特集

レースアンバサダーからKYOJO CUP公式カメラマンへ!「撮られてきたからこそわかる感覚があります」後藤佑紀さん

レースアンバサダーから “撮る側” に転身し、2025年シーズンは「KYOJO CUP」の公式カメラマンを務めた後藤佑紀さん。この1年の撮影活動や、“撮られる側” の経験を生かしたレース撮影への向き合い方をお聞きしました。

後藤佑紀インタビュー
撮影 : 内田健太

空気感も含めて写真に残したい

元レースアンバサダーフォトグラファーの後藤佑紀です。私は2025年シーズンから、「KYOJO CUP」の現場で公式カメラマンをしています。モータースポーツの写真というと、どうしても走行シーンが中心になりがちだと思うのですが私自身はレースの結果だけでなく、レースが始まるまでの時間や、チェッカー後に残る空気感も含めて写真に残したいと考えています。

モータースポーツは多くの人が関わるチームプレーだと思っています。ドライバーを中心に、チームスタッフやエンジニアなど、それぞれの役割があって一つのレースが成り立っている。「KYOJO CUP」も走っているのは一人でも、その背景には必ずチームがある。だから私は、コース上だけでなく、ピットやパドックでの様子にも注目するようにしています。

後藤佑紀インタビュー

KYOJO CUP
フォーミュラ車両による、女性ドライバーのみがイコールコンディションで競い合うカーレース。20台のマシンが出場。2025年は富士スピードウェイにて全5戦で行われました。

撮られる側の経験を生かして

後藤佑紀インタビュー

昨年まではレースアンバサダーとしてサーキットに立っていました。撮られる側として現場にいた経験は、今の撮影にも影響していると思います。どのくらいの距離でカメラを向けられると落ち着くのか、どんなタイミングだと緊張してしまうのか。そうした感覚は、実際に撮られてきたからこそわかる部分があります。

撮る側に立場が変わってから、レースの見え方も変わりました。以前は一つのレース、その結果として見ていたものが、今は一人のドライバーがレースウィークをどう過ごしているのか、その流れを見るようになりました。撮影前には、予選結果やランキング、前のレースでどんな結果だったのかを確認します。それは、ドライバーそれぞれがその週末をどんな気持ちで迎えているのかを考えるためでもあります。

ドライバーに寄りそうことで見えてくる感情がある

後藤佑紀インタビュー

「KYOJO CUP」を撮っていると、ドライバー全員が「勝ちたい」という気持ちを持ってレースに臨んでいることを強く感じます。立場や状況はそれぞれ違っても、勝ちたいという思いを前提にサーキットに立っている。その上で、予選結果やこれまでの流れによって、見えてくる表情や空気が少しずつ違ってくるように感じています。

私が意識しているのは、レースをそのまま写すというよりも、レースを見ながら「この人はいま、どんな気持ちなのだろうか」と考えつつシャッターを切ることです。チームの中で起きていることを、ただ受け取るのではなく、自分なりに想像しながら向き合っています。

後藤佑紀インタビュー

ピットで交わされる短いやり取り、走行前の準備、走り終えた後の空気感。そうした場面には、その週末に積み重ねてきた時間や関係性が表れていると思います。ただ、それを説明的に写したいわけではなく、写真を見た人が、写っている表情や距離感から、いろいろなことを想像できるような一枚になればいいと考えています。

見る側が写真から何かを感じ取り、自分なりに物語を思い浮かべる。そこに、私が感じたことが少しでも重なっていることが、シャッターを切ってよかったと思える瞬間です。

また、写真を撮る上でドライバーとの関係性もとても大切だと考えています。近くにカメラがあることで、余計な緊張を与えてしまわないように気を配ることも、撮る側の役割だと思っています。撮影すること自体が、レースの妨げにならないように。その距離感は、これまで撮られる側にいた経験が生きている部分かもしれません。

「KYOJO CUP」の成長を撮り続けたい

後藤佑紀インタビュー
撮影 : 内田健太

一方で、これからの課題だと感じていることもあります。それは、ドライバー自身が「見られる存在」「応援される存在」であるという意識を、少しずつ持っていくこと。これは否定的な意味ではなく、カテゴリーが成長していく中で必要になってくることだと思います。

プロとして走る以上、走りだけでなく、その姿がどう伝わっているかもレースの一部になる。写真は、そのことを共有するための一つの手段でもあります。撮影を通してドライバーやチームとの関係を築きながら、そうした意識を一緒に作っていけたらと考えています。

後藤佑紀インタビュー

「KYOJO CUP」は、これからどんどん人気になるカテゴリーだと思います。その中で私は、現場で起きていることを想像しながら丁寧に残していきたいと思っています。写真を通して、その場の空気や気持ちが少しでも伝わればフォトグラファー冥利に尽きるし、現地に足を運ぶきっかけになってくれたら嬉しいです。