市を一歩引いて見るような写真のことを、都市遠景写真として、ここでは撮影テクニックをご紹介いたします。建物が密集している都市でも、川の対岸や湾などからであれば全景を撮ることができます。
都市遠景写真のよくある失敗 ×
目の前の風景をただ撮っただけの何の主張もない写真
川沿いに並ぶマンションとビルを撮影しているが、これではマンションの近隣状況を伝える広告写真にすぎない。画面にインパクトがないうえ、広めに入れた川も生かされていない。
ここが残念
1 単なるマンションの記録写真 → 解決法①
2 インパクトがなく印象が弱い → 解決法②
3 川が生かされていない → 解決法③
光と影に注目して立体的な都市風景を目指す
都市の遠景は、何の意識もせずに撮ると、ただの記録写真になりがちです。遠景を撮る際は、まずは光と影に注目しましょう。明暗のメリハリによって、立体的な都市風景が撮れます。また時間帯によって生じる光の色彩も盛り込むと、ドラマチックな写真に昇華するでしょう。さらに展望風景と同様に、アクセントとなる被写体を入れると、それがアイキャッチとなって画面が引き締まります。ランドマーク的な被写体はもちろんのこと、飛ぶ鳥や乗り物など動きのある被写体も効果的です。
残念ポイント①単なるマンションの記録写真
【解決法①】動く被写体を入れて街の息遣いを盛り込む
遠景は少し離れた場所から撮るので、その街の臨場感が出にくい。また、平面的かつ動きのない写真にもなりやすい。そこで、飛ぶ鳥や乗り物などの動く被写体が加えてみよう。これらはぶらして写し込んでもいいし、シャープに写し止めてもいい。鳥や乗り物などの被写体が入ると、動きが生まれ、街の息遣いを感じる写真になる。また前景に盛り込むことで、奥行きも引き出せる。
観光船によって動感や画面のリズムが生まれた
川沿いに大きなマンションが並んでいる。そこに川を通る船をアクセントとして入れることで、単なる景色の写真にならず、動きも感じられる作品になった。船のない失敗写真と比べると、アクセントの効果がよくわかるはずだ。
残念ポイント②インパクトがなく印象が弱い
【解決法②】時間帯による光の色味や太陽の輝きなどを生かしドラマチックにする
単調な都市風景をドラマチックにする方法がある。それは色味によって印象づけるといったものだ。青空や夕空などがきれいに描写されていると、それだけで印象深い。さらに夕日の強い光は景色をオレンジ色に染め、見慣れた光景が見違える。また、太陽の輝きでインパクトを出させて、鑑賞者を引きつけるアイキャッチにもなる。
太陽はアイキャッチとして効果的
広角特有の遠近感の強調を生かして、高架を大きくフレーミングして都市風景を撮影。高架だけでも迫力はあるが、さらにアクセントとして太陽を盛り込む。高架で少し太陽を隠すことで暗部に光芒が表れて、より輝く印象が強まった。
17ミリ相当 絞り優先オート(F8 1/1000秒) -0.7補正 ISO100 WB:太陽光
WB/太陽光
WB/蛍光灯
ホワイトバランスで写真の雰囲気を変えられる
夕方は景色がオレンジ色に染まり、昼間とは違った光景を見せてくれる。都市や自然を問わず、風景撮影全般におすすめの時間帯だ。この色彩を見たままに表現してもいいし、ホワイトバランスで色を調整して、さらに印象的にするのもいいだろう。
残念ポイント③川が生かされていない
【解決法③】映り込みや光の反射、波の描写を利用する
遠景を撮る場合、引いて風景を見渡せる場所が必要だ。都市は密集しているためそのような場所はあまりないが、川や湾の対岸などからは比較的引いて狙いやすい。これらの場所は水辺なので、夜になると明かりが灯った都市風景が水面に反射してきれいだ。この水面反射を生かさない手はない。
画面の下半分に水面反射を入れてカラフルできらびやかな写真に
神戸ハーバーランドから撮影。対岸に見えるライトアップされたポートタワーや海洋博物館の遠景を広く捉えつつ、画面の下半分には水面反射を取り入れる。波があるため水鏡にはならないが、それでもカラフルできらびやかな写真に仕上がった。
45ミリ相当 絞り優先オート(F11 10秒) ISO100 WB:太陽光
都市遠景とは、街を俯瞰して撮影することです。太陽光を利用して、光と影を作ったり、ホワイトバランスの調整をして色味を変えながら、一歩引いた気持ちで、都市という被写体を撮影をしてみましょう。