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「混迷するスリランカ」に襲い掛かる、4つの大きなリスク

2022/7/22

現在スリランカでは、財政破綻およびインフレの高騰が、国民生活に甚大な影響を与えています。長年、ラジャパクサ一族が支配してきた政治や経済状況の悪化に国民は怒り、大規模デモや大統領公邸の占拠などが発生。国外に逃亡していたゴタバヤ・ラジャパクサ氏は大統領を辞任し、数日前に暫定政権が誕生しましたが、同国の情勢は混迷しています。スリランカにはビジネス上どのようなリスクがあるのでしょうか?

スリランカの大規模デモの様子

 

スリランカは、対外債務の膨張および外貨準備高の不足によりデフォルト(債務不履行)に陥りました。原因はいくつかあります。まず、スリランカは2009年に内戦が終結した後、主に中国からの融資を受けて、港や空港などのインフラを整備しました。しかし、同国はそれらの運営に失敗し、外貨を獲得することができず、対外債務の返済が滞ります。これにより、スリランカの信用格付けが下がり、同国は海外の資本市場で資金を調達することができなくなりました。

 

また、新型コロナウイルスのパンデミックによって、スリランカの主要産業である観光業が不振になり、外貨が減ったことも大きな要因です。同国は有機農業へのシフトを図ると同時に、保有する外貨(ドル)の流出を防ぐため、農薬や化学肥料の輸入を禁止しましたが、この措置はかえって農家を苦しめ、食料生産に悪影響を与える結果となりました。そんな中、ウクライナ危機が起こり、物価が世界的に上昇しますが、スリランカは外貨不足のために石油や食料などの必需品を輸入することができず、国民生活は苦しくなり、その怒りが大規模デモという形で噴出しました。

 

海外進出のリスク

スリランカ危機が起きているいま、同国または他の新興国・途上国への進出を検討している企業にとって、リスク管理が以前にも増して重要になっているでしょう。リスク管理とは「企業が事業活動を遂行するにあたって直面するであろう損失、または不利益を被る危険、あるいは、想定していた収益または利益を上げることができない危険の発生の可能性を適正な範囲内に収めるための一連の活動」を指します(日経ビジネス経済・経営用語辞典)。リスクにはさまざまな種類がありますが、海外ビジネスを検討するうえで重要な要因が少なくとも4つあります。

 

1: 物流

海外事業に必要なアイテムや素材を購入しても、業者がそれらを予定通りに届けなかったり、予算を超えたりするという不確実性が存在します。現在、スリランカでは石油が不足しており、食品がスーパーに届かないなど、サプライチェーンが混乱しています。

 

2: 規制

国によって法律や規制が異なるため、それらに精通した弁護士が必要。近年では特に環境規制が厳しい国が多く、それらの規制に合わせることが求められています。

 

3: 金融

為替や金利、物価などが将来変動するリスク。途上国の場合、為替が不安定なことが多く、現地通貨で得た売り上げをどのように日本の本社に環流させるかという課題もあります。上述したように、金融リスクはスリランカで最も大きな不確実性です。

 

4: 政治

資産の国有化や戦争、テロ、政権交代といった不確実性。世界有数の金融グループであるアリアンツは、2022年2月に発表したカントリーリスクの調査で、スリランカは政治体制が分裂しており、連立政権が概して弱いことを指摘していました。

 

受け入れることができるリスクの量や損失の許容額は企業によって異なりますが、それらを決める前に、企業はこのようなリスクを特定することが必要です。そのためには、商習慣や文化を含めて現地のことを把握しているパートナー企業と組むことが役に立つでしょう。リスク管理を踏まえて進出する国を安全に検討したい方向けに、下記に海外進出に役立つ多くの資料を揃えていますので、ぜひ参考にしてください。

 

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