2018ワールドカップ ロシア大会を、約6週間にわたり追い続けた共同通信社の写真記者に直撃。レンズへの思いやビッグイベント撮影の苦労話などをうかがった。日本サッカー史に刻まれるプレーを見せつけてくれた日本代表チームの勇姿から決勝戦まで、あの興奮を写真とともに振り返ろう。
2018.7.16 愛用のヨンニッパで若き才能の躍動感をあますところなく描いた
フランス対クロアチアの決勝戦。フランスのFWエムバペが攻め込むシーンをEF400mm F2.8L IS II USMで捉えた。スポーツはほぼ100%、オートフォーカス(AF)で撮影するが、AF合焦スピード・精度ともに素晴らしく、描写面も解像力・コントラストともに申し分がない。手ブレ補正機構ISは露光中のみ補正する「モード3」に設定。違和感なく選手を追うことができる。EOS-1D X Mark II のAFカスタム設定ガイド機能は通常「Case1」だが、サッカー撮影では「被写体が急加速/急減速するとき」の「Case4」に設定している。
キヤノン EOS-1D X Mark II EF400mm F2.8L IS II USM 絞りF2.8 1/1600秒 ISO1250 WB:オート
初めてのワールドカップ撮影 使い慣れたレンズを選んだ!
サッカーのワールドカップともなれば世界中からカメラマンが押し寄せる。撮影ポジションは決められ、途中の移動もままならない。そうなれば、やはり超望遠ズームが第一の選択肢だろうか?
「検討はしました。ですが、その画角が身体にしみ込んでいるEF400mm F2.8L IS II USMのほうを選びました。念のため、予備としてEF300mm F2.8L IS II USMも用意し、あとは広角、標準、望遠と大口径ズームレンズで揃えました。大舞台だからこそ、の使い慣れたヨンニッパです。われわれもチームで臨むわけですしね」
こう白い歯を見せた大森裕太さん。Jリーグ撮影を数多くこなし、長期の海外取材は米メジャーリーグを追い続けた経験もあるが、サッカーW杯に挑むのは今大会が初めてだった。
「ヨンニッパはキレのある描写、ビシっと素早く正確に合うAF、実用的な手ブレ補正機構や便利なフォーカスプリセット機能、さらには堅牢性の高さなど、普段から使い慣れていて、なおかつ信頼の置ける1本。ズームのメリットを否定するつもりは毛頭ありませんが、自分はこっちが “しっくり” くるのです」
今回、共同通信社は全7名での写真記者体制をとった。日本戦は6人で撮影に臨み、交代で1人が日本のベースキャンプ地カザンを担当。大森さんは第一陣として同僚と2人で直前合宿地のオーストリアに入り、取材をスタート。大会開幕の前日にロシア入りし、コロンビア戦、ポーランド戦、ベルギー戦の “SAMURAI BLUE” の戦いを撮影したあと、仲間3人と決勝戦まで取材を続けた。
EF400mm F2.8L IS II USMは性能に信頼の置ける心強い相棒レンズだ!
70-200mmなどと組み合わせてあらゆる距離に自在に対応できる
今回のサッカーワールドカップ撮影で迷わず選んだのがEF400mm F2.8L IS II USM。「もし(被写体が)遠かったらエクステンダーを装着すればいいし、選手が近づいてきたらEF70-200mm F2.8L IS II USMに持ち替えればいいですから」と言い切った大森さん。念のため、EF300mm F2.8L IS II USMも用意したが、「9割5分以上はヨンニッパで撮りました」。
動画で見る! 大森さんの EF400mm F2.8L IS II USM 使いこなし術
すべてを支えてくれる一本
描写、AF、操作性が非常に高いレベルでバランスしているEF400mm F2.8L IS II USM。ほかにもボディとの重心位置の良さ、シャッター4段分の手ブレ補正機構、防塵・防滴構造など、本当に頼りになる。政治ネタ、事件・事故などでも愛用。
操作性が良く便利なフォーカスプリセット
例えばゴールキーパーにフォーカスプリセットを設定しておけば、選手たちの激しい動きなどでAFが迷ったときなど、レンズをキーパーに向けて再生リングをカチッと回せば、一気にキーパーにピントが合う。AF復帰の手助けにも使えるのだ。
写真記者を支えてくれるリモコン撮影
スポーツ大会などで今やリモコン撮影は珍しくないが、電波が干渉しないように事前に主催者側に申請するなど、セッティングはそれなりに手間がかかる。「自分で撮ったという感覚がないに等しいので好きではない」カメラマンが多いものの、記録としては有効だ。