雨の日の水溜まりや海、池、ガラスやクルマなど、街の中は映り込みの宝庫だ。映り込みをスナップに生かすことで、これまでとは一味違う写真が撮影できる。目を凝らして映り込みを探してみよう。
街中のガラスを意識して幻想的な二重世界を映す
スナップで映り込みを生かすなら、ガラスの反射が狙いやすい。街にはショーウインドーやビルの窓など、映り込みしやすいガラスがたくさんあるからだ。実像側の背景が暗く、映り込ませる側が明るいと、はっきりした映り込みが演出できる。
ポイントは、実像と映り込みのバランス。特に映り込みは、何が映り込んでいるかがわかると、二重世界のような幻想的な写真を作りやすい。映り込ませる景色は変えられないので、どの位置から撮るのがベストか、最適なアングルや切り取り方を考えるのがコツだ。また、モノクロにしたり、ホワイトバランスを選択することで、よりいっそう幻想的な世界が演出できる。
映り込みと実像をバランスさせ幻想的な世界を作り出す
映り込んだ人物にピントを合わせる
ブリュッセルのビアカフェの店内。大きなガラスがありメニューが書かれている。男性がメニューを見ようとそのガラスに近づく。映り込んでいる男性にピントを合わせ、メニューの文字の間から目が見えた瞬間を捉えた。
ニコン D800 AF-Sニッコール85ミリF1.8G 絞り優先AE F1.8 1/50秒 ISO400 WB:晴天
マネキンと映り込みの空を多重露光のように表現
ショーウインドーのマネキンの手と明るい雲が印象的だった。多重露光のような二重世界を表現するため、暗い背景に浮かび上がる手と、映り込んだ建物と雲のバランスを重視。深みのある作品を意識し、モノクロに仕上げた。
シグマ DP1 Merrill 絞り優先AE F2.8 1/400秒 -0.3補正 ISO100 WB:オート
ビルに映り込むビル風景が青空に映える
快晴の青空。光が強く、ガラス張りのビルに向かいのビルが映り込み、まるでスクリーンに投影されているようだ。ビルは湾曲しているので、丸みが感じられるようにフレーミング。ビルの中にビルがある不思議な写真になった。
パナソニック LUMIX GX8 ライカDGズミルックス15ミリF1.7 ASPH. 絞り優先AE F8 1/160秒 -0.7補正 ISO200 WB:オート
水面の揺らぎが映り込みを油絵のように演出する
雪解け水による透明度の高い池に、脇を歩く人たちが映り込む。実像は少なくし、揺らぐ水面をクローズアップすることで、映り込みを油絵のように表現した。また右下に白い魚が来たので、アクセントとして入れている。
オリンパス OM-D E-M1 Mark II M.ズイコーデジタルED 12~100ミリF4.0 IS PRO 絞り優先AE F5.6 1/100秒 -1補正 ISO200 WB:オート
写真・解説 藤井 智弘