都市を一歩引いて見るような写真のことを、都市遠景写真として、ここでは撮影テクニックをご紹介いたします。建物が密集している都市でも、川の対岸や湾などからであれば全景を撮ることができます。
基本テクニック
広角では主題を目立たせるフレーミングを 標準では立体感を出す工夫が必要
形のいい雲が出ていたり、きれいな空が広がったりしているときは、広角レンズを使って空を主題にフレーミングするのがコツ。この際、スケール感を表現するために半分よりも多めに空を入れるといい。基本的に「空7:地上3」だと収まりがいいが、印象深い空なら「空9:地上1」といった割合も効果的だ。
地上「1割」、鉄塔と夕焼け空「9割」、大胆な構図が◎
ドラマチックな夕焼け。西の空を見上げると夕焼けになりそうな気がしたので、被写体として気になっていた鉄塔の前にやって来た。地上は完全にシルエットだったので、ギリギリまで地平線を低くし、広角で空を広く切り取ってそのスケール感を強調。さらに、WBを9000Kに設定して赤みを足した。
24ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/15秒) -1.3補正 ISO100 WB:9000K
雲が主題なのでハイライトを生かした露出にする
池の対岸の景色を撮影していたら、雲がどんどん沸いてきた。そこで、広角18ミリ相当で雲を広く取り入れてフレーミング。逆光下で雲のハイライトを生かした露出にしたことで、迫力が出てドラマチックな仕上がりになった。街並みはシルエット気味の描写だが、都市の雰囲気は十分に伝わる。
18ミリ相当 絞り優先オート(F8 1/800秒) ISO200 WB:オート
応用テクニック①
前景を入れて画面に奥行きを出す
もともと立体的な被写体も、二次元の写真にすると平面的になりやすい。特に遠景の場合は、遠くの景色を切り取ることになるため、前後の距離感があまり生まれずに平面的に見えてしまう。広角でも標準でも前景を生かして遠近感を出せると、景色がより立体的になって浮かび上がってくる。橋や高架、街灯、樹木などを前景として入れてみよう。
額縁構図で単調さや平面感を回避する
建物がアーチ状に開いた場所から、遠くのみなとみらいの高層ビル群をのぞく。額縁構図は視線が自然と奥に誘導されるので、奥行きや遠近感を強調したい場合に有効だ。ここでも平面的な夜景を立体的に描写できた。
27ミリ相当 絞り優先オート(F8 1/250秒) ISO100 WB:太陽光
道路と橋脚で作る額縁構図と光跡のアクセントが決め手
道路の向こうに広がる夜景を主題にして、道路と橋脚で“額縁構図”を作って奥行きを出す。そして、船の光跡をアクセントに動感と彩りをプラスした。
47ミリ相当 バルブ(F11 27秒) ISO100 WB:太陽光
応用テクニック②
意図的に日陰の暗部を取り入れて主題を強調する
応用テクニック1でも述べたとおり、遠景写真を立体的に描くことはとても大切だ。前景を取り入れる以外にも、立体感を引き出せる方法はある。その代表が陰影。陰影に注目すると、明暗のメリハリよって立体感を出せるほか、遠景でも主題を強調した作品にできる。意図的に画面に日陰の部分を取り入れるといい。
陰の部分によって光が当たるマンション群がより際立つ
建ち並ぶビルに夕方の西日が当たる。画面の下半分は日陰なので暗く落ち、ビルが主題であることがはっきりわかる写真になった。また手前の池に中央のビルが反射したことで、シャドー部の存在感も十分伝わる。
22ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/160秒) ISO200 WB:オート
+α
画面に明暗のメリハリがあるとモノクロ描写にも向く
情緒的な路地写真などにはモノクロ描写が似合うが、画面に明暗のメリハリがあると、左の写真のように都市の遠景写真でもモノクロ描写が生きてくる。ぜひ、試してみてほしい。
レンズによって、都市遠景撮影で気にする点は変わってきます。広角レンズですと「フレーミング」。標準レンズですと、「立体感」。それぞれに撮影する印象が変わりますので、明暗を付けた立体感や、広大な空や雲などを配置したフレーミングを気にしながら、撮影してみましょう。