中村文夫の古レンズ温故知新「EBC FUJINON SW 28mm F3.5」
富士フイルムがフォーカルプレン式一眼レフ市場に参入したのは1970年。最初の製品はフジカST-701でレンズマウントはねじ込み式のM42。レンズのコーティングは単層だったが、2年後にフジカST-801が登場した際、マルチコーティングを施したEBCフジノンが登場する。
SWはスーパーワイドの意味。発売当時、28mmは超広角扱いだったが、後にSが取れてWだけの刻印になった。
逆光に強いEBCレンズはデジカメにも最適
EBCは「Electronic Beam Coating」の略で、電子ビームを利用して反射防止膜を形成。11層のコートで1面当たり0.2%以下の反射率を実現した。これ以降EBCは富士フイルム製レンズの代名詞になり、現在のデジカメ用レンズにもスーパーEBCの刻印がある。
あまり知られていないが富士フイルムは光学ガラスから一貫して生産していた数少ない光学メーカーのひとつ。光学設計の技術力も高く、実は名玉の宝庫なのだ。なかでもEBCレンズは逆光に強くデジカメにも最適。製造本数が少なく店頭ではあまり見かけないが、値段は意外と安く、オススメのブランドと言えるだろう。
マウントはM42だが、ST-801の開放測光に対応するため絞り環に突起がある。マウントアダプターの中にはこの突起が邪魔をして取り付け不可の製品も。その点レイクォール製アダプターは突起の逃げが設けてあるので安心だ。
デジタル補正なしでディストーションがほぼ完璧に補正されていて、建物の直線が正確に描写された。ハイライト部にわずかなフレアが見られるが、コントラストの低下はなくEBCの威力が存分に発揮された。
ソニー α7R F3.5 1/60秒 +0.7補正 ISO5000 AWB
〈文・写真〉中村文夫