトロッコ列車を入れて撮影しました。
村上悠太先生の講評
佐藤さんのコメントの通り、木々に残った葉だけでなく、まるでじゅうたんのように広がった落葉がキレイですね! 適度に写り込んだ緑とのコントラストも心地良く感じます。画面左側の刈り終わった田んぼがやや気になるので、構図を右に振っても良かったかなと思います。
入選「富士へ帰ろう」布施 剛 (東京都国分寺市)

作者コメント
雪の積もった黄昏の富士山近くのローカル線を狙いました。
村上悠太先生の講評
背筋がピッとなるような冷気を感じる1枚です。かなりの高感度で撮影していますが、列車を写し止めるシャッタースピードを選択したことで、この冷気あふれる世界に一抹の温もりを与えてくれています。列車を光の筋にしなかったのは的確な判断でした。
入選「降霜」樫山範征 (埼玉県久喜市)

作者コメント
珍しく、氷点下まで冷え込んだ早朝。朝日が上る直前に撮影しました。ススキの穂など、あたり一面霜に覆われ、幻想的でした。
村上悠太先生の講評
まずこのアングルでカメラを構えた樫山さんのセンスに引かれました。何気ない光景とも言えるこの場所に、自然現象が魅せた繊細な美しさを見逃さない丁寧な視点が素晴らしいです。しかも撮影されたのはフィルムカメラで、しかも元旦! 今年はいい年になりましたか?
入選「厳冬静謐」佐藤雄大 (北海道釧路市)

作者コメント
雪に染み入る静寂の中、鉄路のリズムだけが聞こえてくる贅沢な時間です。
村上悠太先生の講評
目の前の空間を素直に写真に翻訳した、優しい写真です。佐藤さんも綴っているとおり、積もった雪に吸音されたこもったジョイント音が静かに聞こえてきます。写真にしたからこそ残る、ほのかな日常の営み。しばしいろいろなことを連想してしまいました。
入選「溢れる温もり」佐藤一成 (京都府木津川市)

作者コメント
雪が積もる線路際に車内から漏れる電球色のあかり。外で凍えて撮っていても伝わってくる隠し切れない温もりに、列車を見送りながらほっこりしました。
村上悠太先生の講評
列車の明かりに照らされる窓外の雪、いいですよね。凍える寒さの中で、列車が運ぶ人々の温もりまで見えてくるようです。こうした「温もり」といったテーマを望遠レンズで捉えた写真はあまり見たことがなく、さらに正面気味に狙ったことで明確に伝わってきた点も良かったです。
入選「霧海。多摩川」森本裕之 (東京都府中市)

作者コメント
多摩川冬の風物詩、川霧。この日は温泉が湧いているかのような霧一色に。東京とは思えない情景の中、中央線をキャッチしてみました。背後にある建物類で、多少街中感を演出できたと思っています。
村上悠太先生の講評
「あれ、これ多摩川だよね?」と一瞬困惑した写真です。川面から狙うアングルが定番の中、街を背景にすることができるこの立ち位置で狙ったことで、あまり見たことのない風景に仕上がっています。列車の位置はもう少し左まで引きつけていいと思います。
入選「化粧直し」佐藤詔太 (宮城県多賀城市)

作者コメント
愛を感じるねぇ。
村上悠太先生の講評
「ガリガリ、ボサボサ」。そんな青森の冬の音が聞こえてくるような日常感にあふれています。と同時に、冬季の津軽鉄道の険しさを間接的に表現している味わい深い作品です。列車、人物との距離感がやや中途半端なので、後ろ姿で魅せるならもう少し離れてみるのも一考です。
村上悠太の “鉄” 視線「紅葉のシャワーをあびて」
急に冷え込んだおかげか、東北から西日本まで、例年以上に美しい紅葉が見られた2025年。新型やくもと紅葉のコラボを探してロケハンするも、足を滑らせ川に落ちてしょげていたその時、後ろを見ると素敵な紅葉を発見。超広角レンズでダイナミックに撮影してみました。
