ここ数年、撮影ツアーができるほど人気の工場写真ですが、その多くは夜に撮られたものです。夜の暗闇に光る明かりや煙突、タンクなど、工場を形成する様々な機械類を、フォトジェニックに撮影するためのテクニックの数々をご紹介いたします。
工場写真のよくある失敗 ×
工場独特の無機質なイメージが表現されていない
曇天時の日没後に撮った写真。空はどんよりとしているものの、まだ明るい。そのため工場の明かりが弱く、インパクトがない。グレーの空が画面を占め、工場が小さい点もイマイチ。
ここが残念 ×
① 中途半端な時間帯で光が乏しい → 解決法①
② 手持ち撮影?高感度の影響で描写が粗い → 解決法②
③ 曇り空の割合が多くて工場の印象が弱い → 解決法③
工場夜景を撮る時に、どのようなアングルでフレーミングすればいいのか、迷う方は多いはず。工場の無機質感、ダイナミックさ、現実離れした近未来感など、イメージしたとおりに表現するのには、どのようにしたらいいのでしょうか。
一般の夜景撮影と同様に三脚を使った長秒露光が基本になる
昼間は無骨な工場群ですが、夜になり敷地内の明かりが灯り始めると、その印象は一変します。周囲が闇に多い尽くされるなかで、明かりに照らされた煙突、煙、タンク、配管など、それら工場を構成するさまざまな機械類が、実にフォトジェニックに輝きを放ちます。こうした近未来的な現実離れした姿が “写欲”を刺激するのでしょう。
工場夜景の撮り方は、一般的な夜景写真と同様に、三脚を使った長秒露光になります。低感度で狙って、高画質の描写を得るようにしましょう。
残念ポイント①中途半端な時間帯で光が乏しい
【解決法①】工場を撮るなら夜が最適!
日が落ちて夜になり、明かりに照らされると機械類はきらびやかに輝く。この人工美を狙うためにも、工場を撮るなら断然、夜がおすすめ。なお、石油化学工場や製鉄所は一旦機械が動き始めると、次の定期点検や製造ロット変更まで休みなく日夜操業を続ける。なので、曜日に関係なく、朝まで撮影が可能だ。
空がトワイライトでも真っ暗でも絵になる
一般的な夜景は、日没後のトワイライトの空のときに撮ると、美しいグラデーションが得られてきれいだが、空が真っ暗になると、この美しさは欠けてしまう。しかし、工場夜景は被写体自体が派手なので、真っ暗な空でも絵になりやすい。もちろん、トワイライトの時間帯も◎。
残念ポイント②手持ち撮影?高感度の影響で描写が粗い
【解決法②】三脚+レリーズを使って低感度で撮る
ISO感度を上げれば手持ち撮影も可能だが、感度を上げるほどノイズは増える。きれいな工場夜景を撮るには、低感度を選択し、三脚を使って長秒露光すること。この際、カメラのシャッターボタンを指で押すとブレの原因となるので、リモートレリーズを使うことも忘れずに。微少なブレでも描写は不鮮明になってしまう。
三脚使用 ISO250 F11 30秒
手持ち撮影 ISO12800 F4 1/40秒
残念ポイント③曇り空の割合が多くて工場の印象が弱
【解決法③】黒だけ、グレーだけなどの無駄な空間は極力カットする
壮大な工場群を広くカメラに収めると、無駄な余白が多くなりがちだ。輝く部分をアップで切り取れば、感動が伝わりやすくなる。夜空に印象的な雲や煙がない場合は、真っ暗な空が構図に占める割合を極力小さくしよう。
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黒い空間の有無で写真のきらびやかさが変わる
海の向こうの工場群を広めに撮影した上の写真では、画面上下の余白(余黒)が多くてきらびやかな印象が弱い。そこで、煙突や赤い炎が輝かしい左の工場群をアップで狙う。この際、きれいな水鏡を画面に多く取り入れて、より光を感じさせる工場夜景に仕上げた。
工場夜景は、三脚を使って長秒露出での撮影が基本になります。撮影時には、構図の中から黒い空間をなるべく無くし、工場を構成しているすべての被写体を撮影して、ダイナミックな工場らしさを表現してみましょう。