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【ウメの撮り方①】枝の露出が高い梅の撮影テクは、“背景”の色味にこだわること。

花が少ない冬の時期に、小さな花を咲かせるウメ。開花期は地域によって大きく異なり、温かな沿岸部では1月下旬から、平地では本格的な春を前にした2月中旬から3月に開花します。紅やピンク、白などが主流で、公園や梅園など多くの場所で見ることができます。被写体としてもかわいらしくて最適です。

 

 

写真でよくある失敗 ×

グレーで散漫した背景が写真を台無しにしている
ボケ、色、写り込んでいるものなど、背景の処理がうまくいってない。ボケが弱くて主役が目立たず、色がグレーで暗い。背後の枝や花も目障りである。

ココが残念
① 背景の枝のボケがうるさくて画面が散漫 → 解決法①
② 背景の色が薄暗くて華やかさに欠ける → 解決法②
③ 画面に流れがなくて平凡な写真 → 解決法③

 

サクラに比べて花のつきが少ないので黒い枝が見えやすくて処理が難しい

ウメは小さくてかわいらしい花ですが、黒い枝が入るので、背景の処理に苦労します。同じ木の花でも、サクラに比べて花のつきが少ないぶん、枝が露出しやすいのです。また、複数の枝が入る場合は方向をそろえ、一定方向への流れを作ると、まとまった画面になります。撮るのが難しい花ではありますが、身近な花なので挑戦してみてください。

 

残念ポイント① 背景の枝のボケがうるさくて画面が散漫
【解決法①】クローズアップはわずかなポジションの変化で背景に入るものが変わる
主役選びはとても重要だが、それと同じくらい大切なのが背景選びだ。背景の色はもちろん、何が入るかで全体の印象が変わる。遠くの風景を撮る場合、1~2歩ポジションを変えただけでは背景が変わることはないが、写る範囲が狭いクローズアップ撮影では少し位置を変えると背景に写るものも変わってくる。主役も背景も合わせて見ながらポジションを決めよう。

 

      

茶色い枝の有無ですっきり感が変わる
どちらも青空を背景にウメをぼかしているが、左は茶色く直線的なボケなのでうるさく感じられる。ポジションを少し下げて、アングルはより上向きにしつつ、わずかに左にずれた。すると茶色いボケの部分はカットできすっきりした。

 

 

残念ポイント② 背景の色が薄暗くて華やかさに欠ける
【解決法②】主役に色があるより、背景に色があるほうが華やかに仕上がる
ウメには大きく分けて白と紅があり、紅いウメを主役にするほうが色があるので目立つ。しかし、ウメは小さく、背景の面積が広くなるので、色のある背景のほうが華やかに仕上がる。そこで、紅いウメを背景にしてみよう。さらに、主役が白、背景が紅だとより際立つ。主役も背景も紅いときは、ボケを生かして目立たせよう。

 


主役は紅いウメで、背景は白いウメをぼかしている。光を感じられてきれいだが、背景が白なので少々彩りが乏しい印象だ。

 

白いウメと紅いウメの背景ボケ、色が違うので主役が目立つ
主役は白いウメ、背景は紅いウメ。最も華やかに仕上がる色の組み合わせだ。色の差があるので主役の白いウメが引き立つし、背景を紅いウメのボケが白いウメを覆っているので、色どりが美しい。

 

主役も背景も同色なので、大きくぼかして主役を引き立てる
全体に彩りがあって美しいが、主役も背景も紅いウメなので、色の差がないぶん主役が目立ちにくくなる。シャープとボケの差をつけて背景から主役だけを引き立たせたい。ここでは、 120ミリ相当の望遠域を使って開放F2.8で背景をぼかした。

 

 

残念ポイント③ 画面に流れがなくて平凡な写真
【解決法③】枝の流れは垂直やバラバラではなく、斜めに統一してすっきり感を出す
直線的な枝は視線を誘導して画面に流れを作り出し、それが一定方向に整っているとすっきりする。逆に枝がごちゃごちゃしていると、見る人の視線もバラバラになって散漫感が出る。ウメのような木の花は枝の流れも考えてフレーミングしよう。

 


枝の流れがバラバラだ。枝に沿って視線は流れるので、枝があちこちを向いているのはごちゃごちゃするだけ。もう少し画面を整理して見せたい。

 

右下から左上への流れを意識して枝をフレーミング
枝が右下から左上への流れを作り出している。背景もぼけてはいるが、同じ流れを感じさせる。また、画面の水平、垂直よりも対角方向への枝の配置は、画面を広く使っていることでより大きな流れを感じさせる。そして、枝は幹を中心に外側へと伸びていく。そのため、枝先の花を横からねらうと枝の方向が揃いやすい。

300ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/640秒) +3補正 ISO400 WB:オート フィルター機能:ファンタジックフォーカス

 

 

写真・解説/吉住志穂