京都と大阪、どちらも歴史のある大都市だが、鉄道に関する共通点として、いずれの町にも路面電車が残っていることが挙げられる。京都には京福電気鉄道(通称「嵐電」)の嵐山本線(四条大宮駅と嵐電嵐山駅を結ぶ)と北野線(本線の帷子ノ辻駅と北野白梅町駅を結ぶ)があり、大阪には阪堺電気軌道(通称「阪堺電軌」)の阪堺線(恵美須町駅と浜寺駅前駅を結ぶ)と上町線(天王寺駅前駅と住吉駅を結ぶ)があり、地元の人に親しまれている。
いずれの路線も撮影スポットは沿線にたくさんあるが、ここではランドマークとなる神社仏閣やビルなどを絡めて撮れる場所を紹介したい。嵐電は古都である「京都らしさ」を、阪堺電車は活気のある街「大阪らしさ」を感じさせる写真に仕上げてみよう。
1.広隆寺楼門前を走るレトロな路面電車(京都・嵐電)
京都市西部を走る「嵐電」こと京福電気鉄道。沿線には有名寺院がいくつもあるが、寺の建物と路面電車を組み合わせて撮れる撮影スポットは太秦の広隆寺だけだろう。この京都最古の寺院である広隆寺楼門の前にある併用軌道区間を嵐電の電車が走る。太秦広隆寺駅を降り、南側に線路を渡った信用金庫前が撮影ポイント。左手から来る上り電車を撮るときは35mm判換算で35mm前後、右手から来る下り電車を撮るときは写真のように24mm前後のレンズで撮ると、電車と楼門を画面に収めることができる。なお、順光になるのは午前中。
オリンパスOM-D E-M1 Mark II M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO シャッター速度優先オート 1/640秒 F5.6 −0.3補正 ISO400 WB:オート
2.歴史ある石鳥居と併用軌道を走る嵐電の路面電車(京都・嵐電)
嵐電の沿線には神社がいくつかあるが、電車の背景に鳥居が収まる撮影スポットは、蚕ノ社(かいこのやしろ)駅から嵐電天神川駅方面に50mほど歩いたところにあるこの場所。道路の南側から木嶋坐天照御魂神社(通称「蚕ノ社」)の鳥居を正面から見る位置に立つと、画面右寄りに石鳥居、左寄りに併用軌道を走る路面電車を収めることができる。レンズは35mm判換算で40〜50mmくらいの標準域がベスト。手前を車が塞ぐこともあるので、根気強くシャッターチャンスを待とう。なお、順光になるのは午前中。
オリンパスOM-D E-M1 Mark II M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO シャッター速度優先オート 1/800秒 F9 −0.7補正 ISO320 WB:オート
3.キモノフォレストの「光の林」に照らされた路面電車(京都・嵐電)
嵐電嵐山駅の構内には、京友禅を透明なアクリルのポールに閉じ込めたオブジェが林立する「キモノフォレスト」がある。色とりどりの染め物が収められたポールが約600本も並ぶ姿は圧巻。記念写真を撮るなら明るい昼間がいいが、電車と絡めて撮るなら、キモノのポールに灯りがともる日没後が美しい。嵐山駅の脇にある嵯峨3号踏切の南側から狙うと、2番線ホームのキモノのポール越しに発車する電車を撮ることができる。周囲が暗くなり過ぎると車体が真っ暗に潰れるので、日没の前後約20分間が狙い目。
オリンパスOM-D E-M1 Mark II M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO シャッター速度優先オート 1/160秒 F6.3 −0.7補正 ISO6400 WB:オート
4.京都北山をバックに有栖川を渡る嵐電の電車(京都・嵐電)
嵐電本線の有栖川駅と車折神社駅の間にある有栖川の短い橋梁を渡る電車。何気ない光景だが、奥には京都北山の山容が横たわり、小さな有栖川の流れとその岸には紅葉した木が立ち、小さな踏切が彩りを添えるシチュエーションに心惹かれた。また、この橋梁の有栖川駅寄りにある有栖川2号踏切の南側に立つと上りと下り、両方の電車を正面から狙える撮影ポイントなので、そちらもオススメしたい。
オリンパスOM-D E-M1 Mark II M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO シャッター速度優先オート 1/500秒 F9 −0.7補正 ISO400 WB:オート
5.あべのハルカスと阪堺電軌の新型トラム(大阪・阪堺電軌)
大阪・天王寺と堺市の浜寺を結ぶ阪堺軌道。始発駅の天王寺駅前駅から2駅目の松虫駅までは道路の真ん中を走る併用軌道となっており、松虫駅の直前で道路を離れ、専用軌道に入る。この専用軌道入口にある歩道の踏切から天王寺方面を見ると、日本で最も高いビル「あべのハルカス」がよく見える。この位置から松虫駅に侵入してくる電車を絡めて撮るのがオススメ。阪堺電車は行き先表示にLEDを使う車両が多い。この表示をキレイに写すためにはシャッター速度を1/125秒〜1/160秒程度にしなければならないので、電車が速度を落とす場所で撮ることも必要。
オリンパスOM-D E-M1 Mark II M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO シャッター速度優先オート 1/125秒 F9 −0.7補正 ISO400 WB:オート
6.住吉大社の鳥居越しに撮るパンダ電車(大阪・阪堺電軌)
阪堺電軌の沿線で最も有名な神社といえば住吉大社。阪堺電車は住吉大社前の道路上を走っており、神社正面に住吉鳥居前駅(停留所)がある。境内から参道の入口にある大鳥居越しに阪堺電車が見えるので、大鳥居と阪堺電車を絡めた写真を撮りたい。様々なポジションから撮ってみたが、いちばんしっくりきたのが、参道の先にある反橋を4〜5段上がった場所から鳥居越しに電車を撮るポジション。高い位置からの撮影になるので、手前の歩道にいる歩行者を避けることができる。車両の真横から撮ることになるので、特徴的な広告や塗装をした電車が望ましい。写真はパンダのイラストが車体に描かれたパンダ電車。
オリンパスOM-D E-M1 Mark II M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO シャッター速度優先オート 1/400秒 F8 −0.7補正 ISO400 WB:オート
7.夕空に浮かぶ通天閣と阪堺電車(大阪・阪堺電軌)
阪堺電軌・阪堺線の起点は恵美須町駅。通天閣の立つ新世界のすぐそばにあるのだが、通天閣と阪堺電車を絡めた写真を撮れる場所は少ない。オススメは東粉浜駅から恵美須駅方面に少し戻った道路沿い。超望遠レンズ(500〜600mm)が必要になるが、道路の先に通天閣の上1/3ほどが見える。阪堺電車は併用軌道をまっすぐに走り、撮影ポイントの手前で緩やかにカーブしている。カーブの外側から撮れば、こちらに向かってくる電車とその奥に立つ通天閣を画面に収めることができる。昼間は通天閣の存在感が薄いので、灯りのともる夕方がベスト。この日は空があかね色に染まり、通天閣がキレイに浮かび上がった。
オリンパスOM-D E-M1 Mark II M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 シャッター速度優先オート 1/100秒 F9 −0.7補正 ISO5000 WB:晴天