機材レポート

ファームアップで実装された「ニコン Z 6」の瞳AFの実力は? 様々なシーンで検証

「瞳認識」について、前回のソニー「α7 III」引き続き、今回はニコン「Z 6」をチェックしていこう。ニコンZ 6やZ 7は、登場時は瞳認識を搭載していなかったが、ファームウエアがVer.2.0(2019年5月16日公開)から対応するようになった。ほかにも高速連写拡張モードでAFだけでなく、AEも追従できるようになるなど機能は大幅アップ。ファームアップをしていない人は、ある意味損をしていることにもなる。パソコンとネットがあれば簡単に自宅で処理できるので、対応しておこう。そういうのが苦手、という人は時間のあるときにサービスセンターに駆け込むと良いだろう。

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①どのくらいから瞳AFが効く?

はじめにチェックしたいのは、前回と同じ、どのくらいで瞳認識が効くようになるのか、画面における人物(顔)の大きさのチェックだ。

Z 6では、顔認識、瞳認識、ともに黄色の枠で表示される。瞳認識時にはその枠の横に三角が表示されることがある。その三角形は「もう片方の目もちゃんと認識している」という意味で、逆の目に合わせたい場合は十字キーでその三角形の差す方向を指示すれば変更することができる。

瞳AFを有効にすれば、顔認識から瞳認識の表示切り替えは自動的に行われる。両方の枠が同時に表示されることはない。効いていれば、ソニーα7 IIIと同じように画面上に黄色い枠がひとつだけ表示されるシンプルなタイプだ。

<「瞳」認識枠例>

 

<「顔」認識枠例>


▲枠は黄色い正方形の細枠が表示される。瞳認識が効いている場合は、顔認識よりもひとまわり小さな枠が瞳に表示され、逆の目も認識している場合はその横に三角マークが表示される。

 

では、始めに画面上で顔の占める大きさがどのくらいから顔認識から瞳認識に移行するか実験してみた。前回のソニーα7 IIIとはだいぶ異なり、横位置でウエストアップよりちょっと離れたくらいの近距離での認識となる。左右の目でピントが異なる場合、実用上はこのくらいの距離であれば必要十分かなという印象だ。

 

<「瞳」認識枠に変化したときの大きさ>

 

<「瞳」認識枠に変わる直前の「顔」認識枠の大きさ>


▲左右の目のピントの差が出るとすれば、まあだいたいこのくらいから効いていれば実用上問題ないか、という大きさだ。なお左右の判断の誤認識は少ない。今回の条件では、その切り替わったタイミングを数値化するべく、短辺(画面上下)を1として頭の大きさ(頭の先からアゴ先まで)の比を求めたところ、1:0.248。もっとわかりやすく言えば、顔の大きさが短辺の約1/4弱の長さで反応する、という感じ。もちろんこの辺りは条件によっても前後する部分なので参考値としておきたい。

 

②回転や前後の動きへの対応

次に、Z 6の測距点がどの様に追従するのか、人物が動いていく流れのなかで、その動きを見てみることにする。撮影条件などは前回と同じで、70-200mm F4のレンズを用い、200mm絞り開放、AF-Cで撮影。動きのパターンとしては、手前で左右の回転を2回ずつしてもらって、そのまま一度カメラから遠ざかってもらい、さらに、腰くらいまでの引きカットに遠ざかったら戻ってきてもらうという一連の動きになる。

<測距点の推移をチェック>

Z 6の場合、正面気味の場合は瞳認識枠の表示が多く、外れた場合は顔認識枠、それで対応できない場合は自動検出の長方形の赤枠となる。レスポンスは比較的速く、食いつきも良い。左右の認識も微細な条件でも比較的機敏に合わせにいく。また、後ろ姿でも人物中心に合わせにいってくれている。迷うような動作が少ない印象だ。こちらに向かってきているときはピントを外したカットはなかった。

クルッと回転する動作でのピントは?

回転振り向きシーンでの実写カット。最初の食いつきは微妙だが、数コマで手前の目に的確にピントはきてくれている。高速連続撮影の拡張モード(最高約12コマ/秒・12bitRAW)で撮影しているが、連写速度も速いが、食いつきも速いといえる。ちなみにVer2.0からこのモードでのAE追従も可能になっている。

<撮影カット一覧>※すべての画像はCAPA CAMERA WEBでご覧いただけます

 

<拡大>

左右のチェンジ動作

Z 6は瞳認識が効く場合、左右の任意の目に合わせることができるようになっている。Z 6、また上位機種のZ 7では瞳認識枠の横に三角マークが出て、十字キーの操作でその方向に移動することができる。繰り返しになるが、この機能はファームウエアVer.2.0からなので、それ以前のファームウエアでは表示されない。

 


▲Z 6の場合、左右変更の手続きは非常に楽で、三角マークが出ていればその方向に従って十字キーの左右で対応すればOK。今回テストした4機種中最も簡単で明確な変更手段といえる。

 

③様々なシーンへの対応

次に、髪がかかってしまった場合、あるいは眼鏡をかけている場合など、様々なシーンでチェック。ポイントとしてはどこで顔認識、瞳認識に移っていくのかを見てみたい。撮影条件は同じく70-200mmF4のレンズを用い、引いているときは70mm、アップの時は200mmでそれぞれ絞り開放、AF-Cで撮影している。

髪のかかるシーン

顔が見えていない横顔状態では髪の辺りの自動認識枠が赤く点灯する。顔が見えてきて、手前の目が隠れている状態では、瞳認識に移行。最初は奥の目に合っているが、矢印も出ていて左右の認識もしているので、逆の目も認識しているのがわかる。髪を直した後は問題なく手前の目に瞳認識枠が表示される。


▲髪はかかっているが手前の目に測距点が表示されたときに撮影したカット。ピントの精度は高く、かっちり手前の目にピントがきている。ピント精度が高いだけに測距点の捕捉確認、これはしっかりしておきたい。

 

眼鏡のシーン

引いた状態(70mm)で眼鏡をかけてもらったが、かけるアクション中は瞳認識から顔認識に変化するものの、ピントはしっかり顔を捉えている。手を下ろすにしたがい、瞳認識に即移行した。アップ(200mm)では正面気味では瞳認識されていたが、横を向くに従い顔認識に移行。ここまでは瞳にピントが来ていたが、途中で自動認識枠に移行し、このときは眼鏡フレームに合ってしまった。

<70mmで撮影>

<拡大>

 

<200mmで撮影>

<拡大>


ノンコートの伊達メガネのために周囲の反射が激しく、ピントを合わせづらい状況。ただ瞳認識表示時、顔認識表示時には、70mmでも200mmでもきちんと睫毛にピントが合っている。瞳、顔とも認識されないときは眼鏡フレームに位相差検出枠が出て、手前の眼鏡フレームにピントが合ってしまっている。

 

モデル/朝倉璃奈(ABP Inc.)