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「花風景」は曇りや雨のほうが美しく撮れる!? 写真で見る晴天時と雨天時の違い

初夏を彩る野山や公園の花々たち。そのままでも色鮮やかで美しいが、雨露や朝霧などでしっとりと濡れるとより美しく見えてくる。せっかくの梅雨の時期。潤いを生かすことでより美しさが増す花風景を狙ってみよう。

 

水の潤いを生かして初夏の花風景を美しく撮ろう

初夏になると、ツツジやクリンソウ、ポピーなど、カラフルな花が野山や公園の花畑を彩ってくれる。ニッコウキスゲのように広々とした高原一面を彩る花であれば、晴れた日に山や湖などを背景に撮影するという方法もある。しかしそれ以外となると、晴れていると一見美しく見えるが、写真にすると見た目以上に明暗差が強く出て、まだらであまり美しくない写真になってしまうことがある。スポット的に花を照らす光を生かしたり、逆光で透過光を狙うなど、光の効果をうまく生かす方法で撮ることはできても、花の色を引き出すのとは少し違ってくる。

一方、曇りや雨の日は光が柔らかく、花を均一に照らしてくれる。木漏れ日やほかの花の影が目立つこともなく、全体を優しい色合いで捉えることができるのだ。とりわけ露をまとったり雨が降ると花や新緑がしっとりと濡れて、艶やかな花色に仕上がる。テカリが出ることがあるので、PLフィルターを調整し、花や葉の色を出したり、雫の反射をうまく生かすようにしたい。

また、森の中は光が弱く、シャッター速度が遅くなりやすいので三脚を使ってブレを防ぐことも大切だ。そして風が吹くと草や花が揺れて被写体ブレを起こすため、風が止むタイミングを待ってシャッターを切るようにしたい。低感度でブレてしまうより、ISO800程度に感度を上げて、被写体ブレを防いだほうが好結果が得られる。

<作例>

雨に濡れたレンゲツツジの花や葉が美しい夏の彩りを見せてくれる

新緑の湖畔に咲くレンゲツツジ。濡れた花や新緑はテカってしまうため、PLフィルターで反射を取り除いて撮影した。雨に濡れた新緑は瑞々しく、レンゲツツジの花色も潤いがあって艶やかだ。

ニコンD700 AF-S ニッコール24-70mmF2.8G ED 絞り優先オートF11 1/5 秒 ISO200 WB:晴天 三脚使用 (撮影地/長野県佐久穂町駒出池)

 

晴天時と雨天時の違い

<晴天時と雨天時の違い①>

晴天時は光の当たり方で花の色がまばらに

晴天時は、花の向きによって明るい花と暗い花が出てきてしまう。光が当たった所は花色が白っぽくなり、影の部分は暗くなりがちだ。一方、雨の日は光が柔らかいため強い影は出ず、雨に濡れたツツジは艶やかな深みのある色合いになる。オレンジ色と緑色とが美しく調和した仕上がりとなった。

【雨天時】

 

【晴天時】

 

<晴天時と雨天時の違い②>

晴天時は木漏れ日が森の奥深くまで差すので写真の中に強い明暗差が生まれる

森の中の水辺に咲くクリンソウ。晴れた日には、樹上から差し込む木漏れ日によって、背景の一部分が明るく照らされたり、花も光が当たっているものと当たっていないものが出てきてしまう。その点雨の日は、風景全体が均一な柔らかな光に包まれ、花の色も優しい紫色が引き出せる。雨に濡れて草花がしっとりするのも魅力だ。

【雨天時】

 

【晴天時】

 

次回はより具体的なテクニックについて解説する。