トピック&ニュース

早い成長、低いコスト、高いCO2吸収量。「竹」の可能性に世界が注目

2023/2/22

2021年に起きたウッドショック。コロナ禍で伐採労働者が減少した影響もあり、住宅建設に必要な木材が不足し、木材の価格が高騰しました。このような現象が起きた後で、建築材料として俄然注目を集めているのが竹です。現在、世界中で約44億人が都市部に住んでおり、その数は2050年に2倍になると見られていますが、それに伴い増えることが予想される住宅需要を満たすためには、竹の活用が不可欠と言われています。日本人が昔から馴染んできた竹には、一体どのような可能性が秘められているのでしょうか?

世界を救う可能性を持つ竹

 

まず、竹の特徴として成長がとても早いことが挙げられます。一般的な木材の場合、苗木を植えてから木材として使用できるまでに40~50年かかるのに対して、竹は多くの品種で根本を切っても再び芽が伸び、わずか3年で収穫できるほど早く成長するのです。

 

また、竹は成長するときに大気中の二酸化炭素を吸収することも特徴。1ヘクタールの竹林は1年間で約17トンの炭素を吸収するうえ、竹は建物や家具などになった後でも大気中の炭素を吸収して蓄えることが可能。そのため、竹は深刻化する地球温暖化の対策にもなり得るのです。

 

さらに、竹は耐久性があって安価、しかも軽量なので運搬しやすいと言われているほか、水分を多く含んでいるため耐火性があり、加工すれば400℃の高温にも耐えられるようになるそうです。このような理由で、竹はとても魅力的な建築資材であり、気候変動に対応した住宅の建築に役立つ可能性を秘めているのです。

 

世界経済フォーラムや世界資源研究所などの共同イニシアチブによる「気候スマート・フォレスト・エコノミー・プログラム(CSFEP)」は、持続可能な建築資材として竹を活用した住宅建築の取り組みを進めています。その一例が、グアテマラの竹製住宅。2022年10月に熱帯低気圧ジュリアに襲われた際、この住宅は強い風に耐え、しかも高床式の住居だったため浸水も防ぎ、被害を受けずに済んだ建物が多かったのです。

 

他国もこのような竹のポテンシャルに注目し、竹の産業化を推進しています。中国は2012年に竹産業を国家的な優先課題と決定した一方、ケニアは竹の商業化を促進するべく、2020年には竹を植物ではなく「作物」に分類しています。また、エチオピアでは、2030年までにアフリカで主要な竹生産国になることを目指し、竹の植林を進めていると同時に、人工竹材に関する実験も行っている模様。さらに、インドの建築業界でも竹を活用することで建築資材を多角化する動きが見られるなど、竹を利用した試みは世界各国に広がっているのです。

 

日本も負けられない

日本人にとって竹は昔から身近にある植物で、縄文時代から建築素材として使われてきたとされています。しかし、家具やインテリアなどには竹が使われているものの、より安価な資材が生まれたことなどから、日本では竹の消費量自体が減り、管理されないまま放置された竹林が増えているのが現状。

 

それでも、国産の竹100%を原料とした「竹紙」を製造したり、竹から「セルロースナノファイバー」と呼ばれる極小繊維を作る技術を開発したり、日本でも竹を資源として活用する研究が進められています。これらは建築資材ではありませんが、他国と同様に日本でも竹を再評価する機運が高まっているのかもしれません。世界各国がサステナブルな竹を巡り競い合っている中、日本の奮起が期待されます。

 

読者の皆様、新興国での事業展開をお考えの皆様へ

『NEXT BUSINESS INSIGHTS』を運営するアイ・シー・ネット株式会社(学研グループ)は、150カ国以上で活動し開発途上国や新興国での支援に様々なアプローチで取り組んでいます。事業支援も、その取り組みの一環です。国際事業を検討されている皆様向けに各国のデータや、ビジネスにおける機会・要因、ニーズレポートなど豊富な資料もご用意しています。

なお、当メディアへのご意見・ご感想は、NEXT BUSINESS INSIGHTS編集部の問い合わせアドレス(nbi_info@icnet.co.jpや公式ソーシャルメディア(TwitterInstagramFacebook)にて受け付けています。『NEXT BUSINESS INSIGHTS』の記事を読んで海外事情に興味を持った方は、是非ご連絡ください。