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【コスモスの撮り方①】前ボケ撮影で、コスモスらしいふんわり感を出すテクニック

コスモスの開花時期は、6月から11月と長く楽しめます。大まかに分類すると、夏咲き、秋咲き、早咲きと、開花時期の違う3種類のコスモスがあります。ですが、一般的なコスモスの開花時期は、9月から11月の秋。コスモスはきれいな形をしているのでアップで写したり、ピンク色のコスモス畑を広く捉えたりと、さまざまな狙い方が可能です。かわいらしく乙女チックなコスモスの撮影方法や雰囲気のある一枚を撮るテクニックなどをご紹介いたします。

 

 

コスモス写真でよくある失敗×

コスモス畑を広く写しただけのただただ単調な写真

広大なコスモス畑を広く捉えているが、画面のポイントがなくて単調だ。コスモスは薄い花びらなので光を透過しやすいが、曇天のためその辺も生かされていない。

 

ここが残念×
①手前のボケが中途半端でごちゃごちゃしている→解決法①
②光がフラットなのでメリハリに欠ける→解決法②
③写真として見せたいポイントがない→解決法③

 

茎が細いので風の影響を受けやすい。被写体ブレとピントのズレに注意しよう

コスモスは、黄色やオレンジの花を咲かせるキバナコスモスと、ピンク色の一般的なコスモスとは別種なので開花期が異なります。キバナコスモスは8月下旬から9月、コスモスは10月上旬がピークです。秋が深まるにつれ、一日を通して太陽が低い位置から差し込むので、順光と逆光がはっきりします。光の違いを見極めながら写すのがコツです。ただ茎が細く、花は広がっているので風の影響を受けやすい花です。花が揺れることによって生じる、被写体ブレとピントのズレには特に注意しましょう。

 

残念ポイント①手前のボケが中途半端でごちゃごちゃしている
【解決法①】前ボケを生かすときは手前の花に近づきつつ、奥のコスモスにピントを合わせる

コスモス畑の広がりや奥行きを出しつつ、画面を単調にしないためには前ボケを取り入れるのが有効だ。その際、前ボケは主役と離れるほど大きなボケとなるので、遠くの花畑だけを切り取るのではなく、手前の花が入るようにポジションを下げる。そして、手前の花に近づきつつ、ピントを奥の花々に合わせれば◎。奥行きとやわらかな雰囲気が出せる。

 

斜面を見上げれば奥行きが生まれ、奥にピントを合わせると前ボケもできる

小高い丘に広がるコスモス畑の奥行きを出すために斜面を見上げ、高いところの花にピントを合わせ、手前の花をぼかした。奥の花にピントを合わせると密集した部分を主役にでき、また花が少ない手前の部分も隠せた。

300ミリ相当絞り優先オート(F5.61/160秒)+3補正ISO200WB:曇天

 

残念ポイント②光がフラットなのでメリハリに欠ける
【解決法②】コスモス畑を撮る場合は順光ではなく逆光で撮るのが基本

順光でコスモス畑だけを切り取ると、光がベタッとして平面的に写りやすい。周囲の風景まで取り入れて画面に変化をつけるか、逆光で狙いたい。逆光ならコスモス畑だけを切り取っても花が透けて輝くので、立体感が出せる。コスモスをアップで狙う場合は、順光でも逆光でもそれぞれによさがあるので狙いやすい。

 

順光

 

逆光

花をアップで狙うなら順光でも逆光でも◎

アップなら花同士の距離感があるので、順光でも平面的に写ることはない。晴れていれば青空を背景に、爽やかな写真になる。コスモスは太陽を向いて咲く傾向があるので、逆光だと後ろ向きになりやすい。ここでは夕暮れの光を透過し、主役も脇役も背景の花々も輝きを感じる。

 

逆光

透過光によって花びらが輝いて陰影がつく

逆光は花びらが透過して輝き、陰影のある写りになる。花畑の一部分だけを切り取っても平面的にならず、立体感が出た。そして、その輝きをきれいに見せるため、ここではプラス1.3の露出補正を行って明るく仕上げている。

300ミリ相当絞り優先オート(F2.81/2000秒)+1.3補正ISO200WB:晴天

 

残念ポイント③写真として見せたいポイントがない
【解決法③】コスモス一輪に狙いを絞るほかにも、作画ポイントは作れる

コスモス畑全体かアップで一輪だけを写すという狙い方以外にも、背の高い群生を狙ったり、コスモス畑の色の違いに注目したりしても、画面にポイントを作れる。これは広大な花畑を作り出すコスモスならではの狙い方だ。ただし、色の差やボケで包むなど、工夫をしないとそれらのポイントを目立たせることは難しい。

 

色の違う部分にピント

黄色とオレンジ色のキバナコスモスが隣り合わせに咲いていた。色が違えばそこに区切りができ、画面のポイントになる。ピントはオレンジの花に合わせ、黄色はぼかす。色の差とボケの差の両方を利用してオレンジを主役にした。

340ミリ相当絞り優先オート(F3.51/1600秒)+0.7補正ISO200WB:日陰フィルター機能:ファンタジックフォーカス

 


背の高い群生を主役にする

花畑の面を真横から見ると、少し飛び出した丈の長い花の群生を見つけることができた。複数の花々をひとかたまりとして捉え、群生を主役にする。背景が同じコスモスなので、前後にボケを作ることで見せたい部分だけを強調した。

300ミリ相当絞り優先オート(F5.61/160秒)+3補正ISO200WB:曇天

 

秋桜と書いてコスモス。秋にかわいい姿を見せてくれます。細い茎で、風にたなびくコスモスは、風を感じる柔らかな印象の一枚に仕上げたい。そんな時は、手前の花に近づいて撮影する前ボケや太陽光を利用してみましょう。

 

写真・解説/吉住志穂