1956年に初めて油田の存在が確認されたナイジェリア。これまで石油の生産は同国の主要産業でした。しかし近年、ナイジェリアの産業に大きな変化が生まれており、石油の役割が縮小している模様。代わりに、これから同国の経済を牽引するのは、情報通信技術(ICT)になる可能性が高まっています。
アフリカのテクノロジー系メディア・TechCabalは9月1日、2022年第2四半期におけるナイジェリアの国内総生産(GDP)で、ICTの占める割合が18.44%になったと報道。一方、石油産業のGDP構成比率は6.33%に低下し、非石油部門が93.67%を占めるようになりました。
ナイジェリアは、2021年のGDPが約4408億ドル(世界銀行。約63.4 兆円※)とアフリカ最大の経済国です。原油の発見は同国に新しい富をもたらした反面、天然資源が見つかったことによって、国の産業が弱体化するという「オランダ病」も引き起こし、ナイジェリアは多くの消費財を輸入に頼るようになりました。そのような経済構造からの脱却を図るため、ナイジェリア政府が進めているのが、ICTを中心とした経済の多角化。例えば、2017年に同国は、2020年までにICT関連産業を成長させることで、250万人の雇用創出とGDPの20%増加を目指す「Nigerian ICT Roadmap 2017-2020」プロジェクトを打ち立てました。また、国連が定める「世界開発情報の日」にあたる10月24日を「デジタル・ナイジェリア・デー」と制定していることからも、ナイジェリアのデジタル経済への強い意志が感じられるでしょう。
※1ドル=約144円で換算(2022年9月26日現在)
デジタル経済への原動力の1つが人口。ナイジェリアの人口は2億1000万人で、そのうちの23%が、教養と経済力を持つ中間層。同国の人口は2050年には4億人を超える見通しです。同国の通信デジタル経済省は『NATIONAL DIGITAL ECONOMY POLICY AND STRATEGY (2020-30): For A DIGITAL NIGERIA』で、人口が多く、デジタル経済が発展している国の例として中国、インド、アメリカを挙げており、人口の多さはナイジェリアがデジタル経済の発展を持続するうえで強みになると論じています。
また、ナイジェリアのICT産業では、スタートアップの存在も見落とせません。大企業や大学の研究機関、公的機関など、産官学が連携しながら、同国最大の都市・ラゴスを中心にスタートアップエコシステムを形成しています。ナイジェリアには現在、750を超えるスタートアップがあり、2021年に調達した資金の合計額は3億700万ドルに到達。スタートアップエコシステムについて調査するStartupBlinkによると、同国のスタートアップエコシステムの評価は世界で61位となっていますが、西アフリカ地域では1位。アフリカ大陸においてナイジェリアのエコシステムは高水準に達していると評価されています。
世界的に注目を集めるナイジェリアのスタートアップの中には、例えばOrda社があります。2022年1月に11万ドルを調達した同社は、レストラン向けの注文管理・決済などを管理するプラットフォームを展開。他にも、外食産業事業者と農家をマッチングさせるサービスを提供するVendease社など、フードテック関連企業は目覚ましい発展を遂げるようになりました。このようなスタートアップがロールモデルになりながら、ナイジェリアのICT産業を引っ張っているように見えます。
ナイジェリアのデジタル経済の成長には、このような背景がありますが、GDPの構成比でICTが石油を上回ったことについて、イサ・パンタミ通信・デジタル経済大臣は「今回の結果は、デジタル経済を推進してきた政府の取り組みと一致している」とコメント。ナイジェリアのデジタル経済推進の成果は、目に見える形で表れてきているのかもしれません。
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