機材レポート

キヤノンの本格派コンデジが華麗にイメチェン! スタイリッシュな実力機「PowerShot G5 X Mark II」レビュー

1.0型CMOSセンサーを搭載するコンパクトデジタルカメラ、キヤノン「PowerShot G5 X」がモデルチェンジ。「PowerShot G5 X Mark II」(以下、G5 X Mark II)が登場した。今回は従来機との比較や実写を交えつつ、レビューしていく。

▲2019年8月発売のPowerShot G5 X Mark II。キヤノンオンラインショップでの価格は税別10万5000円

 

G5 XとG5 X Mark IIを比較――同じEVF搭載機でも異なる雰囲気に

従来機・G5 Xと新モデルG5 X Mark IIを見比べると、デザインが大きく変わったことに気づく。G5 Xはまるで一眼レフのようなスタイルであるのに対し、G5 X Mark IIは上部がフラットになった。またG5 Xには装備されていたボディ前面のダイヤルも省略された。G5 Xは個性的な形で本格派のイメージだったが、G5 X Mark IIはオーソドックスなコンパクトデジタルという雰囲気だ。

▲左がG5 X、右がG5 X Mark II。同じG5 Xシリーズとは思えないほど全く異なるデザインだ。G5 X Mark IIはいわゆるコンパクトデジタルらしい形をしている。

 

EVFはG5 Xが固定式で大型のアイカップを備えていて、それもG5 Xの大きな特徴と言えた。G5 X Mark IIではポップアップ式のEVFになった。ポップアップしたらアイピースを引き出すタイプで、これはソニーのRX100III~RX100Vと同様のスタイル。RX100シリーズではEVFを格納すると電源がオフなるが、G5 X Mark IIはオフにならず、電源は電源ボタンのみの操作になる。EVFは236万ドットの有機ELを採用し、視認性は良好だ。決してオマケのEVFではなく、実用性はとても高い。さらにポップアップ式にしたことで、G5 Xから約37gの軽量化も実現している。持ち比べてみると、確かにG5 X Mark IIは軽い。フラットなデザインはバッグに収納しやすく、しかも軽くなったことで、より携帯性に有利になったのを感じた。

▲ポップアップ式のEVFを持つのが特徴。側面のレバーを下げるとポップアップする。

 

▲ポップアップしたら、アイピース部分を引き出す2段式。EVFは明るい屋外でも見やすく、スローシャッターの際もしっかり構えられる。

 

G5 X Mark IIは、G5 Xと同様に大型のグリップを持つ。指がしっかり掛かって、小柄なボディでもホールドしやすい。しかも背面にも親指が掛かりやすいため、安定して構えられる。背面モニターを見ながらの撮影はもちろん、EVF使用時にも高いホールド性は嬉しい。

▲背面モニターはチルト式のタッチパネル。ローアングルやハイアングルでも撮影しやすい。

 

レンズの付け根には機能の割り当てができるコントローラーリングを装備する。G5 Xも同様だが、クラシックレンズのピントリングを思わせるデザインになった。カメラらしさがあり、手にする愛着感が増しそうだ。しかもリングを回すと、G5 Xにはなかったクリックが追加されたのに気づく。例えば絞り優先AE時にコントロールリングで絞り値を変える場合、クリックがないと何段動かしたのかわかりづらい。クリックがあればどれだけ動かしたか掴めるので、非常に使いやすくなった。

▲レンズはF1.8-2.8の明るさを持つ24-120mm相当(35mm判換算)。コントロールリングはクラシカルなデザインで、カメラ好きの心をくすぐること間違いなし。クリックが追加されて使いやすくなった。

 

撮影モードや露出補正もダイヤル、背面にもコントローラーホイールを持つなど、ダイヤル操作が中心なので「自分で操作している」感覚が味わえるのも特徴だ。

▲モードダイヤルと露出補正ダイヤルは同軸の2階建て仕様。

 

▲コントローラーホイールによりスムーズなスクロールが可能。各ボタンも大きく押しやすい。

 

