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「安全な水とトイレ」の普及で企業の役割が拡大! 1600億円規模の市場に投資を促進

2023/4/19

世界では子どもの約30%がトイレや水道のない学校に通っていると言われています。このような学校の衛生環境を改善するためには、どうすればよいのでしょうか? 近年、発展途上国では企業が現地の政府と組んで、学校のトイレや水道の整備に乗り出す動きが広がりつつあります。この取り組みは社会的なインパクトが大きいだけでなく、新たなビジネスチャンスとしても注目されています。

学校にトイレを普及するうえで企業が果たす役割が大きくなっている

 

発展途上国の多くの学校ではトイレや水道といった設備が整っておらず、子どもたちに深刻な影響を及ぼしています。ユニセフの調査によれば、学校でトイレが利用できないために、身体の不調や集中力の欠如が見られる子どもの割合は、ほぼ5人に1人に上るとのこと。10人に1人以上は排泄を避けるために意図的に食べ物や飲み物を取らないほか、女子の場合は生理中に学校に通わず自宅で過ごすことも多く、学校中退の増加につながるとされています。

 

また、トイレの不足や汚れは、下痢性疾患や寄生虫の増加といった健康上のリスクを増大させるだけでなく、水質汚染を引き起こすなど広範囲に悪影響を及ぼします。

 

このような状況を変えるために、地元の企業が政府と協力しながら学校にトイレや水道を提供し、衛生施設を管理する取り組みが広がっています。トイレが設置されると、学校側にはトイレットペーパーや石鹸をはじめ、生理用品や掃除用品などを揃える必要がある一方、これらの製品を取り扱う地元の企業にとってはビジネスチャンスとなります。

 

トイレから出る汚物や汚水の再利用にも企業が参入するようになりました。トイレから出る汚物は回収された後、農産物の肥料やバイオガスとして活用されています。バイオガスは家庭における料理や暖房などでも使われるほか、電気に変換することも可能。この取り組みは、経済活動のなかで廃棄されていた製品や原材料などを資源として再利用するサーキュラーエコノミー(循環型経済)の典型的な例と言えるでしょう。

 

そのほかにも、回収したトイレの汚物を分析して子どもたちの健康状態を管理する技術を企業が開発しており、学校の水質や衛生状態をモニタリングするための指標として活用されることが期待されています。

 

1ドルの投資で4.3ドルのリターン

学校のトイレや水道の整備には、どれほどの市場規模があるのでしょうか? 世界の水や衛生問題の解決を目指す企業が集まる「Toilet Board Coalition」がフィリピン、ナイジェリア、メキシコを対象に行った調査によれば、フィリピンの市場規模は年間9億4800万ドル(約1261億円)、ナイジェリアで6億6500万ドル(約884億円)、メキシコで12億ドル(約1600億円)とのこと。

 

このように、水や衛生への投資は世界中で年間数十億ドル相当の利益を生み出す可能性があります。学校のトイレや水道を整備するためには、従来の3倍以上の支援が必要と言われていますが、WHO(世界保健機関)は「水・衛生分野に1ドル(約133円※)投資すると、生産性が向上して4.3ドル(約570円)のリターンが期待できる」と試算しており、企業に投資を促しています。

※1ドル=約133円で換算(2023年4月13日現在)

 

発展途上国における学校のトイレや水道整備への投資は社会的意義が高い事業であり、大きなビジネスチャンスがあると言えるでしょう。販路拡大にとどまらず、企業のブランド価値向上につながる広報効果や、現地企業や政府など新たなパートナーの開拓も期待できます。こういったメリットを鑑み、関連事業を手がける日本企業は途上国の学校への投資を積極的に検討してみる価値があるのではないしょうか?

 

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