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【路上の撮り方①】 魅力的な被写体があふれる“路上”をドラマチックに!

都市の情景を撮るうえで、路上には魅力的な被写体であふれています。とはいっても、道の種類はさまざまで撮り方もいろいろ。日々何気なく通り過ぎる路上を、どういう風に切り取り素敵な写真にするか、狙い目の被写体から効果的な撮り方までをご紹介します。

 

撮影:永山昌克

 

路上写真のよくある失敗 ×

色味はきれいだが、被写体の存在感や写真自体の印象が弱い

逆光で路上の光景を撮った1枚。被写体がシルエットで描写されているのはいいが、それが重なっているために、ごちゃごちゃした印象だ。また道に奥行きがなく、画面がやや平面的に写ってしまっている。

 

ここが残念 ×

① 道が途中で切れていて構図が中途半端 → 解決法①
② シルエットや影が生かされていない → 解決法②
③  被写体の配置がバラバラで散漫としている → 解決法③

 

主題が何であるかを明確にしてそれをシンプルに切り取ろう

都市の路上は車や通行人であふれ、撮るのが難しい被写体です。何も考えずに撮ると、上の失敗写真のように散漫な画面になり、撮りたいものが何だかわからない写真になってしまいます。

そうしないためには、まずは主題が何であるかを撮影者が明確に意識することです。そして、望遠レンズなどを使ってシンプルにそれを切り取りましょう。単調になるようであれば、光や動きのアクセントを加えます。さらに道路の奥行きを生かせれば、なおよし。写真に立体感が加わります。

 

残念ポイント①道が途中で切れていて構図が中途半端
【解決法①】画面に道の奥まで入れて続く様子を表現する

道を撮るときの基本中の基本がこれ。目の前に奥に伸びる道があるなら、その奥行きが出るようにフレーミングしよう。写真は平面で見るものなので、画面を立体的、かつ奥行きが出るように捉えることはとても大切なことだ。道は奥行きを容易に表現しやすいので、それを生かさない手はない。また、縦位置で撮ることも奥行きを出すのには有効である。

 

撮影:川北茂貴

道の奥まで入れると開放感が出た

明るい道路を背景にすると、イヌを散歩させる人たちのシルエットが画面に浮かび上がった。そして、見通せる範囲内で道路を奥まで入れたことで、開放感も出た。また、400ミリ相当の望遠を使ったことによって車や信号が圧縮されて写り、都市のにぎわいも感じられる。

400ミリ相当 絞り優先オート (F11 1/100秒) -1補正 ISO100  WB:日陰

 

残念ポイント②シルエットや影が生かされていない
【解決法②】シルエットを狙うときは被写体同士の重なりに注意しよう

シルエットは写真に写る情報量を減らして、見る人の想像力を刺激する効果がある。表情や色、質感といったディテールを判別できないことが面白さにつながっているのだ。とはいえ、その輪郭が美しくなければ意味がないので、中途半端な形や被写体の重なりには注意しよう。

 

撮影:鹿野貴司

明るい背景にシルエット描写を置く

街を歩いているときれいな夕焼けに遭遇。高架下に行くと、狙いどおりにドラマチックな光と影があった。そこに通行人が通るのを待ってシルエットで描きつつ、アクセントに入れた。暗部が多い画面なので、明るい背景にシルエットの人物がくるタイミングで撮っている。

34ミリ相当 プログラムオート(F4 1/125秒) -1補正 ISO320 WB:オート

 

影もその形をしっかり見せることが重要

影を撮る際も、シルエットと同様の注意が必要だ。ここでは歩く人の影を逆光で狙い、人物の影が重ならないように、バランスを見ながらシャッターを切っている。そして、逆光で反射する路面のハイライトによって少し明るく写ったので、マイナス0.7補正することで暗部を締めた。

 

残念ポイント③被写体の配置がバラバラで散漫としている
【解決法③】被写体を絞って見せる

都市には被写体があふれていて、どうしても画面が散漫になりやすい。「写真は引き算」というフレーズがあるように、狙いや被写体を絞って撮ると画面がすっきりし、見せたいものを強調できる。画角の広い広角レンズや標準レンズだと被写体を絞るのが難しい状況であれば、積極的に望遠レンズを使って作画しよう。

 

撮影:永山昌克

横断歩道のラインが作り出すパターンの面白さを空間で強調

望遠ズームを使って、横断歩道をハイアングルから撮影。歩行者と自動車の一部分のみを写し、それ以外の空間を白と黒の線で埋めることで、パターンとしての面白さを表現した。

600ミリ相当 マニュアル露出(F5.6 1/500秒) ISO125 WB:オート

 

撮影:永山昌克

望遠レンズの圧縮効果で渋滞の密度感を演出する

渋滞の車列は都市らしい被写体だ。800ミリ相当の超望遠レンズで、極端な圧縮効果を狙った。渋滞で止まっている多くの車が重なり、密度感を演出できた。画面を車だけにしたシンプルな構成によって、強い写真になっている。

800ミリ相当 マニュアル露出(F6.3 1/60秒) ISO200 WB:オート

 

路上の撮影は、どこまでも続く「道」の奥行きを表現することが、ステキな撮影が可能になるポイントです。太陽との位置関係でできる影などを表現すると、ドラマチックな撮影も可能になるでしょう。