▲各ボタンやコントロールリング、コントローラーホイールはカスタマイズが可能。自分が使いやすいG5 X Mark IIに仕上げられる。

 

▲内蔵ストロボはワイド側で約0.5~7.5m、テレ側で約0.5~4.5mの調光範囲をもつ。

 

▲端子はUSBとHDMI。USBは今や標準になりつつあるType-Cだ。

 

▲Bluetoothのワイヤレスリモコン、BR-E1に対応。G5 X Mark IIとペアリングすれば、撮影や動画録画からAF、ズーミングまでリモート操作が行える。

 

▲ワイヤレスリモコンBR-E1との接続は、Bluetooth機能の画面から行う。

 

【実写編】気軽なスナップから本格的な撮影まで臨機応変に対応

レンズは24-120mm相当のF1.8-2.8。G5 Xは24-100mm相当だったので、望遠側がわずかに伸びた。本格的な広角域から中望遠までカバーするため、一般的な撮影なら十分対応できる。また望遠側の最短撮影距離も20cmと短く、望遠マクロ的な使い方も可能だ。

撮像素子は1.0型の有効2010万画素。G5 Xも1.0型の有効2020万画素だが、G5 X Mark IIは積層型CMOSセンサーを搭載。画素領域と回路領域のチップがそれぞれ独立しているため、高画質化と高機能化が実現されている。実写した結果も解像力が高く、1.0型とは思えないほど高精細だ。

またレンズの描写性能の高さも見逃せない。絞り開放からズーム全域で解像力が高く、画面周辺でも甘さが少ない。2段ほど絞るとさらに解像感が増す。逆光にも強く、フレアやゴーストが出にくいのも好感が持てた。高感度も強く、ISO800まではほとんどノイズ感がない。ISO1600から高感度らしい写りになるが、ISO3200でも実用的。拡大しなければ最高感度のISO12800でも自然な写りだ。暗所でも安心して高感度が使える。

以下、さまざまなシーンで実際にG5 X Mark IIで撮影した写真だ。

<作例1>

ワイド側24mm相当。建物の細部までシャープに描写されている。また太陽が画面に入る強い逆光だが、フレアは少なく、ゴーストもわずかに発生しただけだ。

 

<作例2>

テレ側で絞りF2.8開放。コンパクトデジタルとしては大きな1.0型は、ボケを活かした写真も撮れる。

 

<作例3>

ズーム全域で最短撮影距離が短いので、被写体に近づいた状態でもズーミングで画面を切り取りやすい。壁や植物の質感もよく再現されている。

 

<作例4>

ワイド側の最短撮影距離は、レンズ先端からわずか5cm。広角らしい遠近感と、絞り開放によるボケを狙った。

 

<作例5>

ガラス越しだがAFは迷うことなく、スピーディーに合焦した。

 

<作例6>

夕暮れの光と自転車の影に惹かれて、急いでバッグからG5 X Mark IIを取り出して撮影した。小型で携帯性に優れているので、撮りたいシーンにすぐ対応できる。

 

<作例7>

NDフィルターを内蔵。スローシャッターにして水の流れを強調した。

 

<作例8>

ISO3200で撮影した。拡大すると高感度らしいノイズ感はわずかにあるものの、十分実用的な画質だ。

 

RAWに関して、ファイルサイズが小さいCRAWや、RAWで30コマ/秒の連写ができるRAWバーストモードなど、普段からRAWで撮影している人にも魅力的な機能を備えるなど、本格的な撮影にも対応できるG5 X Mark II。EVFも装備し、手軽に持ち歩けるので、いつでも作品撮りが楽しめる。日常のスナップはもちろん、機材をコンパクトにしたい海外旅行にもおすすめだ。またデジタル一眼レフやミラーレス機のサブカメラとしても活躍できるだろう。

▲30コマ/秒の高速連写で撮影し、RAWで切り出しができるRAWバースト。動画の切り出しに近い操作だ。

 

▲小さいファイルサイズでRAW記録ができるCRAWが選択可能。大量の撮影をしたい人や、メモリーカードの容量が少ない場合にありがたい機能だ。