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高齢化進むインドの介護、日本に期待される3つのノウハウ【IC Net Report】インド:大西由美子

2023/1/5

開発途上国にはビジネスチャンスがたくさんある…とは言え、途上国について知られていないことはたくさんあります。そんな途上国にまつわる疑問に、海外事業開発コンサルティングを行っている、アイ・シー・ネット株式会社所属のプロたちが答える「IC Net Report」。初回に登場するのは、10年以上インドに駐在し、ODA事業やビジネスコンサルティング事業に携わる大西由美子さん。大西さんは、今インドの介護ビジネスに、日本企業にとってのビジネスチャンスがあるのではないかと考えています。日本のノウハウがインドの介護ビジネスにどう必要と感じるのか、特長的な3点を挙げてもらいました。

 

 

●大西由美子/2004年からアイ・シー・ネットで勤務。南アフリカの農村開発に1年半従事したのち、インドへ異動。2006年から4年間は旧JBIC・JICAのインド事務所でODA事業に携わる。2011年頃からはODA事業のモニタリングや評価の業務をメインで担当。ビジネスコンサルティング事業部でインド進出を目指す日本企業の支援も行っている。

 

インドの介護事情について

本題に入る前に、インドの介護事情に関連した近況についてご紹介しましょう。

 

若い世代を中心に核家族世帯、欧米や中東に働きに行く人が増加。インドに高齢の世代だけが残っているケースが近年増えている

もともとインドの人口の多くは地方や農村部で生活しており、大家族で生活している人が多いのですが、近年では仕事や勉強のため、都市部への人口流出が続いています。このような人の動きやライフスタイル、マインドセットの変化により、今までのように3世代といった大家族ではなく、核家族で生活する世帯が増加。また、欧米や中東に働きに行く人が多いこともあり、近年では高齢の世代だけで暮らしている世帯が増えています。

インド政府が、高齢者ケアに関する専門委員会を設置

高齢者ケアは、インドでは市場自体はまだ未熟で、関連法が社会の変化に追いついておらず、市場を取り巻く様々な環境整備がされていません。インド政府もやっと法整備の必要性を認識し動き始めたところで、在宅ケアとホスピスのサービス基準・規制にかかる省令や、老後施設の最低基準を設定すべく専門家委員会が設置されて日が浅い状況です。

 

このようなインドの状況で、日本が提供できるノウハウとはどんなものなのでしょうか? ここからは大西さんに回答頂きます。

 

【日本のノウハウ1】充実した在宅介護サービス

「核家族化や女性の社会進出が進んでいますが、インドの方々には、大切な両親や祖父母のケアは“できるだけ自分たちでしたい”、“信頼のおける人に頼みたい”という気持ちが強くあります。インドでは家族の繋がりがとても大切にされていて、両親や祖父母を敬う文化なので、老人ホームや介護施設に家族を送るのには抵抗があるでしょう。そのため、個々のライフスタイルやニーズにあった柔軟なサービスが施せる在宅ケアのニーズが高まっているのです。すでに在宅や施設での介護サービスが充実している日本には、インドの高齢者ケア市場を切り開いていく上でたくさんの知見があるはず」(大西)

 

【日本のノウハウ2】介護従事者の資格制度やキャリアパス

「インドの介護市場は未成熟で、政府による法整備も始まったばかり。まだサービス・プロバイダーの数も少なく介護従事者のスキルもまちまちな上に、介護従事者がキャリアップできる制度になっていないので、離職率が高いのです。また、介護従事者の資格が制度化されていないという課題もあります。日本とインドでは社会文化的に異なる部分がありますが、日本の介護従事者への資格制度やキャリアパスは参考になると思います」(大西)

 

【日本のノウハウ3】介護機器や用品を駆使した高レベルなケア

日本の介護レベルの高さは、介護機器や用品を駆使したケアにあると思います。インドでは市場に出回っている介護機器や用品は限定的で入手しづらく、人の力に頼って介護している場面が多いので、介護ベッドや移乗補助機の導入がされれば大きな機会がありそうです。日本からそういった機器を輸出できれば発展に繋がると思いますし、さらに現地で生産ができるようになれば、日本企業にとってもビジネスの広がりが出てくると思います。また最近では、高齢者用の住宅施設が少しずつ設立され始めています。こういった施設で日本の技術や介護機器・用品が導入されれば、市場に広がるきっかけになり得そうです」(大西)

 

以上が、インドの開発コンサルタント・大西さんが挙げてくれたインドの介護に求められる、3つのノウハウでした。先んじて高齢化社会に突入した日本だからこそ、高度な高齢者ケアの知見・技術があり、これからのインドではそのノウハウがとても有効になりそうです。

 

反面、大西さんは「インドの社会文化を踏まえ、現地の状況とニーズにあった介護サービスの提供が必要」とも言っています。人と人の触れ合いが大切なインドの文化では、例えばテクノロジーを使った見守りセンサーやロボットによる一部ケアの代行は、馴染みにくい可能性があることにも言及していました。インドならではの文化を理解しながら、日本から知見と技術を提供していくことが大事になるでしょう。

 

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