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インドの「家電市場」が成長。女性の社会進出に期待が膨らむが…

2023/1/17

近年、インドで家事を軽減するために家電を導入する家庭が増えてきました。このトレンドにはどのような背景があるのでしょうか? 調べてみると、中産階級の拡大や女性の社会進出に向けた動きなどが関係していることがわかりました。女性の働く機会の増加は家電市場の成長を促す一方、そこには複雑な問題も存在しています。

 

家電の普及と女性の負担軽減

家電は女性のエンパワメントを助ける

 

インドでは冷蔵庫や洗濯機がないという家庭が多く、家事の大変さや時間がかかることに驚きます。家電の普及率はまだまだ低く、統計市場調査プラットフォームstatistaの2018年調査によれば、冷蔵庫は33%、洗濯機は13%とのこと。

 

それでも、近年は冷蔵庫や洗濯機を購入する家庭が次第に増え、市場は成長しています。グローバルジャパン社によると、2018年〜2019年のインドの家電市場の規模は約1兆1680億円でしたが、2025年には2倍に達すると言われています。さらにインドのリサーチ企業・Mordor Intelligence(MI)が、2022年〜2027年における同国の家電市場の動向を予測しており、そのレポートによると、年平均成長率は5%になるとのこと。都市部で急成長している中産階級と農村部の需要が中心であると述べられており、可処分所得の増加やオンライン販売の拡大、より快適な生活への願望が、インド人の購買力を高めているようです。また、地方における電力アクセスの改善や配電網の整備が、テレビやクーラーなどの需要を増やす可能性があるそう。

 

筆者がインド人に話を伺うと、LGやサムスンなど韓国製の家電が人気ということ。インドで見られる家電は、日本製と比べて必ずしも機能性が高いわけではありませんが、インド人はどちらかといえば、機能性よりもカスタマーケアが迅速に行われる点を重視する傾向が見られます。

 

MIのレポートに付け加えるとすれば、家電市場の成長の背景には、女性が働く機会が少しずつ増えて所得水準が上昇したのに加え、時短への意識が進んでいることも考えられます。家電の普及は家事軽減につながるとともに、女性の社会進出を後押し、世帯収入を増やしていると言えるかもしれません。

 

女性の社会進出の現状と課題

以前からインド政府は「女性の社会参画を進めよう」と唱えており、2013年の会社法では一定規模の会社に対し、1名以上の女性取締役会の選任が義務づけられました。労働法でも女性の産休取得期間が12週間から26週間に拡大され、約180万人の女性に利益をもたらすことにつながりました。妊娠・出産後も仕事を続けることができるような環境作りが、少しずつ整ってきています。

 

社会の男女平等指数を示す「グローバルジェンダーレポート2022」で、インドは146か国中135位になりました。2021年は140位だったので、確かに少しだけ上昇したとは言えます。しかし、先進諸国や他の南アジアの国と比べると、男女の格差が依然として大きいことが伺えます。

 

非営利団体Catalystが2022年に実施した調査によれば、インドの大多数の人が男女平等を肯定的にとらえると公言しているものの、その多くが「仕事が少ない時は男性が優先的に扱われるべき」と回答していました。

 

さらに、就労機会が増えているにもかかわらず、多くの女性が職場でのハラスメントや嫌がらせを受けているという問題もあります。女性が外で仕事をしても見下された態度を取られることも少なくないとの理由から、家事・育児に専念する人もいる模様。表面には出にくいこういった事象が、女性が社会に出ることを妨げる要因になっています。

 

識字率の問題も見落とせません。義務教育制度のため5歳から13歳までの子どもの就学率は高い水準を保っているものの、なかには家庭の事情で中退せざるを得ない女児が一定数いることも事実。また、子どもの頃は学校に通うことができても、義務教育が終わると教育の機会に恵まれないという女性も数多く存在しています。15歳から29歳の女性のうち45%は高等教育を与えられておらず、この数値は男性の6.5%と比較すると大きな差があります。

スラム街で読み書きの練習をする子どもたち

 

インドの女性就業率はまだ20%程度とされていますが、社会参画への動きが進むにつれ、拡大していく可能性があります。2022年7月にはドラウパディ・ムルム氏がインド史上2人目となる女性大統領に就任し、女性がいきいきと活躍できる社会の実現に向けて機運が高まっています。しかしその一方、男女差別の温床となる風習も依然として存在しており、女性の社会進出は一筋縄では行かないのが現実と言えるでしょう。家電市場の発展が、少しずつでもその動向を後押ししていけるか今後に期待です。

 

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