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拡大するインドの「高齢者ケア」のニーズ! 日本参入のカギを探る

昨今、人口増加がますます加速するインドでは、経済と医療の発展によりここ数十年で平均寿命も大幅に延びています。そのため、高齢者の人口も徐々に増えつつありこのままのペースで推移すると、2030年にはインドの総人口の約20%にあたる約3億人が高齢者になると予測されています。しかし、まだ若年層の人口比率が多いインドでは、高齢者の介護という概念も低く高齢者ケアに対する医療や福祉制度も整備されていないのが現状です。そこで、まだ発展途上の段階であるインドの高齢者ケアサービスの課題やニーズを紐解きながら、高齢化社会の先行国である日本のインド市場参入への可能性を探ります。

 

【参考資料】

IC Net ニュースレター

 

インドの高齢者ケアにおける状況と潜在的な課題

 ここ数年でインドの高齢者ケアを取り巻く環境は大きな変化を見せています。そこで注目すべきは、高齢者の増加や可処分所得の増加に伴う高齢者ケア市場の急激な拡大です。

 

高齢者ケアサービスは、在宅ケア、施設ケア、日帰りで通うデイケアの3つに大別されます。なかでも、インドでは在宅ケアの市場規模が最も大きく、今後もさらなる拡大が見込まれています。

 

 

なぜインドでは在宅ケアの需要が高く、市場規模も大きいのでしょうか。これは、インドの社会的背景や環境の変化が大きく関係しているといわれています。家族の結びつきが密接なインドでは、家庭内で高齢者ケアを行うことが伝統的に良しとされており、施設などの外部に介護を依頼することはあまり一般的ではありません。

 

しかしその一方、自宅で介護にあたる家族には大きな負担となっているのも事実です。実際に家族介護者に高齢者ケアがどれくらいの負担になっているかを聞いた調査では、下記の表で示した通り中等度~重度の負担または重度の負担と答えた方が全国で見ると約45%に上っています。また、女性の社会進出のほか都市部や海外への出稼ぎの増加により、家族間における介護の担い手が減少していることも負担増幅の大きな要因となっています。

 

 

民間企業の参入により、高品質な高齢者ケアサービスが増加

これまでインドの医療業界では、ボランティアをベースとしたNGOや高齢者施設が中心となり高齢者ケアを担ってきましたが、安価な分サービスの質の低さが指摘されていました。そんななか、多様なニーズが求められる高齢者ケア市場に新たな動きがはじまっています。とくに顕著なのは、民間企業による高齢者向けの在宅ケアサービスへの参入です。インドでは専門的な医療サービスを自宅で受けたいというニーズが根強く、民間企業は富裕層に向けた高品質な在宅ケアサービスを展開し、ここ数年で業績を伸ばしています。また経済の発展により、インドの富裕層と上流中産階級の人口比率は増加傾向にあり、さらなる高齢者ケア市場の拡大や需要の高まりが期待されています。

 

 

高齢者ケアサービスを定着させるために必要なインドの課題

民間企業の参入により高齢者ケアサービスの提供が進む中、さまざまな課題も明らかとなっています。一般的に高齢者ケアには、診察や検査、看護などをメインとした医療サービスと日常生活のサポートや学びの場の提供などを行う非医療サービスがあります。インドの病院や民間企業では高齢者に対する医療サービスの提供は増加傾向にありますが、非医療サービスの提供に重きを置く病院や企業が少ないのが現状です。これは、インドの医学部や看護学部では「老年介護教育」を行っていないため、介護という概念が希薄であり、非医療サービスに関する知識やノウハウが浸透していないことも要因のひとつとなっています。

 

しかし、時代の変化とともに高齢者ケアを担える家族介護者が減少しているインドでは、入浴や食事の手伝い、排せつなどの日常的なサポートを行う非医療サービスこそ潜在的なニーズがあるのではないかと考えられています。そのため、非医療介護者の能力開発や国家制度、ガイドラインの整備などは急務の課題となっています。

 

また、高齢者人口の増加に伴いインドでは今後さらに医療機関のインフラ整備の強化が求められるでしょう。そんな中、インドの医療機器の市場規模は、日本、中国、韓国に次いでアジアで4番目に位置し、世界でも20位以内に入っています。なかでも注目すべきは診断機器の市場です。2033年には、約22億ドルに達する見込みとなっており、とくにPOC(Point of Care)機器*の市場は、大きな成長率を見せています。インドでは質の高い医療機器や医療人材が都市部へ集中していることと貧富の差が激しいことから、求めやすい価格のPOC機器の需要が高い傾向にあるのです。また、第一次医療、第二次医療施設の整備や医療機器の配備の遅れが指摘されており、今後さらなる需要拡大が見込まれます。さらにインド国内で販売している医療機器の約70%は海外から輸入しており、海外製品への依存度が高いことも注目すべきポイントです。

*POC機器……病院の検査室またはそれ以外の場所でリアルタイム検査を行うための小型分析器や迅速診断キット

 

 

日本の高齢者ケアサービスのノウハウがインド市場参入へのカギ

現在日本では、人口の約30%が65歳以上となり、超高齢化社会に突入しています。そのため、他国に比べ高齢者ケアへの理解や人材育成、制度の整備が急速に進み、日本の高齢者ケア市場はさまざまな広がりを見せています。

 

なかでも介護職の需要は高く、国家資格を持つ介護福祉士や認定資格のホームヘルパー(訪問介護員)など、専門知識と技能を持つ非医療介護者の能力構築は率先して行われています。さらに介護福祉士からケアマネージャー(介護支援専門員)の資格取得を目指すなど、キャリアアップをサポートする仕組みも整えられています。

 

こうした日本の高齢化対策の実績は、介護という概念があまりなく人材育成や医療、福祉制度の整備が遅れているインドにおいて大いに参考になるでしょう。そのため日本の高齢者ケアサービスのノウハウを伝えるコンサルティングや非医療介護者の人材育成は、インド市場への参入の足掛かりになるかもしれません。また、日本のホスピタリティを生かした介護施設や高品質な在宅サービスは、高所得者が増えているインドで新たなニーズとなる可能性もあります。

 

さらに、インドの高齢者人口の増加に伴い、高齢者ケアサービスを提供する機関や施設が増えることで、介護用品や医療機器の需要が高まることも予想されます。とくに高品質な日本の高齢者ケア用機器は、まだ発展途上の段階にあるインドの高齢者ケア市場において注目を集めるビジネスアイテムとして大きな期待が寄せられています。

 

【参考資料】

IC Net ニュースレター

 

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